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最終部:タワー・オブ・バベル
その262 強襲
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「ん……」
「ルーナ起きましたか? 朝食の用意ができてますよ!」
コーンスープの良い匂いで目を覚ますと、フレーレの声で完全に頭が覚醒する。見ればすでに起きだしていて、私が最後のようだった。
「も、もう……皆起きてるなら起こしてよ……」
「わんわん♪」
「きゅんきゅん♪」「きゅふん」
そそくさと毛布を取ると、中からシルバ達が出てきて私の足にじゃれついてきた。昨日カバンで寝て、そのままずっと寝ていたからとても元気だ。
「う" ……体が重い……」
歩こうとすると、足がすごく重く感じていた。そこにレイドさんがコーヒーを飲みながら私に声をかけてくれた。
「ゆっくり体を動かした方がいい。アイスゴーレムと戦って派手に動いたから節々が痛いぞ。俺も鎧を着て動くと少ししんどい」
「レイドさんでも? 急ぎたいけど、この雪原は結構大変かもね」
「上もそうだとは限らないけど、戦闘は極力動き回らない方がいいかもしれないわね」
ママが涼しい顔でそう言うが、足は少し震えていた。どうも疲れはとれていないようで、口数はみんな少なかった。
「パンもスープもまだありますからね!」
唯一、フレーレだけが元気だった。
朝食を食べ終わった後、すぐに出立。
四十一階の扉を開けた時、私達は呆然となってしまった……。
「こ、これを登るの?」
「むう……流石にこれは……」
珍しくお父さんも言葉を詰まらせて首を上にして見上げていた。なんと四十二階は断崖絶壁が立ちはだかっていたのだった。段々になっているので、少しずつ休憩すれば問題ないと思うけど専用の道具は無いのでかなり時間がかかると思う。
「露骨な時間稼ぎだな。今から戻ってもアイスゴーレムに遭遇する可能性もあるから登るのがいいだろうな」
「私はニンジャの修行で慣れていますが、レイド殿とニールセン殿は鎧があるから厳しいですね」
パパとカイムさんがそれぞれ口を開くと、苦い顔をする二人。それに私達女性陣もこれを登り続ける体力があるかと言われれば少し心もとない。
<ぴー。ファウダー、ここはわたし達の出番かしらね>
<そうだね。魔物が少ないなら様子見する必要もなさそうだし……>
「何の話?」
セイラがジャンナとファウダーが何やら相談しているところに話しかけると、ファウダーがセイラに振り向いて答えた。
<オイラとジャンナが大きくなってみんなを背中に乗せて飛ぶよ。オイラ達は主から魔力を貰えばあまり疲れないしね>
それだけ言うとみるみるうちに大きくなり、これぞドラゴン! って感じのかっこいい容姿に変わった。これならレイドさん達男性陣は余裕だと思う。
「学院で見たミナルーシュさんをおもいだしますね……」
<あのドラゴンゾンビ? ファウダーの方がかっこいいわよ? とりあえずわたしの背はそこまで広くないからフレーレ達が乗って>
ジャンナも不死鳥状態に戻り、綺麗な羽をはためかせながらフレーレに言う。久しぶりに見たわねこの姿も。
「がう!」
「わんわん!」
「はいはい、あんたたちも乗って乗って」
レジナがファウダーの背にさっと乗って、シルバはアルモニアさんが抱っこしてやはりファウダーの背に乗り、エクソリアさんはシロップとラズベを抱っこしてジャンナの背に乗った。
『ふむ……これくらいの供給なら問題なさそうだね』
<あまり酷いようなら言ってください>
『分かってるよ。でも、ここはこれが最善だろう。急ごう、時間が惜しい』
<それじゃいくわよ! しっかり捕まって!>
ぶわっと羽をはばたかせて少し浮遊感を感じた後、風を受けながら上昇を始めた!
