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3章-新たな発見と長期休暇-

75話 説明会(その他の1・2年出場種目)

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エレメンタルシューティングの説明会が開かれた翌々日、再び同じメンバーで寮の食堂に集まっていた。

「皆さん揃いましたし、おとといの続きを始めましょうか」
「今日は残りのモンスタースイーパーとディメンジョンウォーについて説明していくんだけど、全部となると種目数が多いのよね」
「早狩りが3種目、大戦が5種目ですからね。
 ただ、そろそろ皆さん帰ってくる頃ですので説明は終わらせておきたいのです」
「今日中に終わらせるとなると、この間みたいな説明だと結構時間がかかるし大変じゃない?」
「私もそう思ってね。とりあえず紙に一通り書いてきたの。
 悪いんだけど1枚ずつしかないから各自で写していって貰えるかしら?」
「あら、それは助かるわ。
 思い出しながら書き出すのって結構大変だったのよね…」
「実践もしたから余計にな…
 おし!さっさと写しちまうか」

どうやらルイスとエリーゼはエレメンタルシューティングのルールを思い出しながら紙に書き出すという作業に思いの外苦労していたようだ。
書き切った直後なんかは次の説明会が終わったらまたやるのかと憂鬱になっていたほどだ。
そのためか、今回は見本が既にあると知るや否や喜んで写し始めている。
一方、ユリスは一度読んだだけで大体の記述は記憶できる。しかしながら、紙媒体で持っていた方が追記や変更で混乱しづらくなるからと2人と一緒に写している。

―――
【モンスタースイーパー】
通称『早狩り』
チェイン、リザーブ、サバイバルの3種目を最大6人のパーティーで行い、魔物を倒す時間を競う
基本的に予選、本戦、決勝の3回

1、2年競技『チェイン』
・予選通過は16ブロックの各1位と2位
・本戦は1位8組と2位8組の16組を1ブロックとして各ブロック上位8人の計16人が決勝進出
・全10戦の合計タイムで競う
・ブロックごとに相手モンスターが違う
・後半は下級ボスクラスの魔物が出てくる
・開始直前に対戦魔物を教えられ5分間の作戦タイムが与えられる
・開始後は1戦ごとに10秒のインターバル
・1回の競技中に2回だけ1~5分間の休憩が取れるが、インターバル中に意思表示をする必要がある
・インターバル中に休憩した分はタイムに加算される

3、4年競技『リザーブ』
・予選通過は16ブロックの各1位と2位
・本戦は1位8組と2位8組の16組を1ブロックとして各ブロック上位8人の計16人が決勝進出
・1戦ごとにタイム上位の組に得点が入る
・1位5点、2位3点、3位2点、4~6位1点、7~12位0点
・全20戦行い最終得点で順位が決定
・最終順位が同率の場合は得点回数が多い方が勝利
・全く同じならくじで選ばれた戦闘での順位が高い方が勝利
・各戦1分のインターバルがあり、その際に次の魔物が分かる

5、6年競技『サバイバル』
・予選通過は16ブロックの各1位と2位
・本戦は1位8組と2位8組の16組を1ブロックとして、各ブロック上位5人ずつの計10人が決勝進出
・1戦ごとにタイム最下位が脱落していく
・全10戦で1戦ごとに1組脱落(12組のブロックの場合はボス級が出る回で2組脱落)
・同率の場合はアーティファクトによりパーティー消耗率で判断される
・脱落したらそこで競技終了
・各戦最低でも1分のインターバルがあるが次の魔物の詳細は不明
・順位が確定してから次の戦闘へ移行


【ディメンジョンウォー】
別空間にある特別競技場を使用して行う団体参加型の競技で通称『大戦』
エントリーは12人で種目によって入れ替え可能
1~4年は6人種目2つでの上位16組が10人種目トーナメントに出場可能
5、6年は12人種目のみ
6人種目は総合点数で順位が決まる
1位20点、2位15点、3位12点、4位10点、5~8位5点、9~16位3点、17位~1点

