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断捨離

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智が伊東家に帰ってきた。
敦の運転する車から降りると

「お帰りなさい、トモちゃん」

恵太が玄関先まで飛び出してきた。


「ただいま、恵ちゃん
帰ってきてたのね」


「うん。ママが早くこっちに戻りたいって言って、全部大急ぎで片付けたのよ。」



「トモさん、おかえりなさい」

後ろから由香里も顔を出して頭を下げた。


「由香里さん、ただいま。

全て無事に終わって本当に良かったですね。」


「ありがとうございます。
思っていたよりスムーズに片が付いて本当に良かったです。」


智は息つく暇もなく、荷物を置くと、三人に居間に集めた。


「ごめんなさいね、帰ってきて早々みんなに集まってもらって」


「いえ、どうかされたんですか」

由香里が質問すると、智は頷いて話を始めた。


「今回、東京には住む家を探すのを第一の目的として行っていたんだけど、運良く友人のお家に住ませてもらう事になったの。」


「そうなんだ。
よかったね」

恵太が言うと、智は笑みを浮かべてまた頷いた。


「それと、お仕事の方は、そう簡単には見つからないと思ったから、向こうに引越してからゆっくり探そうとしてたんだけど、これもたまたまなんだけど、お世話になっていた方が体を壊されて入院されてて…
その方が経営するお店をワタシにやってみないかって勧めていただいて…お受けする事にしたの。

当初は春くらいを目処に引っ越そうと考えてたんだけど、すぐに引越しをしなければならない状況になってしまったの。」


「えっ、いつ?」


恵太が急に不安げな顔で質問すると、智は

「三日後にはここを出て行こうと考えています。」

と、答えた。


「ちょっと急すぎるよ」

恵太は少し怒り気味に智に迫った。


「ごめんね。
そのお仕事の方が、色々準備しなくちゃいけない事があって。」


「そうか…

それは寂しいけど、そういう事情があるのなら、僕たちが引き留めるわけにはいかないよな。

わかった。

何か手伝う事はあるかい?」


「ごめんね、あっちゃん

引越すって言っても、お友達のお家に居候させてもらうので、家具とか大きなものは持って行けないの。

由香里さん、こんな事をお願いするのは心苦しいんですけど、ワタシが使っていたものとかを、引き続き使っていただけると嬉しいんですが…」


「それは、とてもありがたいです、智さん。

私も前の家にあったものはほとんど処分して、体ひとつでこちらに来させてもらっているようなものなので。
使わせていただけるなら、喜んで。」


「ありがとうございます。」


別れの時までまだ時間があると思っていた三人だったが、三日後には智がいなくなると聞かされたのだ。

三者三様の感情があったが、恵太だけは純粋に寂しさしかなく、耐えられずにその場で涙を流した。
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