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2章-学園入学と大事件-
50話 邂逅する人達
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黒フードと王族の両陣営が邂逅する、その時がやってきた。
「なんだい、君達は?
この学園は関係者以外は立ち入り禁止なんだがどうやって入ったんだい?」
「…相変わらずですねあなたは」
「その声は…ゼクスか!?何故こんなところに…?」
「お兄様、お知り合いですか?」
「研究所の元班長、僕の部下だった男だよ。
急に姿を消してから行方が分からなくなっていたんだが…」
「ああ、あの時は引き継ぎもせずに出て行ってしまって申し訳ありませんでしたね。
私の主人だったクリフ様の危篤の報が入りまして」
「あの悪名高いベルクトの者でしたk…!!!」
ソフィアの発言を聞いた瞬間にゼクスの横にいた男が腰に吊り下げていた刀を抜くと同時に斬りかかった。どうやら男は居合の使い手のようだ。
しかし、その刃がソフィアに届く前にシエラの盾が間に割り込む。
「…やるな」
「これでも元近衛ですから」
「グレゴール、何をしている?
お前の一時の感情であの方々の決意と厚意を無駄にするのか!?」
「……そうだったな。すまない」
ゼクスの言葉にグレゴールと呼ばれた男は刀を鞘に納め、後ろに下がる。
「あの方々ね…是非とも聞きたいところなんだけど」
「どうせ聞いたところであなたの出番はまだ先ですよディラン殿下。
でもまあ…あなた方には言いたいことも有りますし、少しお話ししましょうか。
ですが、その前に…おい!」
ゼクスが声をあげると頭上から3人目の黒フードが飛び降りて来る。
「進行度は?」
「あちらも似た状況…まだもう少しかかりそう」
「そうか…ならこちらは先に話し始めましょうか」
「分かっ…!!ちっ…!」
2人の会話を聞いて何を思ったのかソフィアが急に距離を詰めて斬りかかる。
が、その剣は簡単に防がれてしまう。
しかし、代わりに被っていたフードが落ちてその素顔が露わになる。
「ソフィア、何を!?」
「ユリスくん達の方でもこの方々の仲間が立ち塞がっているのでしょう?ならさっさとそちらに向かいませんと!」
「あなたはジラード!?
ならユリスくんのところには一体誰が居るの…?」
「やれやれ、堪え性のない…ディラン殿下、どんな教育をしているのですか…?
御坊ちゃま、そちらは任せましたよ。ただ、殺しはしないようにして下さい」
「ちっ、仕方ない…なっ!」
「……えっ?」
ソフィアの一撃で場が混乱するも、ジラードの返しの一撃でソフィアの持つ双剣の内、片方が手から弾き飛ばされる。
ソフィアが就いている生徒会長という役職はいくら王族であるからという理由があるにしろ、強くなくては生徒達から認められる事はない。実際ソフィアは自身の学年ではトップなのだ。
つまり、王国という基準において3学年も上であるソフィアを軽くあしらっているジラードの実力は異常ということになる。
「シエラ、こちらはいいからソフィアを守ってくれ。
あれだけの腕前だと厳しそうだ」
「…承知致しました」
シエラとしてはグレゴールの動きが気になるのだが、危なっかしいソフィアを放っておくわけにもいかないので警戒を続けながらもソフィアのフォローに向かう。
「くっ…!何でそちらからっ…!?」
「ソフィア様、落ち着いてよく見てください。
幻影なのかは分かりませんが揺らぐ範囲にも限界があります。
無理に受け流そうとせずに防ぐ、反撃は私が動きを止めてから、を徹底してください」
2人に相対するジラードの姿は常に揺らいでぶれている。ソフィアは初めて相手にするタイプなのか全く動きに対応できていない。受け流そうとしても剣が当たらず、反撃も予想外の方向に弾かれるのだ。
それが原因でムキになってしまい、フォローに入るシエラを無視してガンガン攻めていってしまっている。
「そんな事っ…分かっていますっ!」
「はははっ…!分かっていないから劣勢になっていると言うのになぁっ…!
