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幼女と邪神
幕話~邪神の休日~
しおりを挟む妾の名はクレバス。
元は世界を管理している神であったが今は邪神なのじゃ。
厳重な封印を解いて妾を邪神まで落としおった原因をとっちめようと考えたのじゃが、思ってた以上に力が落ちておった。
今の力じゃ、シュウとやらに傷を負わせることも叶わんじゃろう。
人里に降りても良かったのじゃが巷では妾の復活が予知されていたみたいで勇者がこの森の近くの街に来ているそうじゃ。
せっかく封印から解放されたのにまた封印生活を余儀なくされるのは勘弁願いたいのでシュウとやらに世話になろうと決めたのじゃ。
世話になり始めて3日ぐらいが経過したかのう…
どうやらここの家のルールでは寝るときの服装は自由じゃそうだ。
妾は神の世界にいるときから全裸派なのじゃ!
実際に何か言われたら直せばいいじゃろ……。
妾は神気を具現化して服を作り出しているので神気を出せば服が出てくるのじゃ。
「ふぁ……今何時じゃ?」
眠気に襲われている体を無理やり動かして時計を探す。
ベッドには誰も居らず、皆すでに起きているようじゃ。
なんと……この部屋には時計が無いのか!?
初めて気がついたのじゃ……。
時間を気にしないでいい生活……。
くふふっ……そんなこと神であった頃にもした事がないぞ……!
そうと分かれば2度寝じゃ…!
起き抜けの布団は温くて幸せじゃからの…
「起きろ」
「ぬわー! 何をするのじゃ! 毛布を返しとくれ!」
「朝飯ができてるんだ。お前待ちだ」
「ぐぬっ……そうか。仕方あるまい……起きるとしよう」
神気を纏い服に変える。
この神気の使い道が服しかないのも考えものじゃの…
基本的に神気は万能じゃ。
何でもできてしまう。
例えば生命を作り出す事でさえ可能じゃ。
莫大な神気を使ってしまうから使わんがの、疲れるから嫌じゃ。
「やっと、きた……」
「おこしたんだよー?」
「すまんのぅ……朝は弱くての……」
「朝というよりもう昼に近いぞ」
なんと!? そんなに寝ておったのか。
時計が無いのは素晴らしい反面怖いのう……。
「揃ったから食うか」
「わーい!」
「あっ……ぼく……ねらってた……えいっ」
「あー! それシロのー!」
「くふふふっ……賑やかじゃのう……」
自然と笑みが溢れてしまう。
この2人からは邪気というものが感じられん。
邪神である妾がそう感じるのだから間違いないはずじゃ。
シュウのやつも2人を眺めてニコニコしておる。
心が癒されるのは同感じゃ。
「もーらいっ」
「なぬっ!? それは妾のじゃ!」
無邪気な2人を眺めておったら横から箸が伸びてきて妾の陣地に置いておいたオカズが取られた。
「食わないのが悪い」
「ぐぬぬぬ……そりゃっ!」
「あっ、この野郎!」
仕返しじゃ!
シュウの陣地から違うオカズを奪ってやったわ!
食わないのが悪い? その言葉そっくりそのまま返してやるわっ!
「朝から良く食ったもんじゃの…」
「シロといい勝負してたな」
「おいしいからいくらでもたべれるの!」
「ぼくはおなかいっぱい…」
朝食を食べ終え、フカフカの毛皮の上で皆で寝転がってた。
食べた後は眠くなるのう……。
何もする事がないという事がこれほどまでに幸せじゃったとは…。
神であった時も、邪神として世界を滅ぼそうとしていた時もこの様な日々は過ごしたことはない。
このままこの者らと暮らし続けるのも良いかもしれぬな……。
今は出て行けと言われても居座るつもりじゃがの!
いつの間か眠ってしまい風呂という至福の時間を過ごし、妾は皆が寝ているベッドへと潜るのであった。
「……幸せじゃ」
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