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beloved

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「あー、それね。
ホントだよ、俺見たもん。」

いつものように食堂を訪れた木村とその連れ、パートの本林を加えて、三人で盛り上がっていた。

常連の竹井に彼女が出来たという話を。

「トモちゃんに恋して、ここにも熱心に通ってたみたいだけど、高嶺の花よりも、身近な雑草に行ったのかな。
最近はここにも全く来なくなったしな。」

「うわっ、ひでえ言い方」

そこに、智が帰った客の皿を片付けに通りかかった。

「ね、トモちゃん。
竹井に言い寄られてたもんね。なのに、どう思う?」

「そんな事ないですよ。でも、良かったと思います。
竹井さんて、誠実そうだし。」

木村は爪楊枝を咥え、智のお尻の辺りに視線を送りながら呟いた。

「俺だったらダメ元で、トモちゃんにチャレンジするけどなあ。
こんな美しすぎる女性が、身近にいたのならね。」

「っていうか、木村さんさあ、竹井さんの彼女見たの?」

本林が木村に聞くと、ニヤッと笑って頷いた。

「それが見たんだよ。この前、ホラ、ここでも話題になってた寿司屋あったじゃん。

あそこにその彼女を連れて来てたんだよ。」

「へえ、やるわね。

あ、吉岡さん、もう5時よ。上がってね。」

「はい。
それではお先に上がらせて頂きます。」

智は、エプロンを外し、タイムカードに打刻した。

この仕事もすっかり慣れ、勤務時間についても問題なくこなせるようになったし、帰宅後にドッと疲れが来るような事も無くなってきていた。


(うわっ)

店を出てバックから携帯を出して見てみると、和俊からLINEが何通も来ていた。

(昨日の昼間まで会ってたのに‥
こういうとこなのよねえ)

智はフッと笑い、携帯をまたバックにしまい込んだ。



「トモちゃん」

自転車置き場でふいに、背後から呼び止められた。

「あっ

竹井さん!」

智が振り返ると、竹井が立っていた。

「今、帰り?」

「はい。竹井さんは?」

「うん。終わって、これから帰るところ。」

「なんか、久しぶりって感じがしますね。」

「あ、うん、ごめん‥」

「いえ、全然責めてるんじゃなくて、元気にしてるのかなって。」

「うん、元気にしてたよ‥

あの、ちょっとだけ話してもいい?」

「えっと、はい‥ワタシはかまいませんけど。」

智と竹井は、近くにあるファミレスに入っていった。
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