1、2、3、4年競技
6人種目その1『コンプリート』
・6×6の36マスでタイムアタック
・各マスはおよそ200m四方の広さ
・各マスにはミッションが設定されており、クリアすると占領となる
・全てのマスを占領するまでの時間を競う
・ミッションは魔物の殲滅や的の破壊、レース、クイズ、パズル、指定魔法の発動など様々
・マスに入った瞬間に始まるミッションもあれば、マスの中央にある装置に触れないと始まらないものもある
・ミッションに失敗すると再度挑戦するまでに5分かかる

6人種目その2『ギャザリング』
・10×10の100マス
・マス内は簡単な迷路になっていて、マス間は転移装置で移動
・1マスにつき5つの転移装置がある
・中央1人、ランダムマスに5人でスタート
・中央に封印されているボスを撃破するまでのタイムを競う
・迷宮内5箇所にある封印球に同時に触れることでボスの封印が解除される
・中央にある地図で封印球や各選手の所在マスが分かる
・地図横に拡声器があり、それを利用した指示は迷宮全域で聞こえる
・各マスのスタート地点にはマス内の地図が置いてある
・封印を解除されたボスは一定時間攻撃を受けないと各マスを徘徊し始める
・封印球のあるマスから中央に転移可能だが、その装置の場所を記した地図はない
・封印解除後は同じマスにいる選手が増えるほどアビリティが割合増加するバフがかかる

1、2年競技10人種目『エリアスチール』
・10×10の100マス
・スタート時に各マスに魔物が配置
・魔物の種類は各マスによって決まっている
・そのマスのユニットが自勢力のみになることで占領
・占領の瞬間にだけ自勢力の魔物が補充される
・前後半30分ずつでインターバル5分
・後半開始時は自陣であればどこにいてもいい
・最終取得マスの多いチームの勝利
・HP全損でスタート地点に飛ばされて、1回目は5分間、2回目以降は10分間の行動禁止

3、4年競技『イレブンフラッグス』
・10×10の100マス
・50マスずつが自陣
・制限時間はインターバル無しの1時間
・フラッグを探して奪取もしくは破壊することで得点
・フラッグは本拠地に1本、各選手1本持っている
・各選手が持っているフラッグはマスのどこかに設置することも可能だが一度設置すると動かせない
・設置型のフラッグは奪取できない
・所持している場合はHP半損で奪われる
・所持していないと自身のいるマスに相手のフラッグがあるかどうかが分かるようになる
・所持しているフラッグ1本につきAGI10%低下(最大50%)
・本拠地に持って帰ったフラッグは所持していた相手のところに帰る
・破壊されたフラッグは10分後に同じ場所に復活
・HP全損で本拠地に飛ばされて10分間行動不能

[得点ルール]
・奪取して本拠地に持って帰ると1点
・設置型が破壊されないと10分毎に2点
・設置した場所が敵陣なら3点
・設置型を破壊すると2点
・奪取した状態のまま10分経過毎に1点
・奪取状態で試合終了すると3点
・本拠地のフラッグを破壊で5点の上、設置されたものも含めて全ての相手フラッグを奪取した状態になる
・これらの得点は1本ごとに計算される

5、6年競技
12人種目『攻城戦』
・6×6の36マス
・様々なフィールドで攻防に分かれて戦う
・3回勝負の2回先取で勝利
・15クラスでトーナメント
・1、2組とくじで選ばれた4クラスがシード
・各トーナメント1位の6クラスが決勝リーグ進出
・リーグ戦で同率の場合は直接対決を制した方が上位
・フィールドや攻防の順番はくじで決定
・フィールドの種類は平原、森林、渓谷、岩山、遺跡、古戦場
・HPが全損した時点でその試合は退場
・30分間指定オブジェを守り切るもしくは攻撃側の全滅で防衛側の勝利
・指定オブジェのHPを削り切るもしくは防衛側の全滅で攻撃側の勝利
・オブジェは平原と遺跡が集落、渓谷と古戦場が砦、森林が巨木、岩山がモノリスなどのシンボル
―――

「…基本ルールだから量もこんなものか。
 でも一気に書くと手が疲れるね、やっぱ」
「何度も読まないと覚えられねえぞ、これ…」
「そうよね、最低限のルールだけでこれなのよね…
 細々としたルールに加えて戦術とかがこれに追加されると…」

