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21 言い訳タイム

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「悪かったね。本当にごめんね」

 授業が終わって部屋に帰ってくると、シャルに謝られた。

「ちゃんと正面玄関から入ったんだけどね。関係者以外立入禁止だって、守衛に止められて、入れてもらえなかったんだ。ツノを見せて、契約精霊だって説明したけど、信じてもらえなくてね。やっぱりツノが小さすぎたのかな」

 後から関係者に謝られたそうだけど、精霊貴族が耳の代わりにツノをつけるのを許可されたのは、ごく最近のことで、下の者にまでは周知されていなかったようだ。

「鹿の精霊が、貴族になったら立派なツノを失ってしまうのはイヤだってゴネてね。牛の精霊も味方につけて騒ぐから、面倒くさくなった陛下が法案を議会に通したんだ。まだ、10年前のことだから、周知不足だね。無能な部下は処分しておくよ」

 シャルが経緯を説明してくれる。

「次からはちゃんと学園に行けるからね。上層部に話をつけておくから。うーんと、次は……行事予定表によると精霊運動会だね。なにそれ、おもしろそう」

 楽しみだなとのんきに笑う精霊。私の手をつないで、聖力をねだってくる。
 契約精霊と束の間の夜を楽しんだけれど、翌日、私はまた、厄介ごとに襲われる事態となる。

「引っ越しですか?」

 休みの日の朝早く、ドアをたたいて起こしに来たのはググルさんだった。

「上級寮に移るんだよ。よかったじゃないか。ほら、さっさと荷物をまとめな。手伝ってあげるから」

 催促されて、寝起きの目をこする。
 待って、よく分からない。とりあえず、顔を洗いに洗面所に行って来ます。
 眠くて、ぼうっとする頭で戻ってきた時には、私の少ない荷物は、ほとんど段ボールに入れられていた。

 上級寮はすこし南側にある。校舎が近くなるのは便利かな。それに、広くてきれい。家具がないから余計に広い。
 自分で買えってことね。
 ググルさんと少ない荷物を片付けていると、女性が部屋にやって来た。

「ああ、私の娘でね、この寮の管理人をしている」

 !お下がりの洋服をいただいていた娘さん!
 灰色の髪を後ろで一つにまとめて、紺色のメイド服を着ている。

「召喚庁情報部所属管理人のシリイ・ターガリヤンと申します。シリイとお呼びください」

 シリイさん・・・って、ん? 情報部所属って管理人じゃなくて監視人ですよね。きっと。

「ところで、カナデさんの契約精霊はドラゴンの精霊男爵でツノが生えているそうですが」

 シリイさんは、さっそく、灰色の目をすぼめて尋問してくる。

「えっと、なんの精霊かは聞いてないです」

 嘘を見逃さないと言うような鋭い視線を見つめ返す。
 嘘は言ってないですよ。

「ドラゴンは幻獣種ですが、外見は爬虫類の仲間として我々は想定していたのですが、男爵に上がれるものでしょうか。」

「えっと。よく分かりません」

 じっと見る目がちょっと怖い。

「爬虫類の男爵は存在しないと思っていたのですが、ドラゴンは爬虫類ではないと?」

「よく分かりません」

そんなこと知るわけないじゃない。逆に教えてよ、シリィさん。
 その後も、シリィさんの尋問は続いた。


「疲れた」

やっと一人になって、がらんとした広い部屋を見渡す。
3LDKバストイレ付き。ちょっと嬉しい。きれいなトイレ。広いバスルーム。そしてキッチンにリビング。あちこち見て楽しくなる。

「ちょっとはマシになったね」


振り向くと金色の精霊。

「どうして?」

「新居を見に来たんだよ。契約精霊だからね。なんにもない部屋だね」

リビングは空っぽで、さっき運んだダンボールだけ置いてある。

「こっちは書斎かな?」

大きなワークデスクとワークチェアが一脚だけ。

「じゃあ、寝室に行こう」

え?
腕を取られて寝室に連れて行かれる。

「待って、なんで寝室に行くの?」

「座るところがないじゃないか。ああ、これなら二人で座れるね」

寝室には、キングサイズの大きなベッドが置いてあった。
さっそく、シャルはそこに座り、

「この広さなら二人で寝れるね」

行儀悪く寝そべった。

「カナデもおいで。今夜は泊まっていこうかな」

妖しい金色のまなざしで誘ってくる。

……また、からかわれてる。

誘惑に打ち勝って、シャルを1人寝室に置きざりにして、リビングに戻ってきた。
2年生になったら、私も少しは成長するのだよ。えっへん。

とりあえず、荷物を片付けよう。
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