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第3話
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「魔王様っ! あの作戦に使う人間の呪いが解けてしまったみたいなので参りました! やっぱり自我を残したままだと、少し解けやすいんですかねぇ」
この声は、メイド? 私といるときと口調が全然違う、くねくねした甘い声。キャラきついな。メイドさん、本性はそんなだったのですね。
それより、魔王って言った? 「まおう」って聞こえましたわよ! 起きていいかしら、異世界といえば魔王、魔王といえば異世界って感じよね! ワクワクが止まらない。目開けたら殺されるとかないわよね、作戦に使うとか言ってたんだから。もう起きちゃえ! 魔王を一目見るのよ!
「ま、魔王様、人間が起きそうです!」
「記憶なんて消せば良い。気にするな」
「ちょっと待ったー! 記憶消さないでください」
魔王とメイドはポカンと口を開けている。魔王は理想どおりのビジュで、漫画どおりイケメンだった。ああ、絶対忘れたくないわ、魔王に会えた、なんてこと。生涯ないと思ってたけれど、これはチャンスね、魔王側について、異世界でやりたいこと100を叶えるのよ!
「魔王様、ご機嫌よう。私は、リージュ・サーネット。突然ですが、提案があるのです。私は貴方に協力します。そのかわり、呪いはかけないでいただきたいのです。呪いが解けて一々ここに連れて来られるより、連携をとって進めた方がやりやすいと思いますので」
(それと、せっかく魔王に会えたんだから、記憶なんか消されたくない)
「確かに、いい案だ。お前にとっての利益はないように思えるが、いいのか?」
「魔王様にお仕えできるだけで大変嬉しいですので」
「そうか。だが、まだ信用ならん。もし、裏切ったら、そのときはそれ相応の報いを受けることになるぞ、いいか?」
「はい、わかりました」
「では、作戦を説明しよう」
魔王の狙いは国家征服。私が皇太子と結婚し、皇太子妃となる。その後、国王やその周りの人間をうまく殺し、国を動かす権利を私が手に入れる。しかし、実権を握るのはもちろん魔王だ。
実権を握ったあと何をするのかはは教えてくれなかったが、それはまだ信用されていないのだから、しょうがない。
私が皇太子と結婚しなければならなかったのに決断をしようとしなかったから、メイドはあんな顔してたのか。転生したばかりでそんなのわかるわけないじゃない。まぁ、言い訳は出来ないので、とりあえず明日、皇太子に結婚承諾をしに行こう。
屋敷に帰る途中、メイドがとても嫌な目で私を睨んでいたのは、私のせいで魔王に会いにくくなるからなどではない、と信じよう。毎日一緒に暮らすメイドに恨まれるなんて怖いことはない。
「皇太子様、私、貴方と結婚いたします」
「やっと決断してくれたんだね、リージュ。これからはずっと一緒だよ。俺の美しい顔を毎日見られて俺もリージュの眩しい瞳を毎日見れるなんて、最高だな」
あ、そうでした。
彼、そういう人でした。だからアリナも結婚嫌がってたんでした。
だけど作戦終了までの我慢よ、私。耐えるのよ。
「そうですね、皇太子様」
「なぁ、リージュ。これからは俺のこと、ウィスと呼んでくれないか」
「ウィス……」
あー、普通に無理無理。結構耐えがたいわ。前世ではこんなイベント、縁がなかったのに。彼は上の中くらいの顔面ではあるけど、やっぱりこの性格、好きにはなれないのよね。
「俺たちの結婚のことは、月末のパーティーで皆様をお呼びして、お話することにしたから。アリナの婚約破棄と国外追放もその日に話すよ」
そうだ、私が結婚したら、アリナが国外に追放されてしまうんだった。どうすれば……。
「ウィス。パーティーの日を心より楽しみにしておりますわ」
私はにっこりと表面だけの微笑みを浮かべて、彼と別れた。
屋敷に戻りメイドに「魔法の練習をしてみたいから、魔法についての本と練習場所はないか」と訊くと、すんなりと数冊の本を渡してくれた。
「勝手に庭でやってください。出来るかは知りませんが」
やはり彼女は昨日のことを根に持っているみたいだった。
父からは、「子どものころは全く魔法なんて興味なかったのに、今更興味を持ち出したのか。難しいが、使えるようになるといいな。怪我に気をつけてな」と言われた。父はあまり前に出る方ではないが、基本優しかった。魔法で庭の木を折ってしまっても怒られなかったどころか、私の心配をしてくれたもの。
まずは、基本の魔法からやってみましょうか。本によるとこの世界には、火、水、風、地、氷、雷、光、闇の8属性がある。人間の5割は魔法を使えず、使える人もだいたい1属性だけ。でも、たまに2属性使える人もいるんだ。へぇ、私はこの前水属性の魔法使えたから、少なくとも1属性はあるわね。分厚い本読むのは時間かかりそうだし、とりあえず実践しましょう!
火属性の魔法が載っているページを開き、小さな炎をイメージしながら1番易しい魔法を詠唱する。
「ファイアーボール」
ぼぉっとソフトボールくらいの大きさの炎が手から飛び出した。
すごいわね、魔法って。原理はどうなってるのかしら。
「ウォーター」
「フールウイング」
「ロック」
「フリーズ」
「サンダーボール」
「ライト」
「シャドウ」
そんなこんなで色々魔法を試していたら、闇意外の全ての属性の魔法が使えてしまった。普通使えても1属性なのよね?