「わ、もう下があんなに……」
「危ないわよフレーレ!」
下を覗き込んで驚くフレーレを引っ張って戻し、私は上を見る。あくまでもここは塔の内部だから天井があるはず。だからそんなに高くないと思うけど……。
数十分ほど登っていると、ファウダーがこちらに向かって叫んできた。
<……! 風が強くなってきた! しっかり捕まっていて! ジャンナ、気をつけて>
<わかったわ!>
ファウダーの言うとおり、強風が吹きすさび目を開けていられないほどの吹雪になってきた。
「くう……」
「塔の中なのに凄いわね……」
「まだ上に着かないの……!」
<平原が見えたわ!>
うっすら目を開けると、断崖が切れ下の階と同じような雪原が広がっており、ジャンナが一旦着地をし、ファウダーも続けて降りてきた。
「結構登って来たな……縦移動しかしていないが……」
パパが断崖を覗き込みながら呟くと、お父さんが隣に歩いていき上と下を見てパパに話しかけていた。
「もしかしてこのフロア、何階か繋がっているんじゃないか? 一フロアにしては天井が高すぎる。まだ上がありそうだ」
「ということはここって四十二階、とか?」
「いや、ファウダー達の飛ぶ早さを考えると四十三階くらい登っているかもしれないな」
<だとしたら早くていいんじゃない? 飛んで行けば魔物にも会わないでしょうし>
「いや、女神の魔力を使っているならなるべく歩いたほうがいいだろう。飛んでくれたおかげで楽ができたし」
レイドさんの言葉を聞いて私達は頷き、再び雪原を歩き出す。しかし、このフロア……嫌らしいのはここからだった。
「断崖……」
「これくらいなら自力で登ろう」
「ガウ!」
狼達はうまいこと足場を登って行き、上で尻尾を振って待っていた。
「あんまり動かないでねー!」
さっき登った断崖はほとんど垂直だったけど、今回はまだ足をかける場所があるし高さもそれほどでもないので登れる。
「ふう……ふう……」
「もう少しだ……!」
『ボク達にこんな重労働をさせるなんて……神裂、絶対倒してやる……』
あと一息、そう思っていたところで先に登りきっていたレジナ達が突然吠えはじめた。
「ガウウウウウ!」
「わんわんわん!」
アォォォォォン!
「きゅ、きゅきゅーん!」「きゅふぅぅぅん……」
「ガオウ!!」
「なに!? どうしたの! レジナ!」
<オイラが行くよ!>
レジナ達に混じって聞いたことがない鳴き声が混じっている。バタバタと争っている音が聞こえるが、ここからでは様子が分からない……! 横を飛んでいたファウダーが急いでレジナ達の所へ向かってくれた。
「は、早く行かないと」
『うおおおお!』
アルモニアさんが狼達のピンチと悟ったか、凄い勢いで登り始めた!? 私達も負けじと追いかけ、何とか登りきると息を飲む光景が広がっていた。
<こいつ!>
ブォォォォ!
ヒャン!?
丁度ファウダーが何者かにブレスを吐いて凍りつかせている所だった。けど、それよりも私は狼達に駆け寄った。
「レジナ! シルバ!」
「くぅーん……」
「グルル……」
「ごめん! フレーレかセイラ、回復をお願い!」
「はい! ≪シニアヒール≫」
一体何があったのか、レジナとシルバはケガをしており真っ白な雪が赤く染まっていた。
あれ……シロップとラズベは!?
「シロップ達が居ない!」
私が叫ぶと、動かなくなった何かを警戒しながら私に告げてきた。
<ごめん、間に合わなくて……二匹が攫われた……>
「攫われた!? どどどど、どうしてシロップ達を?」
「落ち着けルーナ。ファウダーが分かるはずないだろう? とりあえずレジナ達を襲ったこいつらを確認してみみるぞ」
心臓がどくどくしている中、お父さんは冷静にファウダーが凍らせた何かに注目した。カイムさんとニールセンサンがゆっくりと近づきそれを見て呟いた。
「狼……?」
「ですね、それにしても真っ白すぎるとは思いますけど……」
「キレイ、ですね。あ……!」
フレーレが小さく声をあげると、白い狼はまるで溶けるように雪に染み込んで消えた……。
「何だったのかしら……」
「分からん、が、あまりゆっくりしている暇はなさそうだ」
「え?」
オオオオオン!
「な!? いつの間に!」
どこから現れたのか、先程ほど雪に染み込んで消えた真っ白な狼が数匹、赤い目をぎらつかせながら私達を取り囲んでいた。
『さっさと蹴散らして二匹を助けに行くぞ』
「そう、ですね! レイドさん、ニールセンさん、パパ! 前をお願い!」
「任せろ、ゴーレムよりは楽そうだ!」
アォォォォン!
「行くわよ! ……え!?」
弓を構えていると、私の横からサッと影が飛び出してきた。
「わぅぅぅ!」
「ガオォォォォン!」
「レジナ! シルバ!」
先に仕掛けたのはあまり見たことがない形相をした狼親子だった!