なるほど考えなし、短慮、堪え性がない。全くゼクスの言う通りじゃないか!これでは身を挺して守る騎士が可哀想というものだ!」
「この…!言わせておけばあああ!「終わりだ」えっ…」
「「「ソフィア(様)!!」」」
挑発に耐え切れず待ち構えるジラードに剣を突き出すソフィア。だがその一撃には全く手応えがなく、続くジラードの声も何故か後ろから聞こえる。
シエラが己を呼ぶ声も遠くなり、周り全ての時間が遅く感じる世界の中でゆっくりと振り返ると目の前には今にも振り下ろされている剣があった。
これは死んだかなと察したソフィアは走馬灯のように流れるこれまでの自身の行動を振り返り、深く恥じていた。部下の忠告に耳を貸さず王族でありながら1人突っ走り、挑発に乗っては返り討ち。これでは相手の言う通り失望されるのも当然ではないかと。この上意地汚く足掻くなど自分自身が到底容認出来そうもない。
しかし、ならばと潔く受けた一振りは傷はおろか衝撃すらもたらす事はなかった。代わりに体が全く動かせなくなっていたが。
「殺しはしないという指示だったからな。これで十分か?」
「ええ、ご苦労様です。
全く…ソフィア殿下といい、あなたといい王族という方々は物を考えて行動するという事を知らないのですか?本当、怠慢もいい加減にして頂きたい。
たった一言で私達の目的を看破したあの少年を見習ったらどうなのですか?そんな事だから毒を盛られたことにも気付けないのですよ」
「…何?今毒と言ったか。
何故お前がそれを知っている!?」
「だから考えろというのに……もしあの方が行動を起こしていなかったら毒程度では済みませんでしたし、下手したら王国の崩壊もあり得たでしょうね」
毒という単語にディランの沸点が上がりかけるが、ソフィアへの心配とその後に続いた言葉が冷静さを取り戻させる。
「聴く気になって頂いたようで結構です。
まず、カレン王女に盛られた薬は催眠系の魔法薬です。そしてその中和薬としてあの方が用意した薬が体力増強薬…太陽華を使用した薬ですよ」
「太陽華…?
いや、それよりも催眠だって…!?
カレンに薬を飲ませることができたということは、僕達にもその危険が?だがそれなら毒は一体どこから…?」
「ようやくどれだけの大事だったか気付きましたか。彼は中和薬の一言で全てを把握したというのに。
カレン王女の症状は先ほど言った太陽華の特徴のせいですよ。この素材は兎獣人にとっては毒なのです。まるで病気にかかったような症状が出る…ね。
他の種族にとっては普通に体力増強の効能しかありません」
「そうか…その人には感謝をしなくてはならないね。
それで、あの方とは一体誰なんだい?まさかヨシュア・ベル「あのクソピグな訳がないだろう!!」…ゼクス?」
現ベルクト当主の名を出した途端ゼクスの態度が一変する。
ちなみにピグとは豚型の魔物である。家畜としての動物が希少なため、この世界の蔑称は一般的に害とされる魔物の名称を用いられることの方が多いのだ。
「何故!そこで!あのピグの名前が出て来るんだ!?あいつは催眠薬を盛った張本人だぞ!?
他にも横領、強姦、殺人、詐欺に気に食わない家や人を権力や金で潰したりもしている犯罪者だ!!
唯一貴族位の剥奪という奴を正当に止められる権利を持つお前たち王族が!何もしようとしないからあの方がその身を削って道連れにしてまで止めようとしているというのに!
何故考えようとしない!?何故動かない!?」
「ちょっと、さっきから聞いていれば言いたい放題「貴様もだ、リンドバル!」…何ですって?」
「貴様があの少年達からの報告書を受け取って中身を少しでも読んでいれば、このような強硬手段を取る必要は無かったのだ!あの報告書には生成ダンジョンでの鉱石の採取について書かれていたというのに…
彼らはしっかりと奴が生み出した問題を解決しようと動いていた…!そして入学してすぐに光明を見出していたのだ!
