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第二百一話 ひとまずご飯をというもの

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「みんな、ありがとう! おかげですぐ終わったわ♪」
「大丈夫ですよ。色々わかったこともあったので、悪くない時間でした」

 というわけで作業が終わり、夕方からやや暗くなりつつある外へ出た。
 作業中、ゼオラは自分の書いた本を神妙な顔で読んでいた。
 
「悪いなウルカ、明日はもう向こうだろ?」
「そうだね。緊急措置だからまたしばらく来れないと思う」
「残念。今日はどうするの?」
「ちょっと池で遊ぼうかと思ったけど、暗くなるし屋敷かアニーの家で喋るくらいじゃない?」
「おー! ご飯作るのー!」

 腕を掲げて元気よくアニーが叫んでいた。お腹もすいたし酒場へ行こうかとみんなを促して歩を進める。

「あ、母ちゃんに飯いらねえって言っとかないと」
「私も。後で行くから」
「オッケー」

 ステラとフォルドは一旦家に帰ってご飯はアニーの家で食べるというのを伝えてくるらしい。まあ家は近いしすぐ来るだろう。

「こんばんはー!」
「ただいまなのー」

 開店時間が近い酒場の入口を抜けると、カウンターの向こうにいる親父さんがこちらに気づいて声をかけてきた。

「おう、アニーおかえり! ウルカ様が送ってくれたのか、ありがとう」
「ううん。アニーのおかげで楽しかったし大丈夫!」
「それじゃお母さんとお料理をしてくるの」
「火に気を付けてね」

 僕が笑いながら言うと『もちろん』と元気よく返事をして厨房へ消えた。適当にカウンターに座らせてもらうと親父さんからジュースを渡された。

「食っていくのか」
「うん。お腹すいたし、ステラやフォルドと一緒に話しながら食べたいかなって」
「あー、確かに久しぶりだもんな。一昨日は屋敷だったみたいだし」
「そうそう……」

 というところでハッと気づく。
 
「あ! 母さん!?」
「おう!? びっくりした!?」

 そういえば夜は屋敷に帰るって話をした気がする。ご飯もうできてるかな……!?

「ちょ、ちょっと家に帰ってくる! アニーに出てくるって言っておいて」
「そりゃかまわ……消えた!?」
【あ、転移――】

 最短ならそんなに魔力を使わないだろうとつい使ってしまった。

「っと、家の前だ」
【お前、マジで注意しろよ。ぶっ倒れて死ぬとか無しだからな】
「ごめんごめん」

 そして結果は成功。
 あまり疲労感が無いのでこれくらいなら大丈夫らしい。

 実際、こっちへ来た時に一昨日ほど辛い感じは無かったから無策じゃないんだけどね。ショート転移ならかなり魔力消費は少ないみたいだ。

「母さん!」
「……」
「……」
「うわあ!?」

 とりあえず慌てて屋敷に入りリビングへいくも誰もおらず、なんとなく食堂へ向かってみると、豪華な料理にアニーやフォルド、ステラを含めた人数分のお皿が並んでいた。
 父さんと母さんも並んでいたけどうつむいていてお通夜みたいになっていた。

「ウルカちゃん……! 帰って来たのね!」
「う、うん! ごめんよ、やっぱりご飯を用意してくれていたんだよね」
「ああ。多分お友達も連れて帰ると思ってね。……他の子達は?」
「えーっと……」

 屋敷を出てから図書館のことと酒場のことを話すことにした。
 忘れていて今はアニーが一品用意をしていることなどをだ。

「学校の後に買い食いとか懐かしいな。ロイドがよくやってたよ」
「確かに」
「でも折角作ってもらったし勿体ないわね」
「なら、こっちで食べようか。みんなを呼んでくるよ」

 折角用意してくれたわけだし、親父さんにはまだ注文をしていないからアニーを待つだけでいい。
 そう言ってまた転移するとゼオラが口をとがらせていた。心配してくれているのは大変分かるんだけど、一度覚えると便利なんだよね……

「ただいまー」
「おう!? いきなり目の前にウルカ様が!? ……ま、魔法かい?」
「お、どこ行ってたんだよ」
「凄い。かっこいい」

 酒場に戻ると親父さんがめちゃくちゃ驚いていた。
 そしてフォルドとステラが来ていて僕に声をかけてきた。

「ちょっと屋敷にね。えっと、親父さんごめん家にご飯を用意されていたから帰って食べることにするよ」
「ははは、そうかい。まあ、たまに帰って来たんだからそれがいいだろうな。アニー、屋敷に行くってよ!」
「えー! ちょっと待って欲しいのー!」

 僕の言葉に親父さんが笑いながらアニーに告げる。すると厨房からアニーの焦る声が聞こえてきた。

「ゆっくりでいいよー。その料理を持って行くから待ってる」
「ありがとー!」

 厨房から嬉しそうな声が聞こえてきて顔が綻ぶ。なにを作ってくるのか楽しみだ。
 そんなことを考えているとフォルドが言う。

「そういやハリヤーはどうなんだ? 診てもらったんだろ?」
「ああー……。まだ死んだりしないけど、荷台を引いたりとかはできないみたいだ」
「……そう。ハリヤーは賢いし、優しい馬だから私達が大きくなるまで生きて欲しいけど」
「そうだね。代わりにジェニファーが子供を産むみたいだよ。そっちは楽しみかも」
「え!? あいつお前んちに行ってからのびのびしてるよな。一緒に生まれたやつはもう肉になったからなあ」
「あれはアニーのおかげだろうね」

 割り切らないと難しいもんね。
 領地にも家畜になる牛とかいるけど、やっぱりお肉にする過程は見れないかなあ。
 そこは日本人の性格かもしれない。

「領地は新しい魔物も居るし、牛とかもいっぱいいるよ。あ、それと新しい遊びで野球もできるようになったかな?」
「なんだそれ?」
「えっとね――」

 そんな調子でひとまずアニーの料理ができるまでフォルドとステラと話すことした。
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