「ルーナ起きましたか? 朝食の用意ができてますよ!」
コーンスープの良い匂いで目を覚ますと、フレーレの声で完全に頭が覚醒する。見ればすでに起きだしていて、私が最後のようだった。
「も、もう……皆起きてるなら起こしてよ……」
「わんわん♪」
「きゅんきゅん♪」「きゅふん」
そそくさと毛布を取ると、中からシルバ達が出てきて私の足にじゃれついてきた。昨日カバンで寝て、そのままずっと寝ていたからとても元気だ。
「う" ……体が重い……」
歩こうとすると、足がすごく重く感じていた。そこにレイドさんがコーヒーを飲みながら私に声をかけてくれた。
「ゆっくり体を動かした方がいい。アイスゴーレムと戦って派手に動いたから節々が痛いぞ。俺も鎧を着て動くと少ししんどい」
「レイドさんでも? 急ぎたいけど、この雪原は結構大変かもね」
「上もそうだとは限らないけど、戦闘は極力動き回らない方がいいかもしれないわね」
ママが涼しい顔でそう言うが、足は少し震えていた。どうも疲れはとれていないようで、口数はみんな少なかった。
「パンもスープもまだありますからね!」
唯一、フレーレだけが元気だった。
朝食を食べ終わった後、すぐに出立。
四十一階の扉を開けた時、私達は呆然となってしまった……。
「こ、これを登るの?」
「むう……流石にこれは……」
珍しくお父さんも言葉を詰まらせて首を上にして見上げていた。なんと四十二階は断崖絶壁が立ちはだかっていたのだった。段々になっているので、少しずつ休憩すれば問題ないと思うけど専用の道具は無いのでかなり時間がかかると思う。
「露骨な時間稼ぎだな。今から戻ってもアイスゴーレムに遭遇する可能性もあるから登るのがいいだろうな」
「私はニンジャの修行で慣れていますが、レイド殿とニールセン殿は鎧があるから厳しいですね」
パパとカイムさんがそれぞれ口を開くと、苦い顔をする二人。それに私達女性陣もこれを登り続ける体力があるかと言われれば少し心もとない。
<ぴー。ファウダー、ここはわたし達の出番かしらね>
<そうだね。魔物が少ないなら様子見する必要もなさそうだし……>
「何の話?」
セイラがジャンナとファウダーが何やら相談しているところに話しかけると、ファウダーがセイラに振り向いて答えた。
<オイラとジャンナが大きくなってみんなを背中に乗せて飛ぶよ。オイラ達は主から魔力を貰えばあまり疲れないしね>
それだけ言うとみるみるうちに大きくなり、これぞドラゴン! って感じのかっこいい容姿に変わった。これならレイドさん達男性陣は余裕だと思う。
「学院で見たミナルーシュさんをおもいだしますね……」
<あのドラゴンゾンビ? ファウダーの方がかっこいいわよ? とりあえずわたしの背はそこまで広くないからフレーレ達が乗って>
ジャンナも不死鳥状態に戻り、綺麗な羽をはためかせながらフレーレに言う。久しぶりに見たわねこの姿も。
「がう!」
「わんわん!」
「はいはい、あんたたちも乗って乗って」
レジナがファウダーの背にさっと乗って、シルバはアルモニアさんが抱っこしてやはりファウダーの背に乗り、エクソリアさんはシロップとラズベを抱っこしてジャンナの背に乗った。
『ふむ……これくらいの供給なら問題なさそうだね』
<あまり酷いようなら言ってください>
『分かってるよ。でも、ここはこれが最善だろう。急ごう、時間が惜しい』
<それじゃいくわよ! しっかり捕まって!>
ぶわっと羽をはばたかせて少し浮遊感を感じた後、風を受けながら上昇を始めた!
