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working the park

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社内での研修期間を終え、貴島と二人でいよいよ外出する事になった智は、少し緊張していた。

「今から丸蓉百貨店の本部に行って、バイヤーと商談するから。」

貴島は地下鉄の駅に向かう階段を降りながら、真後ろを歩く智に言った。

「はい。わかりました。」

「結局、来年の売上って前年に話詰めて決まっちゃうから、こういう商談が大事なんだよね。」

「そうなんですね。」

「この前、ウチの企画連れて色とデザインは決まったから、今日はコストの折衝ね。」

「どれくらいの仕切りなんですか?」

「丸蓉は55%だね。
ハーフのところもあるけど。」

地下鉄の車内でも、貴島のレクチャーは続いた。


「着いたぞ。」

丸蓉の本部があるビルに着いた二人は、玄関を入り、待合スペースのようなところで、アポの時間が来るまで待っていた。

「そろそろいいか。」

貴島は腕時計に視線を落とし、約束の2分前になった事を確認しながら携帯を取り出した。


「もしもし、キーエイトの貴島です。

はい。今着きましてので、よろしくお願いします」

貴島はそう告げると携帯を切り、智に

「すぐ降りてくるって。」
と、伝えた。

四分ほどして、若くてラフなヘアースタイルとジャケットにスニーカーという出立ちのバイヤーが現れた。

「バイヤー、この度ウチに入った新人で
こちらを私と一緒に担当させていただきます、吉岡といいます。」

商談ブースで着席前に、貴島は智を紹介した。

「吉岡と申します。
宜しくお願い致します。」

智は名刺を両手で手渡した。

「MD本部の東出です。
よろしくお願いします。」

挨拶を終えて、商談を始めた三人だったが、度々話が脱線し、智の学歴の話題となった。

「吉岡さん、T大卒なの?」

「ええ、まあ」

「スゴイ‥
なのに、なんでキーエイトさんなんかに。

あ、すいません、失礼な事言ってしまって。」

「勉強は好きでしたけど、根本的に頭が良くなかったんだと思います。
だから前職もクビになりました。」

「へぇ、でも例のクールジャパンのアレ
携わってたんでしょ?

結局売れたんですか?」

「いえ、何でもかんでもアニメみたいに外国にウケるかといったら、全然違いまして。

例えばこういうアイテムは、まず使用する土壌が向こうにはありませんでしたね。」

「どういうことですか?」

「日本の小学生はほとんどが歩いて通学していますよね。

でも、ヨーロッパでは親が車で送り届けるっていうのが主流の国もあったり、だとしたらしっかりとした通学鞄なんて必要ないんです。」

「なるほど」

「プロジェクト自体は失敗でした。
というか、典型的なお役所日の丸主導の不採算事業です。」

智はついつい饒舌となり、ぺらぺらと話をしてしまった。

東出は一々感心して頷き、貴島はポカンとするだけだった。

こうして智は徐々に、いや、かなりのスピードで仕事を覚え、即戦力としてバリバリやれるようになっていった。
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