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29. 確証

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29. 確証



 突然来賓室に呼ばれた私はそこで魔導科学研究所の所長のルージュさんと助手のキールさんに昨日の地下洞窟の件を色々聞かれていた。そして今、ステータスカードを見せてほしいと言われて絶賛ピンチ中である。

「えっと……」

「あら?どうかしたの?何か都合が悪いことでもあるのかしら?」

 私がどうしたものかと考えていると、ルージュさんは表情を変えずにすべてを見透かすような瞳で私をじっと見てくる。くっ……これは完全に疑われてるわね。

 ステータスカード自体を見せることは問題はない。問題なのはこの人たちが王宮から来ていることだ。つまり前にフレデリカ姫様に言われたステータスカードの『色』について知っている可能性があると私は考えているから。

「えっと今日は家に忘れてきてしまって……というか私のこと何か疑ってますか?さっきから尋問されてるみたいに感じるんですけど?」

「いえそういうわけでは。ボクたちはこれが仕事なので」

「疑ってるわよイデア=ライオット」

「所長!?」

「回りくどいのは嫌いなの。私たち魔導科学研究所の仕事は魔族の魔力を研究し、その秘密を探ること。ここ数ヶ月、この近辺の魔力が活性化していることは報告を受けていたわ。しかしその反応が昨日突然消えた。そして今まで発見されなかった地下洞窟が発見された。ここまで状況証拠が揃っていれば、私じゃなくてもあなたを疑うわ」

 ルージュさんが淡々と話していく。その顔からは感情を読み取ることができない。横にいるキールさんは驚きの声を上げている。

「……」

「黙り込むということは心当たりがあるようね。さあ、早くステータスカードを出しなさい」

「……」

 私はルージュさんの鋭い視線に射抜かれながらも沈黙を貫く。するとルージュさんの表情がどんどん険しくなっていく。

 ……というか何かバカらしくなってきた。せっかく善意で『ゲート』を潰しておいたのに、なんでここまで追求されないといけないんだろう?それに私のことを転生した元勇者だと知ってるならまだしも、ただの一般人だと思ってる人にここまでしつこく言われる筋合いないわよね。よし決めた!こうなったら徹底的にやってやろうじゃないの!!

「……ステータスカードは見せません。この世界でステータスカードを強制的に見せなきゃいけないことなんてないですよね?そこまで言うなら鑑定でもしたらどうですか?」

「なに?」

「優秀な魔導科学研究所の所長様なら他人のステータスくらい鑑定のスキルで簡単に見ることができるはずですよね?」

「貴様……」

 私が挑発的な態度を取ると、ルージュさんの表情は読み取れないが怒りに染まっていくのが分かる。そして隣でオロオロしているキールさん。しかし、ルージュさんは一度深呼吸をして落ち着きを取り戻す。

「……可愛くないやつだな」

「褒め言葉として受け取っておきます」

「確かに鑑定のスキルを使えば良いが……今の私には確証がない。それこそ問題になるのは困る。これでも魔導科学研究所の所長という立場に責任があるのでね?まぁいいわ。今日のところはこれで帰るとする。イデア=ライオット、長い付き合いになりそうね?その時は覚悟しておくといいわ。行くわよキール」

 ルージュさんはそう吐き捨てると部屋から出ていく。そしてそれに続くようにキールさんも慌てて出ていった。

「ふぅ……緊張したぁ」

 二人がいなくなったことで一気に緊張感から解放される。私は椅子に深く腰掛けると大きく息を吐き出す。

 っていうか私もなんであんなにムキになったのかわからないんだけど……。

 そう言えば前世の記憶も完璧ではないし、何かあの所長様にされたのかも。まあいいわ。とにかくこれで今は面倒ごとに巻き込まれる可能性は減ったはずだし。私はそんなことを考えながら、テーブルの上に置いてあった紅茶を飲み干すと、来賓室を後にした。
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