「わ、もう下があんなに……」
「危ないわよフレーレ!」
下を覗き込んで驚くフレーレを引っ張って戻し、私は上を見る。あくまでもここは塔の内部だから天井があるはず。だからそんなに高くないと思うけど……。
数十分ほど登っていると、ファウダーがこちらに向かって叫んできた。
<……! 風が強くなってきた! しっかり捕まっていて! ジャンナ、気をつけて>
<わかったわ!>
ファウダーの言うとおり、強風が吹きすさび目を開けていられないほどの吹雪になってきた。
「くう……」
「塔の中なのに凄いわね……」
「まだ上に着かないの……!」
<平原が見えたわ!>
うっすら目を開けると、断崖が切れ下の階と同じような雪原が広がっており、ジャンナが一旦着地をし、ファウダーも続けて降りてきた。
「結構登って来たな……縦移動しかしていないが……」
パパが断崖を覗き込みながら呟くと、お父さんが隣に歩いていき上と下を見てパパに話しかけていた。
「もしかしてこのフロア、何階か繋がっているんじゃないか? 一フロアにしては天井が高すぎる。まだ上がありそうだ」
「ということはここって四十二階、とか?」
「いや、ファウダー達の飛ぶ早さを考えると四十三階くらい登っているかもしれないな」
<だとしたら早くていいんじゃない? 飛んで行けば魔物にも会わないでしょうし>
「いや、女神の魔力を使っているならなるべく歩いたほうがいいだろう。飛んでくれたおかげで楽ができたし」
レイドさんの言葉を聞いて私達は頷き、再び雪原を歩き出す。しかし、このフロア……嫌らしいのはここからだった。
「断崖……」
「これくらいなら自力で登ろう」
「ガウ!」
狼達はうまいこと足場を登って行き、上で尻尾を振って待っていた。
「あんまり動かないでねー!」
さっき登った断崖はほとんど垂直だったけど、今回はまだ足をかける場所があるし高さもそれほどでもないので登れる。
「ふう……ふう……」
「もう少しだ……!」
『ボク達にこんな重労働をさせるなんて……神裂、絶対倒してやる……』
あと一息、そう思っていたところで先に登りきっていたレジナ達が突然吠えはじめた。
「ガウウウウウ!」
「わんわんわん!」
アォォォォォン!
「きゅ、きゅきゅーん!」「きゅふぅぅぅん……」
「ガオウ!!」
「なに!? どうしたの! レジナ!」
<オイラが行くよ!>
レジナ達に混じって聞いたことがない鳴き声が混じっている。バタバタと争っている音が聞こえるが、ここからでは様子が分からない……! 横を飛んでいたファウダーが急いでレジナ達の所へ向かってくれた。
「は、早く行かないと」
『うおおおお!』
アルモニアさんが狼達のピンチと悟ったか、凄い勢いで登り始めた!? 私達も負けじと追いかけ、何とか登りきると息を飲む光景が広がっていた。
<こいつ!>
ブォォォォ!
ヒャン!?
丁度ファウダーが何者かにブレスを吐いて凍りつかせている所だった。けど、それよりも私は狼達に駆け寄った。
「レジナ! シルバ!」
「くぅーん……」
「グルル……」
「ごめん! フレーレかセイラ、回復をお願い!」
「はい! ≪シニアヒール≫」
一体何があったのか、レジナとシルバはケガをしており真っ白な雪が赤く染まっていた。
あれ……シロップとラズベは!?
「シロップ達が居ない!」
私が叫ぶと、動かなくなった何かを警戒しながら私に告げてきた。
<ごめん、間に合わなくて……二匹が攫われた……>
「攫われた!? どどどど、どうしてシロップ達を?」
「落ち着けルーナ。ファウダーが分かるはずないだろう? とりあえずレジナ達を襲ったこいつらを確認してみみるぞ」
心臓がどくどくしている中、お父さんは冷静にファウダーが凍らせた何かに注目した。カイムさんとニールセンサンがゆっくりと近づきそれを見て呟いた。
「狼……?」
「ですね、それにしても真っ白すぎるとは思いますけど……」
「キレイ、ですね。あ……!」
フレーレが小さく声をあげると、白い狼はまるで溶けるように雪に染み込んで消えた……。
「何だったのかしら……」
「分からん、が、あまりゆっくりしている暇はなさそうだ」
「え?」
オオオオオン!
「な!? いつの間に!」
どこから現れたのか、先程ほど雪に染み込んで消えた真っ白な狼が数匹、赤い目をぎらつかせながら私達を取り囲んでいた。
『さっさと蹴散らして二匹を助けに行くぞ』
「そう、ですね! レイドさん、ニールセンさん、パパ! 前をお願い!」
「任せろ、ゴーレムよりは楽そうだ!」
アォォォォン!
「行くわよ! ……え!?」
弓を構えていると、私の横からサッと影が飛び出してきた。
「わぅぅぅ!」
「ガオォォォォン!」
「レジナ! シルバ!」
先に仕掛けたのはあまり見たことがない形相をした狼親子だった!
応援ありがとうございます!
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