内容も読み込まずに集中して写していく3人。
基本的なルールのため量も最低限なはずだが、一気に書いているせいか手に疲労が蓄積されている。
ルイスとエリーゼに至っては書ききってもまだ増えるという事実に戦慄すらしているほどだ。

「まあ、全部はすぐに覚える必要もないからね。
 追加説明もとりあえずは1年競技だけにするわ」
「モンスタースイーパーの『チェイン』、ディメンジョンウォーの『コンプリート』と『ギャザリング』、『エリアスチール』ですね」
「と言っても早狩りは魔物を早く倒すだけだからあまり補足は無いのよね。
 チェインだと事前に魔物は分かるから、素早く作戦を立てられるだけの知識と対応力が重要ってくらいかしら?」
「そうですね、という事で飛ばしましょう。
 ディメンジョンウォーの方が確実に重要です」

先生役が2人して説明はいらないと言ったモンスタースイーパーだが、流石に上級生になると少し複雑になり戦略も必要になってくる。だが、1年生でやるチェインは本当にただ素早く魔物を倒していくだけなので戦略も何もあったものではないのだ。
それよりも専用のアーティファクトで会場を形成するほど特殊な競技であるディメンジョンウォーの方へと説明を割くべきなのは自明だろう。

「じゃあまずはコンプリートからだけど…これもあまり追加はないわね。
 ひとつ注意するのはミッションの内容が完全ランダムって事ね。パーティーの構成を全く考慮していないから、誰もできないミッションがあるとリタイアすることになるわ」
「なのでパーティーの編成は偏らないように注意…といっても7人しかいないので誰が出ないかを決めるだけですが」
「それはそれで結構もめそうだよな…」
「ミッションも重要だけど、移動力も必要だから多分AGIが低い純後衛の子がお留守番かしら?後はスタミナがない子も危ないわね」
「純後衛…」
「スタミナ…」

後衛の部分でエリーゼが、スタミナの部分ではレイラが反応し、揃って表情がどんよりと曇る。

「開催まで時間はあるし、スタミナは何とかなると思うんだが…?」
「ルイス、それはレイラも分かってるさ。
 つまりは体力作りの訓練が嫌いなだけ…んんっ!もとい、訓練してもスタミナがつきづらい瞬発型なんだろう」
「おう…まあ後衛なんだから仕方ないと言えばそうだな」

単純な疑問を呈すルイスとそれに答えるユリス。
揃ってレイラの光を失った瞳を向けられた瞬間に取り繕うようにしてフォローを入れる。

「それじゃあ次に行くわよー」

シエラの言葉が発端なのだが、そんな事は知りませんとばかりに少々強引に説明を続ける。
そして、説明という言葉に後衛2人もなんとか持ち直すしたようだ。

「次はギャザリング。
 これは戦闘力よりも探索力とか記憶力がものを言う競技ね」
「戦闘は最後のボスだけですものね」
「なんだ、道中は魔物がいねえのか?」
「ええ、代わりに行動不能系のトラップがあるわ」
「トラップ…あたし見つけるの苦手なのよね」
「トラップがあるのはハズレのルートだけですから、地図を見てしっかりと道順を記憶すれば問題ありませんよ」
「どの転移装置にいくかは中央の人が指示してくれるはずだしね」
「あら、そうなのね。それなら得意だし良かったわ」
「中央にいる奴は現在地から誰をどこに向かわせるかを判断して、その上で転移する順番を指示しなくちゃいけねえんだよな…俺の頭じゃ無理だな」
「まあ、あんたの頭じゃ…ねぇ?」
「聞いてるとこれだけ結構毛色が違う種目だよね。
 他のは戦闘力や対応力が求められてきたのに、これはスピードと記憶力だ」
「最後以外はね」
「最後?…ああ」

シエラが付け足した一言でこれまでの説明が序盤のみに通じるものだということに気づく一同。

「ボスは封印が解けてから一定時間攻撃を受けないと他のマスに移動しちゃうわ。最初はランダムだから追いつくのも一苦労よ」
「転移先は中央の地図で分かりますが、中央から逃げられた時点で上位に入るのは絶望的です」
「つまり中央スタートの人はしばらく1人でボスと戦う必要があると」
「ええ、だから中央の人は戦闘力がある程度高くないと厳しいわね」
「つっても、指示出しが出来なきゃそもそも封印が解けねえ…バランスがむずいな」

