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第2部 魔法学校編
70 余談とあとがき
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『神様、神様。ねえ、神様聞いてる? 魔王退治っていったら勇者の仕事でしょ! 私じゃなくって、勇者を召喚してよ! どうせならイケメンで顔のいい男希望! 日本の芸能人で言ったら、レン君とかシュン君みたいな子を召喚してください。お願いします!』
その日、私は勇者を召喚してしまった。
◇◇◇
俺の名前は佐山涼。理工学系の大学に家から通っている。
最近の悩みは、ずっと自主研究している空間転移装置に開発の見込みがないってこと。今の地球の技術では無理か。
もう一つの悩みは、最近テレビによく出ているレンってアイドルが、俺に似ていること。
「涼君! この服作ったの。写真撮るから着て!」
幼馴染の柚葉が、ポニーテールを揺らしながら、ノックもせずに俺の部屋に入ってきた。
「この前ね、『青春きらきら学園イケメン応援団』を見て来たの。レン君の衣装よ!」
柚葉は、レンってやつのファンらしい。俺に似てるってことは、俺のことも少しは、気になるってことか?
仕方ないので、持ってきた学ランを着てやることにした。
「これでいいか?」
着替えている間、ベッドに座って顔を覆っていた柚葉は、俺の声に顔から手をのけた。
「! きゃー! もう、そのままレン君じゃん! 写真、スマホ、ポーズして!」
歓声をあげる柚葉に、俺は言われるまま腰に手をあててポーズをとる。スマホのフラッシュがたかれる。まぶしい。
その時、
ぐらっと周りの空間が揺れた。
「ひっ! きゃ! れ、レン君!!」
気が付いたらそこは、教会のようだった。留学生なのか金髪の女の子が、俺を見て涙を流していた。
「レン君だぁ。青きら団のレン君……。神様、ありがとう。私、もう、死んでもいい……」
うっとりこっちを見つめる女の子を前に、俺は自分が置かれている状況を理解するのに、しばらく時間がかかった。
どうやら俺は、異世界召喚ってのをされたらしい。白い服を着た神官ってやつらが、俺を囲んで、「勇者様、魔王を退治してください」なんて言う。これは、ネット小説で読んだことある、勇者召喚ってやつか。
聖女リシアが俺をキラキラ光る目で見ている。日本に帰れないなら仕方ない。俺はここで、俺のできることをする。魔王を倒してこの世界を救うとするか。
※※※※※※※
てな感じの、初代勇者でした。この後、勇者が活躍を終えた500年後の未来で、闇の精霊王の魔石がリョウ君を過去に飛ばして、次元の歪みで過去が改変されて、とか、よくわからない異世界事案が起きて、リョウ君が勇者涼に成り代わります。で、過去も改変して、召喚がなかったことになります。
※※※※※※※※
ああ、いい人生だったな。まさか普通の大学生の俺が、異世界に勇者召喚されて、魔王を倒すなんて……。苦労もあったけど、楽しかったな。
そろそろお迎えが来たようだ。先に天国に行った妻たちは、俺を待っててくれるかな。ああ、走馬灯だ。今までの冒険が……。
「……く……君、……り……、涼君!」
!
気がついたら俺は、自分の部屋にいた。目の前で、手を振るのは、スマホを持った幼馴染の柚葉。
俺は、いったい、何を?