あれさえ広まればクソピグが王都へかけている脅しの手札が無くなって騎士団による強制捜査も出来たはずだというのに!」
「そんなもの分かるわけないでしょう…!?
それに読んでいたとしてもそちらのように暇ではないのだから、すぐには動けなかったでしょうね。貴方の中では物を考える必要がある人は私達しかいないのかしら?基準はどうなっているの?」
反論しようとしていたセルフィ感情的になったゼクスのあまりの暴論に唖然としつつも、皮肉で返す。
王族であるディランにはこの件で積極的に動かない、否、動けない理由があった。だが、何かしら出来る事はあったのではないかと自責の念にかられてしまう。
しかしながら、そんな状態にありながらも聞き逃せない言葉がゼクスの叫びの中にあった。
「強硬手段…?道連れだと…?」
「…そうですよ、殿下。間も無く始まるでしょう。恐らくは学園全体を巻き込む事になるだろう事件が…
業腹ですがあのピグの隠蔽は誰も暴くことが出来ない…そんなレベルなのです。それを超えるためには絶対に隠蔽できないほどの事件を起こし、誰かに止めてもらう。それによってあの方が家を巻き込む程の罪を被りヨシュア・ベルクトを道連れにする。残された時間の少ない…そんな私たちが取れる手段はもうそれしかないのです」
「ゼクス、始めるそうd…何…えっ!?」
「これは…一体どれだけの力を隠し持っていたのですか、あの少年は?」
「これは…いったい?」
「なによ、これ…?」
両陣営が驚く光景…
それは王都半域はゆうに覆うであろう巨大な岩が上空からゆっくりと落ちてきているというものだった。
時は遡り、ゼクス達から託されたことで気を引き締めたユリスはようやくレイラのいる庭園へと到着する。
ユリスがそこで見たものは衣服の至るところに切られた痕がある状態で膝をついているレイラと彼女に剣を向けながら何かを投げつけようとしている男の姿だった。
(ちぃ…!間に合えっ!『覇王一陣』!!)
「…僕の婚約者に何をしている?
……ジラード」
「なんだい、君達は?
この学園は関係者以外は立ち入り禁止なんだがどうやって入ったんだい?」
「…相変わらずですねあなたは」
「その声は…ゼクスか!?何故こんなところに…?」
「お兄様、お知り合いですか?」
「研究所の元班長、僕の部下だった男だよ。
急に姿を消してから行方が分からなくなっていたんだが…」
「ああ、あの時は引き継ぎもせずに出て行ってしまって申し訳ありませんでしたね。
私の主人だったクリフ様の危篤の報が入りまして」
「あの悪名高いベルクトの者でしたk…!!!」
ソフィアの発言を聞いた瞬間にゼクスの横にいた男が腰に吊り下げていた刀を抜くと同時に斬りかかった。どうやら男は居合の使い手のようだ。
しかし、その刃がソフィアに届く前にシエラの盾が間に割り込む。
「…やるな」
「これでも元近衛ですから」
「グレゴール、何をしている?
お前の一時の感情であの方々の決意と厚意を無駄にするのか!?」
「……そうだったな。すまない」
ゼクスの言葉にグレゴールと呼ばれた男は刀を鞘に納め、後ろに下がる。
「あの方々ね…是非とも聞きたいところなんだけど」
「どうせ聞いたところであなたの出番はまだ先ですよディラン殿下。
でもまあ…あなた方には言いたいことも有りますし、少しお話ししましょうか。
ですが、その前に…おい!」
ゼクスが声をあげると頭上から3人目の黒フードが飛び降りて来る。
「進行度は?」
「あちらも似た状況…まだもう少しかかりそう」
「そうか…ならこちらは先に話し始めましょうか」
「分かっ…!!ちっ…!」
2人の会話を聞いて何を思ったのかソフィアが急に距離を詰めて斬りかかる。
が、その剣は簡単に防がれてしまう。
しかし、代わりに被っていたフードが落ちてその素顔が露わになる。
「ソフィア、何を!?」
「ユリスくん達の方でもこの方々の仲間が立ち塞がっているのでしょう?ならさっさとそちらに向かいませんと!」
「あなたはジラード!?
