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最終部:タワー・オブ・バベル

その254 強敵

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 「近づけない……!」

 「ホーッホッホ! お前達がこの世界の要だということは知っておる。世界は二の次……ようやく人間どもに復讐できるわ!」

 <せめてこの青いヤツを何とか出来れば……それ!>

 ギャオォォォン……
 
 「フフ、やるな狐? だがまだまだ呼び出せるぞ」

 <キリが無いのう……!>

 チェイシャ呟きと共にレッサーが何体か沈んだが、数はそれほど変わらない。確実に倒せてはいるけど、肝心のアサールに手が届かなければループするだけ……そう考えていると、カルエラートさんが青魔族へと斬りかかった。

 「たあああああ!」

 「……!」

 当たる直前に緑魔族が庇い、剣がぐにゃりと体に飲まれてしまう。

 「……!? 抜けない!」

 「魔法は効くハズよね≪マジック……≫」

 カルエラートさんと助けようとし、ママが魔法を使おうとしたその時、アサールが杖を掲げて魔法を使ってきた!

 「フフフ、大人しく壊させるとでも思っておるのか? <フィアフルストーム>!」

 ビュオ! 

 「きゃああああ!」

 急な突風が私とレイドさん以外を襲う! たちまちセイラ達の体が斬り裂かれ血しぶきをあげていた。魔物に当てず、こっちのパーティだけを攻撃してくるなんて……女王と名乗るだけのことはあるわね……!

 バシュ! ザシュ!

 <くっ……刃のような風じゃ……!>

 「抜けろぉぉぉ!」

 傷だらけになりながらも剣を離さなかったカルエラートさんは渾身の力で振り抜き、緑魔族から剣を取り出してから後ろに下がるとママが回復魔法で全員を回復させていった。

 「ぬ、回復魔法か。この世界は簡単に使える魔法のようじゃな、厄介な……ならば……」

 

 「回復は私がやるわ! ……カルエラートとセイラで青魔族を狙って……ってしつこい! ≪ゲイルスラッシ≫!」

 ギィエェェェ!?

 「≪アイシクルソード≫! でも、緑が邪魔を……」

 「……分かった。セイラ、私の後に続いてくれ――を頼む」

 「へ!? う、うん。分かった」
 
 <決まったか!? わらわが援護するから行って来い!>

 
 次々と魔法弾で落としていくチェイシャが叫びに近い声を上げたのを聞いてカルエラートさんとセイラが走る! 
 「この!」

 「……」

 「邪魔よ!」

 カルエラートさんが剣を振りかぶると案の定、緑魔族がすぐに立ちふさがりダガーで突いてきた。しかしカルエラートさんはそれを回避し、そのまま青魔族へ! 

 「……!?」

 緑魔族は少しだけ驚いた顔をして振り向こうとするが、直後、セイラのメイスが緑魔族の足へとめり込んだ。

 ぐじゅ……っと嫌な音がしてメイスが足を貫通し……その場で縫い付ける事に成功していた。

 「今よ! 緑に魔法を! ≪マジックアロー≫!」

 「≪ブリザーストーム!≫」

 「特大の魔法弾じゃ!」

 それを助けようと青魔族が動く、だがその前にはカルエラートさんが立ちはだかり、援護に行かせないよう攻撃を仕掛ける!

 「消えろぉぉぉぉ!」

 「……!」

 ザクッ!

 闇の剣が青魔族の首を見事に刎ねた、しかし……。

 「ぐふっ……ま、魔法を……」

 倒れ際にカルエラートさんの脇腹に炎の魔法をゼロ距離叩きつけられ、カルエラートさんが膝をつく。鎧と肉が焦げるにおいが充満し、砂に変わる直前の青魔族の顔はわずかに口元を歪めていた気がする。

 ギャァァァァ!

 そこを狙ってすぐにグレーターがカルエラートさんを押さえつけ、無理矢理立ち上がらせていた。

 「カルエラート!?」

 緑魔族も砂に変わり、カルエラートさんを助けに向かおうとするママだが、一瞬アサールの方が早かった……!

 「ふむ、二人もやられてしもうたか。ではこちらも……≪インフェルノブラスト≫」

 ゴウ! という音と共に炎がカルエラートさんを包むように飛んでいった。グレーターに掴まれたままじゃ躱せない!?

 あっという間に炎に飲まれ、捕まえていたグレーターは塵となって消えた。カルエラートさんは!?

 「うぐ……」

 「酷い火傷……回復を優先するわ、セイラ、チェイシャ悪いけど……」

 <任せておけ! 赤魔族を倒したらあの腐れ女王に攻撃じゃ! のけい魔物ども!>

 「避けてお兄ちゃん! ≪アイシクルランス≫! ルーナ、チェイシャ! トドメを!」

 「んな!? 危ない!?」

 「!?」

 レイドさんがセイラの声に気付いて氷の槍を躱すと、ドスドスとその身体を貫通していく。私は一旦下がり、シューティングスターで頭を狙う……! 