私、チートすぎじゃないですか!?
それに、これなら──。
この声は、メイド? 私といるときと口調が全然違う、くねくねした甘い声。キャラきついな。メイドさん、本性はそんなだったのですね。
それより、魔王って言った? 「まおう」って聞こえましたわよ! 起きていいかしら、異世界といえば魔王、魔王といえば異世界って感じよね! ワクワクが止まらない。目開けたら殺されるとかないわよね、作戦に使うとか言ってたんだから。もう起きちゃえ! 魔王を一目見るのよ!
「ま、魔王様、人間が起きそうです!」
「記憶なんて消せば良い。気にするな」
「ちょっと待ったー! 記憶消さないでください」
魔王とメイドはポカンと口を開けている。魔王は理想どおりのビジュで、漫画どおりイケメンだった。ああ、絶対忘れたくないわ、魔王に会えた、なんてこと。生涯ないと思ってたけれど、これはチャンスね、魔王側について、異世界でやりたいこと100を叶えるのよ!
「魔王様、ご機嫌よう。私は、リージュ・サーネット。突然ですが、提案があるのです。私は貴方に協力します。そのかわり、呪いはかけないでいただきたいのです。呪いが解けて一々ここに連れて来られるより、連携をとって進めた方がやりやすいと思いますので」
(それと、せっかく魔王に会えたんだから、記憶なんか消されたくない)
「確かに、いい案だ。お前にとっての利益はないように思えるが、いいのか?」
「魔王様にお仕えできるだけで大変嬉しいですので」
「そうか。だが、まだ信用ならん。もし、裏切ったら、そのときはそれ相応の報いを受けることになるぞ、いいか?」
「はい、わかりました」
「では、作戦を説明しよう」
魔王の狙いは国家征服。私が皇太子と結婚し、皇太子妃となる。その後、国王やその周りの人間をうまく殺し、国を動かす権利を私が手に入れる。しかし、実権を握るのはもちろん魔王だ。
実権を握ったあと何をするのかはは教えてくれなかったが、それはまだ信用されていないのだから、しょうがない。
私が皇太子と結婚しなければならなかったのに決断をしようとしなかったから、メイドはあんな顔してたのか。転生したばかりでそんなのわかるわけないじゃない。まぁ、言い訳は出来ないので、とりあえず明日、皇太子に結婚承諾をしに行こう。
屋敷に帰る途中、メイドがとても嫌な目で私を睨んでいたのは、私のせいで魔王に会いにくくなるからなどではない、と信じよう。毎日一緒に暮らすメイドに恨まれるなんて怖いことはない。
「皇太子様、私、貴方と結婚いたします」
「やっと決断してくれたんだね、リージュ。これからはずっと一緒だよ。俺の美しい顔を毎日見られて俺もリージュの眩しい瞳を毎日見れるなんて、最高だな」
あ、そうでした。
彼、そういう人でした。だからアリナも結婚嫌がってたんでした。
だけど作戦終了までの我慢よ、私。耐えるのよ。
「そうですね、皇太子様」
「なぁ、リージュ。これからは俺のこと、ウィスと呼んでくれないか」
「ウィス……」
あー、普通に無理無理。結構耐えがたいわ。前世ではこんなイベント、縁がなかったのに。彼は上の中くらいの顔面ではあるけど、やっぱりこの性格、好きにはなれないのよね。
「俺たちの結婚のことは、月末のパーティーで皆様をお呼びして、お話することにしたから。アリナの婚約破棄と国外追放もその日に話すよ」
そうだ、私が結婚したら、アリナが国外に追放されてしまうんだった。どうすれば……。
「ウィス。パーティーの日を心より楽しみにしておりますわ」
私はにっこりと表面だけの微笑みを浮かべて、彼と別れた。
屋敷に戻りメイドに「魔法の練習をしてみたいから、魔法についての本と練習場所はないか」と訊くと、すんなりと数冊の本を渡してくれた。
「勝手に庭でやってください。出来るかは知りませんが」
やはり彼女は昨日のことを根に持っているみたいだった。
父からは、「子どものころは全く魔法なんて興味なかったのに、今更興味を持ち出したのか。難しいが、使えるようになるといいな。怪我に気をつけてな」と言われた。父はあまり前に出る方ではないが、基本優しかった。魔法で庭の木を折ってしまっても怒られなかったどころか、私の心配をしてくれたもの。
まずは、基本の魔法からやってみましょうか。本によるとこの世界には、火、水、風、地、氷、雷、光、闇の8属性がある。人間の5割は魔法を使えず、使える人もだいたい1属性だけ。でも、たまに2属性使える人もいるんだ。へぇ、私はこの前水属性の魔法使えたから、少なくとも1属性はあるわね。分厚い本読むのは時間かかりそうだし、とりあえず実践しましょう!
火属性の魔法が載っているページを開き、小さな炎をイメージしながら1番易しい魔法を詠唱する。
「ファイアーボール」
ぼぉっとソフトボールくらいの大きさの炎が手から飛び出した。
すごいわね、魔法って。原理はどうなってるのかしら。
「ウォーター」
「フールウイング」
「ロック」
「フリーズ」
「サンダーボール」
「ライト」
「シャドウ」
そんなこんなで色々魔法を試していたら、闇意外の全ての属性の魔法が使えてしまった。普通使えても1属性なのよね?
私、チートすぎじゃないですか!?
それに、これなら──。
応援ありがとうございます!
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