ならユリスくんのところには一体誰が居るの…?」
「やれやれ、堪え性のない…ディラン殿下、どんな教育をしているのですか…?
御坊ちゃま、そちらは任せましたよ。ただ、殺しはしないようにして下さい」
「ちっ、仕方ない…なっ!」
「……えっ?」
ソフィアの一撃で場が混乱するも、ジラードの返しの一撃でソフィアの持つ双剣の内、片方が手から弾き飛ばされる。
ソフィアが就いている生徒会長という役職はいくら王族であるからという理由があるにしろ、強くなくては生徒達から認められる事はない。実際ソフィアは自身の学年ではトップなのだ。
つまり、王国という基準において3学年も上であるソフィアを軽くあしらっているジラードの実力は異常ということになる。
「シエラ、こちらはいいからソフィアを守ってくれ。
あれだけの腕前だと厳しそうだ」
「…承知致しました」
シエラとしてはグレゴールの動きが気になるのだが、危なっかしいソフィアを放っておくわけにもいかないので警戒を続けながらもソフィアのフォローに向かう。
「くっ…!何でそちらからっ…!?」
「ソフィア様、落ち着いてよく見てください。
幻影なのかは分かりませんが揺らぐ範囲にも限界があります。
無理に受け流そうとせずに防ぐ、反撃は私が動きを止めてから、を徹底してください」
2人に相対するジラードの姿は常に揺らいでぶれている。ソフィアは初めて相手にするタイプなのか全く動きに対応できていない。受け流そうとしても剣が当たらず、反撃も予想外の方向に弾かれるのだ。
それが原因でムキになってしまい、フォローに入るシエラを無視してガンガン攻めていってしまっている。
「そんな事っ…分かっていますっ!」
「はははっ…!分かっていないから劣勢になっていると言うのになぁっ…!
なるほど考えなし、短慮、堪え性がない。全くゼクスの言う通りじゃないか!これでは身を挺して守る騎士が可哀想というものだ!」
「この…!言わせておけばあああ!「終わりだ」えっ…」
「「「ソフィア(様)!!」」」
挑発に耐え切れず待ち構えるジラードに剣を突き出すソフィア。だがその一撃には全く手応えがなく、続くジラードの声も何故か後ろから聞こえる。
シエラが己を呼ぶ声も遠くなり、周り全ての時間が遅く感じる世界の中でゆっくりと振り返ると目の前には今にも振り下ろされている剣があった。
これは死んだかなと察したソフィアは走馬灯のように流れるこれまでの自身の行動を振り返り、深く恥じていた。部下の忠告に耳を貸さず王族でありながら1人突っ走り、挑発に乗っては返り討ち。これでは相手の言う通り失望されるのも当然ではないかと。この上意地汚く足掻くなど自分自身が到底容認出来そうもない。
しかし、ならばと潔く受けた一振りは傷はおろか衝撃すらもたらす事はなかった。代わりに体が全く動かせなくなっていたが。
「殺しはしないという指示だったからな。これで十分か?」
「ええ、ご苦労様です。
全く…ソフィア殿下といい、あなたといい王族という方々は物を考えて行動するという事を知らないのですか?本当、怠慢もいい加減にして頂きたい。
たった一言で私達の目的を看破したあの少年を見習ったらどうなのですか?そんな事だから毒を盛られたことにも気付けないのですよ」
「…何?今毒と言ったか。
何故お前がそれを知っている!?」
「だから考えろというのに……もしあの方が行動を起こしていなかったら毒程度では済みませんでしたし、下手したら王国の崩壊もあり得たでしょうね」
毒という単語にディランの沸点が上がりかけるが、ソフィアへの心配とその後に続いた言葉が冷静さを取り戻させる。
「聴く気になって頂いたようで結構です。
まず、カレン王女に盛られた薬は催眠系の魔法薬です。そしてその中和薬としてあの方が用意した薬が体力増強薬…太陽華を使用した薬ですよ」
「太陽華…?