 <特大のじゃ、消え去れ!>


 ほぼ同時にチェイシャの極大魔法弾が胴体へ放たれて風穴が空き、それを確認する間もなく阿多が粉々に吹き飛んだ。

 ボソ……っと砂に変わり、消え去る。

 <うおお! 行くぞレイド!>

 「お、おう! こうなったらこっちを使うか……ディストラクション、ディスタントゼロ!」

 ギャ!?

 ゲィイイイ!?

 聖剣を鞘に納めて、蒼剣ディストラクションで魔物の群れを一気に蹴散らすレイドさん。それに合わせてチェイシャの魔法弾にセイラの氷魔法が繰り出され、魔物は次々と消えていく。

 「お兄ちゃん、あの女の足を止めてもらえる? ……その後は任せて!」

 チェイシャが先頭を駆け抜け、セイラがレイドさんに並走して走り、私はさらにその後ろから矢を放ち道を空けていく。魔法・物理を無効化する魔族が居なくなったのでここは一気に叩きたい。

 「黄色は飛び道具が効かないだけだからレイドさんお願い!」

 アサールの目前まで来たので、私はアサールに向かって矢を放つと、こちらもやはり庇うようにアサールの前に立ちはだかった。だけど、これは想定内!

 「消えろ!」

 聖剣に持ち替えたレイドさんの一撃が黄色魔族を真っ二つにする。そして見せ場も無いままピンクの魔族がチェイシャの一撃で砂変わった。

 「……!?」

 「チッ、勝手に動くのが仇となったか……」

 「だあああ!」

 ガキン!

 レイドさんの剣がアサールの頭を狙って振りかぶるも、杖でその攻撃を防いでくる。しぶとい……けど、動きは封じた!

 「くっ……! セイラ、今だ!」

 「任せといて! とっておきよ! ≪シャイニング・ブレイカー≫!」

 <わらわも加勢するぞ! 光破弾!>

 いった! この技ならたとえ魔族の女王でもひとたまりもないはずよ!

 「もらった!」

 ボン! チェイシャの魔法弾を受けてよろめいた所にセイラが拳を振り抜く瞬間だった!

 「お、おお!? この技は……!? やはり聖女……やられる! ……とでも思ったか? ≪ダークネスミスト≫聖女の体を包み込め!」

 「え!?」

 まさか!? セイラの体を黒い霧が包み込んでいき、一撃は届かずにその場で膝をついてしまった。

 「あうう……!? く、苦し……」

 「セイラ! こいつ何をした!」

 するとアサールは遠くへ距離を取り、ニヤリと笑いながら喋りはじめる。

 「ホーッホッホ……世界は違えど同じ聖女と聞いて警戒しておったのよ。以前はその技でやられたからのう……しかし一度見た技の対策なぞ造作も無い。そしてダークネスミストは聖女を蝕むために編み出した魔法じゃ。その内息絶えるじゃろう」

 「狙われていた……聖女が弱点とばかり……」

 「クク、いい顔じゃぞ? さあ、もっと苦しめ! そして死ぬがいいわ!」

 カツンと杖で床を叩くと、床からズズズ……と、先程消えたはずの魔族達を生み出していた。どれだけ出せるのよ……!

 「ガウウ……!」

 「わん……わん!」「きゅきゅん」「きゅふぅぅん」

 レッサーとグレーターを一生懸命止めているレジナ達も体力的に厳しいのか動きが鈍くなってきた、長引くのはまずいわね。

 <おのれ……これ見よがしにまた……>

 「ルーナ、チェイシャ、こうなったら三人で叩くぞ。聖剣セイクリッドセイバー……まだうまく扱えないが……」

 「黄色と緑は引きつけるから、青をレイドさん、赤をチェイシャで……チェイシャ?」

 カルエラートさんの復帰を待っている暇は無いと、レイドさんと私は攻撃を仕掛ける事に決めた。

 だが、チェイシャが言葉を発さない。怖気づいたと言う事は無いと思うけど……などと考えていたら、チェイシャがポロッと呟く。

 <ふむ……これ以上長引かせるのは得策ではないのう。リリーよ、後は頼むぞ>

 <……任されたっぴょん>

 魔力障壁の向こうでリリーが神妙な感じで頷いていた。

 ……まさか!?

 「ダメよチェイシャ!? まだ私達は戦えるわ!」

 <お主ならそう言うと思ったわい……じゃが、こんな所で手間取っている訳にはいかぬのじゃろ!>

 チェイシャが言い切った瞬間、まばゆい光がチェイシャを包み込んでいた。
 
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