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プロローグ
4. 異世界
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ここに住む? このまま?
「昨日泊まった客間を、君の部屋にすればいい。必要な物は街でそろえて、あ、家事は分担だぞ。それと……」
「いや、ちょっと待ってください!」
「あ、すまん……嫌……だったか?」
「いえ、そういう訳では……すごくありがたい話です、行く当てなんてありませんし……
けど、どうして昨日会ったばかりの人間に……」
「私は希望的観測で物事を話すのは好きではない。
君が元いた世界に帰れるかどうか、正直分からない。
ただ、事実あのオークは、二つの世界を行き来した。だから不可能ではない。
だが、絶対に帰れる、とはとても言えない。どこの誰があんなものを作り、使ったのか……調べるにしても、時間がかかるだろう。なにしろ、手がかりはあのランタンと、魔法石だけだ。
魔法石はかなり特殊な物だから、そこから探れば、とは思うが……どうだろう? 他の手がかりは燃やしてしまったしな」
あ……
「朝、買い出しに行く途中に、昨日のオークを調べてきた。だが、手がかりはなにもなかったよ。あまり悲観的なことばかり、話すつもりはないんだが……
もちろん、私の過去の研究が絡んでいるかも知れない以上、全力で当たるつもりだ。だが、それでもいつになるのか……君が生きている間には間に合わない可能性だってある」
突然、現実という冷たい刃を、突きつけられた。
俺はどちらかというと楽天家だ。今回のこともどこかで、何とかなる、と思っていた所がある。
でも、彼女の言う通りだ。帰れるかどうかなんて分からない、保証なんてなにもない……
「あの魔法石、使うことは出来ないんですか?」
「起動させることは出来るかも知れない。
だが、問題は空間の指定方法だ。これが分からなければ、使うことは出来ない。どこに飛ぶか分からないからな。
一発勝負で、そんな危険な賭けを打てるか?」
……
何も答えられなかった。
「帰れるかどうか分からない以上、君はこの世界で生きていかなければならない。しかし、君はこの世界のことを知らなすぎる。だから、ウチに住めばいい。
この世界で生きるために必要なこと、生きる術を、私が教える」
「本当に……いいんですか?」
「昨日言っただろ? 遠慮はいらない」
「……よろしくお願いします!」
俺は頭を下げた。
「ああ、よろしく。
ま、それはそれとして、だ。
教えてくれ、君の世界のことを。どんな人がいて、どんな物があって、どんな国が? 魔法はないようだったな、ではどうやって生活している? 灯りは? まさか、ろうそく、なんてことはないだろ? オークもいないって言っていたな、では何がいるんだ? 君が昨日の言っていた、ばいと? だったか? それは何だ? それから……」
……俺をここに置いておきたい理由って、単に、興味ってだけじゃ……
「や……ち、違うぞ、何をするにしても、色々知っておく必要があるだろ? お互いの文化とか、生活様式とか、そういうのが分からなければ、なんかこう……まずいだろ?」
俺の疑惑の視線に気付いた彼女は、取り繕うように話した。
いや、言い訳した。
まぁ、いいけど……
レイシィは、あちこちを転々とし、この国に流れ着いたそうだ。そして、宮廷魔導師として、王に仕えていたという。
宮廷魔導師というのがよく分からないが、王に仕えるってことは、公務員みたいなもんか?
三年前、宮廷魔導師を辞めて、この家にこもって魔導研究三昧の日々だそうだ。
そして魔法。
この世界のありとあらゆるものに魔法が関係している。
まずは、昨日レイシィがオークを倒した時のような、攻撃と自衛の手段。当然それは戦争にも活用されており、大抵どの国にも、魔法を駆使して戦う軍人たち、魔導兵団なるものが存在するそうだ。
そして魔法は日常生活にも深く関わっている。火を起こす、灯りを点ける、食物を冷して保存する、等々。
なのでこの世界には、ライトや冷蔵庫といった家電製品はない。と言うより、科学技術が発展していないようだ。魔法や魔法石でそれらのことをまかなえるため、科学に頼る必要がないのだ。
ちなみに、今こうしてレイシィと会話出来ているのも翻訳魔法と呼ばれる魔法のおかげだ。どういう原理かは知らないが、この魔法を使うと違う言語同士で話しても、意思疎通が出来るようになる。
本当にどんな原理だ? なんか気持ち悪いわ。
あと、なぜ〈魔導師〉なのか?
魔法を使うならば〈魔法使い〉でいいのでは?
こんな、言ってしまえばどうでもいい疑問にも、レイシィは丁寧に答えてくれた。
魔法は扱い方を間違えると、大変な事故に繋がってしまう、本来危険なものだ。正しく扱わなければいけない。
〈魔法を正しく使う〉ということは、〈魔法の効果を正しい方へ導く〉ということ。〈魔法を正しく導く人〉で、〈魔導師〉なんだそうだ。
へぇ~。
他にも、この世界のこと、この国のこと、俺のこと、俺の世界のこと、日本のこと、等々、時間を忘れ話し合った。
◇◇◇
「あぁ、もう日が暮れるか。楽しい時間というのは過ぎるのが早いな。」
そうですか、えらい疲れましたが。
「あ、すまない、昼食を食べるのも忘れていたな……」
そうですね、えらい腹減りました。
「よし、夕食は街に食べに行こう。ついでに君の着替えなども買って、あぁ、風呂にも入らないとな」
こうして俺の異世界生活が始まった。
異世界生活って……
こちとらスライムでもなけりゃ、死に戻りもしませんけど!?
