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31 黄金の怒り

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 オレはリノ。フェニックぎつねの精霊子爵だ。オレの主人は世界一強くてかっこいい。自慢の主人だ。気前よく黄金をぼろぼろ出してくれるのも太っ腹でかっこいい。

 いつもはニコニコしてるご主人様だけど、今はめちゃくちゃ怒っている。なんでだ。オレがさっき、聖女を認めないって言ったからか? でもさ、俺とおんなじぐらいの見た目の子供だぜ。シャル王子と並ぶんだったら、もうちょっとさ、こう、女っぽいのがいいんじゃないか?昼間見た後宮行きの女みたいなさ。でも、シャル様は、あの子供がいいんだよなぁ。もしかしてロリコ……いやいや。

 とにかく、今、シャル様は、めっちゃくっちゃに怒ってる。魔力がダダ漏れだ。一般精霊の召使いなんて近づくこともできないぐらい。

「我が君。ロイタージュを連れて参りました」

 マッケンジーがヒョウ柄の男爵精霊の首もとをつかんで、引きずって入ってきた。うわっ、こいつ何やらかしたんだ。シャル様の笑顔が怖えよ。

「僕の代理はちゃんとできたのかな。経緯を説明してもらおうか」

 うえー。ほほ笑んでるのに目が怖いよ。シャル様が椅子を勧めないから、ヒョウ柄精霊は床にひざまずいたまま、精霊運動会で何があったのかを話した。レアドロップアイテムの話ではにっこりうなづいたけど、コウモリ精霊の話になると、金色の目がギラリと不穏に光った。

「そうか、僕のものに手を出すと宣言したのか」

 さっきまでのお怒りがまだマシな方だと思うほどの、激怒だ。金色の魔力の炎が燃えている。

「必ず、コウモリ野郎の息の根を止めると誓います」

 魔力圧に耐えながら、ヒョウ柄精霊がシャル様に誓った。
 金色の炎の中で、シャル様はしばらく沈黙していたけど、何かを思いついたように、にっこり笑った。

「いいだろう。コウモリの処分はお前に任せたよ。ああ、決闘に備えて、聖力を補充する必要があるね。ちょうどいい。僕の寝室に第一王子の聖女が紛れ込んだようだ。処分する前に、聖力を搾り取れるだけ絞ればいいよ」

 金の王子はそう言うと、さっさと行けとヒョウ柄精霊に手を振って追い払った。

 第一王子の後宮入りした聖女が、寝室に入りこんだのか。シャル様の魅了眼にやられていたな。抵抗力が弱い人間は、シャル様にその気がなくても、すぐに魅了されてしまうからな。
 うっとおしくシャル様にすがっていた女だな。せっかく、第一王子が拾ってくれたのに、シャル様のベッドに入るとは。
 でも、さすが、シャル様。他の男のベッドに潜り込むような聖女を選ばなくて正解だ。やっぱり、今日会った子供聖女の方で正解だったのかも。シャル様が本気で誘惑しようとしているのに、全く影響がないとは。いつも側にいるオレたちでさえ、シャル様の全力の魅了に、くらくらしてたのにさ。まあ、ちょっとは認めてやってもいいかもしれないな。

「ところで、二人に聞きたいんだけど、人間の女の子が好きなものって何だと思う?」

 シャル様が、頬に手を当てながら聞いてきた。
 ああ、あの子供聖女にプレゼントでもするのかなって、すぐ分かった。それで、答えようとしたら、マッケンジーが、

「それはもちろん我が君です! 我が君の美しさはどんな女性も虜にするでしょう。我が君こそが至幸の喜び。人間の女性に限らず、老若男女がシャル様を愛しております!」

 とか、また髪の毛を逆立てながら興奮して話しだした。こいつは、これさえなかったら、有能なんだけどな。まあ、上司で俺より上の身分だけど。

 鬱陶しそうに手を振ってマッケンジーを追い払ったシャル様に、女子供の喜びそうなお菓子屋を教えて差し上げた。
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