「もう、涼君ったら、ぼうっとして、どうしちゃったのよ」
頬を膨らませる柚葉を見て、今まで掴んでいた何かが、消え去っていく。
なんだか長い夢を見ていたような。
「次は、あの名シーンを撮りたいの! レン君がシュン君を壁ドンするの。もう、キュンってしちゃうんだから」
ぼうっとする頭を振って、柚葉の要望に応える。柚葉に近寄り、体を寄せて壁際に追い詰めた。
「ちょ、ちょっと。り、涼君?」
壁を背にして、怯えた表情で俺を見上げる柚葉。その真っ赤になった顔がかわいくて、思わずにやりと笑う。
「これが、欲しいんだろ?」
ドンッ。
柚葉の顔にふれるほど近くの壁に、右手をついた。
涙目になった柚葉が俺を見上げる。俺は、彼女のピンク色の唇に、自分のそれをゆっくりと近づけた。
~以下略
※※※※※※※※※
と、こんなふうに勇者召喚はなかったことになります。(でも、ハーレム体質はちょっと残る)
そう、もともとの召喚勇者の涼は、典型的なハーレム勇者でした。
ヒロインの聖女リシアは、浮気不倫絶許な世界の住人なので、他の仲間二人に手を出した時点で、涼をふって、王子と結婚します。
一方、リョウ君は中身6歳なのでハーレムはありません。始まりの村で村人の先祖が目撃したのは、夜中に姉を恋しがって泣いてるリョウ君を、朝まで慰めた聖女リシアの姿です。リシアはリョウ君にとってお母さん的な存在でした。
その後、10年後ぐらいに、一途にリョウ君を想っていた女騎士と結婚します。女魔法使いは、スカラにそっくりだったので、苦手でした。
という設定を作っていたのですが、話に入れられなかったので、こちらに書きました。
ここまでお読みいただいて、ありがとうございます。
感想も、ありがとうございます!
リョウ君がいなくなってから、レティシアがあまり語ってくれなくなったので、第二部はなかなか書けなくて……。でも、いただいた感想に励まされて、完結できました。
誤字脱字を教えてくださった方、大変助かりました。認証不要とありましたので、この場でお礼を言わせてください。ありがとうございました。
エールをいただけて、本当に嬉しかったです。わざわざ広告を見てくださった方に感謝!
本当にありがとうございました。
その日、私は勇者を召喚してしまった。
◇◇◇
俺の名前は佐山涼。理工学系の大学に家から通っている。
最近の悩みは、ずっと自主研究している空間転移装置に開発の見込みがないってこと。今の地球の技術では無理か。
もう一つの悩みは、最近テレビによく出ているレンってアイドルが、俺に似ていること。
「涼君! この服作ったの。写真撮るから着て!」
幼馴染の柚葉が、ポニーテールを揺らしながら、ノックもせずに俺の部屋に入ってきた。
「この前ね、『青春きらきら学園イケメン応援団』を見て来たの。レン君の衣装よ!」
柚葉は、レンってやつのファンらしい。俺に似てるってことは、俺のことも少しは、気になるってことか?
仕方ないので、持ってきた学ランを着てやることにした。
「これでいいか?」
着替えている間、ベッドに座って顔を覆っていた柚葉は、俺の声に顔から手をのけた。
「! きゃー! もう、そのままレン君じゃん! 写真、スマホ、ポーズして!」
歓声をあげる柚葉に、俺は言われるまま腰に手をあててポーズをとる。スマホのフラッシュがたかれる。まぶしい。
その時、
ぐらっと周りの空間が揺れた。
「ひっ! きゃ! れ、レン君!!」
気が付いたらそこは、教会のようだった。留学生なのか金髪の女の子が、俺を見て涙を流していた。
「レン君だぁ。青きら団のレン君……。神様、ありがとう。私、もう、死んでもいい……」
うっとりこっちを見つめる女の子を前に、俺は自分が置かれている状況を理解するのに、しばらく時間がかかった。
どうやら俺は、異世界召喚ってのをされたらしい。白い服を着た神官ってやつらが、俺を囲んで、「勇者様、魔王を退治してください」なんて言う。これは、ネット小説で読んだことある、勇者召喚ってやつか。
聖女リシアが俺をキラキラ光る目で見ている。日本に帰れないなら仕方ない。俺はここで、俺のできることをする。魔王を倒してこの世界を救うとするか。
※※※※※※※
てな感じの、初代勇者でした。この後、勇者が活躍を終えた500年後の未来で、闇の精霊王の魔石がリョウ君を過去に飛ばして、次元の歪みで過去が改変されて、とか、よくわからない異世界事案が起きて、リョウ君が勇者涼に成り代わります。で、過去も改変して、召喚がなかったことになります。
※※※※※※※※
ああ、いい人生だったな。まさか普通の大学生の俺が、異世界に勇者召喚されて、魔王を倒すなんて……。苦労もあったけど、楽しかったな。
そろそろお迎えが来たようだ。先に天国に行った妻たちは、俺を待っててくれるかな。ああ、走馬灯だ。今までの冒険が……。
「……く……君、……り……、涼君!」
!