いや、それは死ななきゃ分からんか……
「昨日泊まった客間を、君の部屋にすればいい。必要な物は街でそろえて、あ、家事は分担だぞ。それと……」
「いや、ちょっと待ってください!」
「あ、すまん……嫌……だったか?」
「いえ、そういう訳では……すごくありがたい話です、行く当てなんてありませんし……
けど、どうして昨日会ったばかりの人間に……」
「私は希望的観測で物事を話すのは好きではない。
君が元いた世界に帰れるかどうか、正直分からない。
ただ、事実あのオークは、二つの世界を行き来した。だから不可能ではない。
だが、絶対に帰れる、とはとても言えない。どこの誰があんなものを作り、使ったのか……調べるにしても、時間がかかるだろう。なにしろ、手がかりはあのランタンと、魔法石だけだ。
魔法石はかなり特殊な物だから、そこから探れば、とは思うが……どうだろう? 他の手がかりは燃やしてしまったしな」
あ……
「朝、買い出しに行く途中に、昨日のオークを調べてきた。だが、手がかりはなにもなかったよ。あまり悲観的なことばかり、話すつもりはないんだが……
もちろん、私の過去の研究が絡んでいるかも知れない以上、全力で当たるつもりだ。だが、それでもいつになるのか……君が生きている間には間に合わない可能性だってある」
突然、現実という冷たい刃を、突きつけられた。
俺はどちらかというと楽天家だ。今回のこともどこかで、何とかなる、と思っていた所がある。
でも、彼女の言う通りだ。帰れるかどうかなんて分からない、保証なんてなにもない……
「あの魔法石、使うことは出来ないんですか?」
「起動させることは出来るかも知れない。
だが、問題は空間の指定方法だ。これが分からなければ、使うことは出来ない。どこに飛ぶか分からないからな。
一発勝負で、そんな危険な賭けを打てるか?」
……
何も答えられなかった。
「帰れるかどうか分からない以上、君はこの世界で生きていかなければならない。しかし、君はこの世界のことを知らなすぎる。だから、ウチに住めばいい。
この世界で生きるために必要なこと、生きる術を、私が教える」
「本当に……いいんですか?」
「昨日言っただろ? 遠慮はいらない」
「……よろしくお願いします!」
俺は頭を下げた。
「ああ、よろしく。
ま、それはそれとして、だ。
教えてくれ、君の世界のことを。どんな人がいて、どんな物があって、どんな国が? 魔法はないようだったな、ではどうやって生活している? 灯りは? まさか、ろうそく、なんてことはないだろ? オークもいないって言っていたな、では何がいるんだ? 君が昨日の言っていた、ばいと? だったか? それは何だ? それから……」
……俺をここに置いておきたい理由って、単に、興味ってだけじゃ……
「や……ち、違うぞ、何をするにしても、色々知っておく必要があるだろ? お互いの文化とか、生活様式とか、そういうのが分からなければ、なんかこう……まずいだろ?」
俺の疑惑の視線に気付いた彼女は、取り繕うように話した。
いや、言い訳した。
まぁ、いいけど……
レイシィは、あちこちを転々とし、この国に流れ着いたそうだ。そして、宮廷魔導師として、王に仕えていたという。
宮廷魔導師というのがよく分からないが、王に仕えるってことは、公務員みたいなもんか?
三年前、宮廷魔導師を辞めて、この家にこもって魔導研究三昧の日々だそうだ。
そして魔法。
この世界のありとあらゆるものに魔法が関係している。
まずは、昨日レイシィがオークを倒した時のような、攻撃と自衛の手段。当然それは戦争にも活用されており、大抵どの国にも、魔法を駆使して戦う軍人たち、魔導兵団なるものが存在するそうだ。
そして魔法は日常生活にも深く関わっている。火を起こす、灯りを点ける、食物を冷して保存する、等々。
なのでこの世界には、ライトや冷蔵庫といった家電製品はない。と言うより、科学技術が発展していないようだ。魔法や魔法石でそれらのことをまかなえるため、科学に頼る必要がないのだ。
ちなみに、今こうしてレイシィと会話出来ているのも翻訳魔法と呼ばれる魔法のおかげだ。どういう原理かは知らないが、この魔法を使うと違う言語同士で話しても、意思疎通が出来るようになる。
本当にどんな原理だ? なんか気持ち悪いわ。
あと、なぜ〈魔導師〉なのか?
魔法を使うならば〈魔法使い〉でいいのでは?
こんな、言ってしまえばどうでもいい疑問にも、レイシィは丁寧に答えてくれた。
魔法は扱い方を間違えると、大変な事故に繋がってしまう、本来危険なものだ。正しく扱わなければいけない。
〈魔法を正しく使う〉ということは、〈魔法の効果を正しい方へ導く〉ということ。〈魔法を正しく導く人〉で、〈魔導師〉なんだそうだ。
へぇ~。
他にも、この世界のこと、この国のこと、俺のこと、俺の世界のこと、日本のこと、等々、時間を忘れ話し合った。
◇◇◇
「あぁ、もう日が暮れるか。楽しい時間というのは過ぎるのが早いな。」
そうですか、えらい疲れましたが。
「あ、すまない、昼食を食べるのも忘れていたな……」
そうですね、えらい腹減りました。
「よし、夕食は街に食べに行こう。ついでに君の着替えなども買って、あぁ、風呂にも入らないとな」
こうして俺の異世界生活が始まった。
異世界生活って……
こちとらスライムでもなけりゃ、死に戻りもしませんけど!?
いや、それは死ななきゃ分からんか……
応援ありがとうございます!
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