29 / 61
サバゲーの頂点に立ちたいでしょう?
06
しおりを挟むゲームはすべて終わり、結局散り散りになっていた部はすべて併合された。
「本日から、あなたたちには全国大会を目指すために働いてもらうわ」
集められた、サバイバルゲーム部の部員。総勢五十名。
全隊の指揮官として、部長の珠希が前に立って演説をしている。
元々彼女の方針に従えずに、各々部を作っていた者がほとんどである。当然士気は低い。
「全国大会って、あるんですか?」
後ろの方に並んだ音羽たち。はじめてひと月程度の音羽には、知らないことが多い。
「高校の体育連盟に加入してる訳じゃないカラ、公式じゃないデスケドネー」
先日の校内対抗戦以来、ずっと微妙な表情をしている尋が答えた。
「玩具銃射撃連盟っていうのが母体。そこの主催でやってるネー」
「はぁ……」
正直よくわからないが、ちゃんとした組織があるらしい。
「一般の部と学生の部があって、前回大会では四十校近くが参加したネー」
「四十……」
「Oh yeah. 四十ネー。その中で、この学校は七位だったネーー」
「七位!?」
「今年は優勝を盗るわよ」
「うひい!?」
突然の声に、びくっと肩を跳ね上げた尋は、声の方向を見る。
「このちょんまげ。人が話しているのに、良いご身分ね」
ガシッと尋のポニーテールを鷲掴みにして、がくがくと引っ張る。
「Oh my god! help! help my!」
頭を押さえてしゃがみこむ尋。そしていきなり手を離す。
「今年こそ優勝よ。そのためにこうして全員を集結させたのだから」
とは言え、現状を良く思っている者は多くなさそうだ。
その周囲の人間を見渡して、珠希は胸を張ってつっと顎を持ち上げた。
「私は勝ちたいの。一度きりの人生だもの。この国の頂点、なりたいとは思わない?」
轟然と、さもこれから国でも滅ぼしにいかんとでも言うような態度。
「わたくしはなりたい。自分の全てを賭して、頂点に立ちたい。だから、力を貸して欲しいの」
屹然とした態度。さも協力するのが当たり前だと言わんばかりの言い草に、半数近くの面子が失笑に近い表情を作った。
「べつに協力したくないのなら――」
「たまチャン。そんな言い方ではNon non! 誰もついてこないネー」
言葉を続けようとする珠希を、尋が制した。
「じゃあ、なんて言えばいいのかしら?」
イラついた声。それに眉尻を少し下げた尋は、くるりと背を向けた。
「Hi みんな! たまチャンもこう言ってるシー。ちょっとやってみヨーヨー?」
賛同する声はない。
「みんなサバゲー楽しいネー? もう一回やりたいヨー。ウチはみんなとまたゲームしたいだけダヨー!」
それでも楽しそうに、尋は話し続ける。
「やっぱり大人数の方が、ゲームって楽しいデスネー?」
尋の言葉に、何人かがどうする? と耳打ちしあっている。
「先輩は、どうしてその女と組めるんですか?」
誰かが、叱責のような気迫で、声を上げた。それに賛同するつぶやきもある。
「What fo it?」
「去年の大会で、先輩、その女にフレンドリーファイアされたんじゃないんですか?」
ふと音羽の脳裏に、以前見た動画を思い浮かんだ。
そして尋も思い出したように、ああとつぶやいた。
「ウチはなんとも思ってないネー。FFなんてよくあることヨー。そんなの気にしてたら、ゲームは楽しめないネー」
にっこり笑み、両手を広げた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる