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21話 兄の憂鬱—ティアのデビュタント—
しおりを挟むティア、うまくデビュタントで踊れているかな…
まぁ、僕といっぱい特訓したから大丈夫だろうけど
本当にフワリフワリと可憐に踊るティアは妖精が舞うようにキレイだった…
一生懸命がんばっていて、本当にかわいかったなぁ…
うーん、あの特訓の成果をティアは披露したいかもだけど、お父様とのファーストダンスだけで帰ってくればいいのに…
他の子息のやつらなんかにティアを触らせたくないなぁ…
それに、あの髪と目の色を気にしていたようだけど大丈夫だったかな
本当にこの世のものとは思えないほどかわいすぎるのに、お母様のせいであんなに自信を失くしてしまってかわいそうに…
それにしても、1番心配なのはやっぱり害虫どもだ
変な虫に目をつけられてないだろうな
いつもの優しい青い瞳が、ギラリと光る。
とにかくティアはかわいいし、本当に妖精のようだし、天使だし…
たまにティアが茶会に出ると、決まって翌日婚約の申し込みがくるんだから困ったものだ。
まぁ、なんだかんだ裏情報を探ってお母様に吹聴しては、断らせるのに成功していたが。
しかしお母様は早く婚約させたがっているから困ったものだ。
何度か身辺がキレイで家格も良い相手の時があって、観念するしかないかと焦ったこともあったが、
どの相手とも顔合わせのあと、決まってティアは苦虫を噛み潰したような顔で戻ってきた。
よくわからないことを言っていたな
自分のことを好きだと言われると、相手が本気であればあるほど気持ち悪くなるんだとか?
うーん、女心はむずかしい…
好きと言われると気持ち悪いなんてことあるんだ?
普通好意を寄せられれば、大なり小なり嬉しいものかと思うのだけど?
まぁ、なんにせよそのおかげで、正式に婚約するにはあんな父親でも一応父親の承認が必要だから、ティアのその状態をメモして書斎に置いておくと、いつのまにか断りの処理をされていた。
父のことは全くよくわからないし、わかろうとも思わないが、ティアの思いを汲んでくれるのだけは助かる。
母は怒っているが…
ティア、早く帰ってこないかな…
そんなことを色々思いながら、気持ちの良い風が入る窓のそばに座り、馬車が停まる門の辺りをやるせない気持ちで見つめていると…
我が家の馬車が、夜なので静かに走らせながら、門の前に近づき、到着するのが見えた。
ティアだ!
早く帰ってきて欲しいと思いつつも、こんなに早く帰ってくるはずもないとわかっていたロズウェルは驚いた。
え⁈早くないか⁈嬉しいけど、どうしたんだろう
窓から目をこらして見ると、ティアは足早に家の中へ入った
どうも顔が赤いような?
暗くてはっきりとはわからないが、体調でも崩したのだろうか…
家ではなかなか直接様子を見に行けないので、慌てて執事に様子を見に行かせる。
体調はなんでもないが、人の多さに圧倒されて疲れてしまい、早く帰ってきただけだということだった。
そうか
大変だったね、ティア…
僕もついていてあげたかったな
今日はゆっくりお休み
と心で思うと、なんだかんだで結局早く帰ってきたティアにロズウェルは安堵した…のも束の間だった。
どういうことだ⁉︎
翌朝、早々にティア宛に手紙が届き、執事の情報によると、どうやら差し出し人はあの4大公爵家の一つ、ユークリウス公爵家からで、内容はなんと、その公子からの婚約の申し込みだった!
嘘だ!ありえない!
そりゃティアは美しい
しかし、公爵家の縁組は間違いなく政略が関係しているものだ。
うちの家格も能力も、公爵家にとってなんのメリットもないはずだ。
そういう高貴な方は、結婚は自分の強みとなる相手を選び、気に入ったが政略的にメリットのない相手は愛人として囲いがちだ。まさにあの父のように。
側室が許されるのは王だけで、それ以下は一夫多妻は許されていなかった。
どうしてティアなんだ⁈
おかしい…
昨日のデビュタントには王族と公爵家は参加されていただろうから、そこでティアを見たんだとしても…だ。
一度会ったくらいで婚約を決めるような簡単な家格ではないはずで。
これは…何かある…ティアが心配だ
でも相手が公爵家ともなれば、どうやったってこちらから話を潰すことはできない。
どうしたら…
ロズウェルは頭を抱えた。
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