これまでの説明から察するに、中央スタートの選手にはオールマイティな能力が求められるようだ。

「まあ、出てくるボスはゴーレムみたいに動きがパターン化されているから、理論上ではどんなステータスでも時間稼ぎくらいは出来るとされているんだよね。
 ただ、ゴーレムほど動きが単純じゃないから実際にはある程度動ける人じゃないと無理」
「担当する人はスピードタイプの方が多い印象ですね。
 倒すのは他の人が集まらないと厳しいらしいですけども」
「だから他の人は地図のない迷路を探索して転移装置を探す必要があるの。素早くね」
「全員が集まる必要はありませんが、タイムを短くするにはバフが欲しいですし中央を「あっ!ってことは最後だけトラップにかかっちゃうじゃない!?」…」
「お前は回避できないこと前提なのかよ…」
「うるさいわね!
 レイラ、遮っちゃってごめんなさい」
「大丈夫ですよ。
 中央への道はトラップ無しでは語れませんからね」

先程の説明で安心してしまっていたのだろう。エリーゼがトラップへの対応が必要だと気づいた瞬間に思わず声をあげてしまう。
レイラの説明を遮るタイミングだったが、すかさずルイスに突っ込まれることで場の空気が悪くなる事態にはならなかった。

「ん?どういうこと?
 特殊なトラップが多いとか?」
「そうなんです。
 行動不能系とさっきは説明しましたが、落とし穴やロープでの拘束、一定時間の睡眠や麻痺を強要するガスなど比較的普通のものから、粘着床やスラモチが飛んでくるとか一発芸をしないと解除されない結界とか意味の分からないものまであります」
「油まみれの床とか水をぶっかけられるだけとかもあったわね」
「えぇ…何そのトラップ。完全に観客を笑わせにかかってるじゃん」
「そうなのよ!最悪なのがトラップに引っかかった醜態を観客に見られることなの!
 あ、当日はズボンにした方がいいわよ。宙吊りとかもあるからね。似た理由で薄手の服もダメ、透けるから」

シエラが服装について女子2人に忠告している。その声色にはまるで自分で体験したかのように感情が込められていた。

「エリーゼ、いつもの服装は辞めとけよ?」
「もちろんよ!!
 競技会までには買い揃えておくわ…」
「レイラもね?
 でもあの時の服装なら大丈夫…か?いやでももうちょっと覆った方が…」
「ふふっ、競技会ではちゃんと露出が少ないものを用意しますよユリス様」

男子2人もそんな姿を観客に見せてたまるかと真剣マジな目で相方に確認している。

「というか感知ができる僕1人が中央に向かえば…いや、いっその事僕が中央でボスをさっさと倒せば…」
「それは…アリだな。
 最悪俺だけでも合流しようと動いていれば文句もつけづらくなる。俺もトラップ感知はできるから合流は楽だろうしな」
「なんだ、ルイスも感知できるんだ?
 ならそれで提案してみようか」
「おう、そうだな」
「ふふっ、2人とも頑張ってね」

両者共に気をつけるとの言を受け取ったはずなのだが、ユリスに至っては己だけでボスを倒してしまえばトラップなど意味すらしないと本気で考慮し始めてしまっている。
よっぽど不特定多数に相方のあられもない姿を見られるのが嫌なのだろう。普段はツッコミ役なはずのルイスもそれに乗っかっている形だ。
女性陣も少し顔を赤らめつつも、気にかけてもらえている事が嬉しいので止める事はしない。
唯一シエラは出場しないので注意するかと思いきや、微笑ましそうな、はたまた羨ましそうな、そんな目で場を見守っているだけ。
流石に思考がエスカレートし過ぎれば止めるのだろうが、このレベルならばやって当然とばかりに応援するのであった。

なお、エリアスチールにおいては戦術以外で補足するような事があまり無く、戦術は確実に3人娘の方が詳しいとして説明会はこの空気のままお開きとなるのであった。
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