いや、それよりも催眠だって…!?
カレンに薬を飲ませることができたということは、僕達にもその危険が?だがそれなら毒は一体どこから…?」
「ようやくどれだけの大事だったか気付きましたか。彼は中和薬の一言で全てを把握したというのに。
カレン王女の症状は先ほど言った太陽華の特徴のせいですよ。この素材は兎獣人にとっては毒なのです。まるで病気にかかったような症状が出る…ね。
他の種族にとっては普通に体力増強の効能しかありません」
「そうか…その人には感謝をしなくてはならないね。
それで、あの方とは一体誰なんだい?まさかヨシュア・ベル「あのクソピグな訳がないだろう!!」…ゼクス?」
現ベルクト当主の名を出した途端ゼクスの態度が一変する。
ちなみにピグとは豚型の魔物である。家畜としての動物が希少なため、この世界の蔑称は一般的に害とされる魔物の名称を用いられることの方が多いのだ。
「何故!そこで!あのピグの名前が出て来るんだ!?あいつは催眠薬を盛った張本人だぞ!?
他にも横領、強姦、殺人、詐欺に気に食わない家や人を権力や金で潰したりもしている犯罪者だ!!
唯一貴族位の剥奪という奴を正当に止められる権利を持つお前たち王族が!何もしようとしないからあの方がその身を削って道連れにしてまで止めようとしているというのに!
何故考えようとしない!?何故動かない!?」
「ちょっと、さっきから聞いていれば言いたい放題「貴様もだ、リンドバル!」…何ですって?」
「貴様があの少年達からの報告書を受け取って中身を少しでも読んでいれば、このような強硬手段を取る必要は無かったのだ!あの報告書には生成ダンジョンでの鉱石の採取について書かれていたというのに…
彼らはしっかりと奴が生み出した問題を解決しようと動いていた…!そして入学してすぐに光明を見出していたのだ!
あれさえ広まればクソピグが王都へかけている脅しの手札が無くなって騎士団による強制捜査も出来たはずだというのに!」
「そんなもの分かるわけないでしょう…!?
それに読んでいたとしてもそちらのように暇ではないのだから、すぐには動けなかったでしょうね。貴方の中では物を考える必要がある人は私達しかいないのかしら?基準はどうなっているの?」
反論しようとしていたセルフィ感情的になったゼクスのあまりの暴論に唖然としつつも、皮肉で返す。
王族であるディランにはこの件で積極的に動かない、否、動けない理由があった。だが、何かしら出来る事はあったのではないかと自責の念にかられてしまう。
しかしながら、そんな状態にありながらも聞き逃せない言葉がゼクスの叫びの中にあった。
「強硬手段…?道連れだと…?」
「…そうですよ、殿下。間も無く始まるでしょう。恐らくは学園全体を巻き込む事になるだろう事件が…
業腹ですがあのピグの隠蔽は誰も暴くことが出来ない…そんなレベルなのです。それを超えるためには絶対に隠蔽できないほどの事件を起こし、誰かに止めてもらう。それによってあの方が家を巻き込む程の罪を被りヨシュア・ベルクトを道連れにする。残された時間の少ない…そんな私たちが取れる手段はもうそれしかないのです」
「ゼクス、始めるそうd…何…えっ!?」
「これは…一体どれだけの力を隠し持っていたのですか、あの少年は?」
「これは…いったい?」
「なによ、これ…?」
両陣営が驚く光景…
それは王都半域はゆうに覆うであろう巨大な岩が上空からゆっくりと落ちてきているというものだった。
時は遡り、ゼクス達から託されたことで気を引き締めたユリスはようやくレイラのいる庭園へと到着する。
ユリスがそこで見たものは衣服の至るところに切られた痕がある状態で膝をついているレイラと彼女に剣を向けながら何かを投げつけようとしている男の姿だった。
(ちぃ…!間に合えっ!『覇王一陣』!!)
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