気がついたら俺は、自分の部屋にいた。目の前で、手を振るのは、スマホを持った幼馴染の柚葉。
俺は、いったい、何を?
「もう、涼君ったら、ぼうっとして、どうしちゃったのよ」
頬を膨らませる柚葉を見て、今まで掴んでいた何かが、消え去っていく。
なんだか長い夢を見ていたような。
「次は、あの名シーンを撮りたいの! レン君がシュン君を壁ドンするの。もう、キュンってしちゃうんだから」
ぼうっとする頭を振って、柚葉の要望に応える。柚葉に近寄り、体を寄せて壁際に追い詰めた。
「ちょ、ちょっと。り、涼君?」
壁を背にして、怯えた表情で俺を見上げる柚葉。その真っ赤になった顔がかわいくて、思わずにやりと笑う。
「これが、欲しいんだろ?」
ドンッ。
柚葉の顔にふれるほど近くの壁に、右手をついた。
涙目になった柚葉が俺を見上げる。俺は、彼女のピンク色の唇に、自分のそれをゆっくりと近づけた。
~以下略
※※※※※※※※※
と、こんなふうに勇者召喚はなかったことになります。(でも、ハーレム体質はちょっと残る)
そう、もともとの召喚勇者の涼は、典型的なハーレム勇者でした。
ヒロインの聖女リシアは、浮気不倫絶許な世界の住人なので、他の仲間二人に手を出した時点で、涼をふって、王子と結婚します。
一方、リョウ君は中身6歳なのでハーレムはありません。始まりの村で村人の先祖が目撃したのは、夜中に姉を恋しがって泣いてるリョウ君を、朝まで慰めた聖女リシアの姿です。リシアはリョウ君にとってお母さん的な存在でした。
その後、10年後ぐらいに、一途にリョウ君を想っていた女騎士と結婚します。女魔法使いは、スカラにそっくりだったので、苦手でした。
という設定を作っていたのですが、話に入れられなかったので、こちらに書きました。
ここまでお読みいただいて、ありがとうございます。
感想も、ありがとうございます!
リョウ君がいなくなってから、レティシアがあまり語ってくれなくなったので、第二部はなかなか書けなくて……。でも、いただいた感想に励まされて、完結できました。
誤字脱字を教えてくださった方、大変助かりました。認証不要とありましたので、この場でお礼を言わせてください。ありがとうございました。
エールをいただけて、本当に嬉しかったです。わざわざ広告を見てくださった方に感謝!
本当にありがとうございました。
応援ありがとうございます!
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ありがとうございます。
読んでもらえるだけでもありがたいのに、こんな感想までいただけるなんて、本当に嬉しいです。(✿^‿^)
スカラについては、ちょっと扱いが雑でしたね。
自分で書いておきながら、「この子はなんで王太子が好きなんだろう???」と、全く心情が分からなかったので。(ひどい>.<)
でも、多分、領地を失ったマッキントン家が没落するので、今まで通りの生活はできないと思います。
「安易に異世界人召喚すんのやめれ」は、まさにそのとおり!
感想ありがとうございます。
台風! 大丈夫ですか?
この台風は変な進路ですよね。
しかも、また次の台風が…….(・o・;)
うちも備えないと。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
あれが魔物蔦の限界だったんでしょうね^_^
レティシアは「かわいかったリョウ君がハーレム勇者になってしまった」と誤解したままです。(TT)