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22話 公爵家の庭園で

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「ねぇ、ティア、お腹いっぱいになった?
おいしかった⁇」

リンドは、思いっきりスイーツたちを食べた私を覗き込むようにして、ニコニコしている。

「ええ、どれも本当においかったです。」

たくさん食べてお腹がふくれたティアは、

手でお腹をおさえながら、幸せいっぱいの表情で、いつの間にか憤る気持ちも鎮まっていた。

女性なんてこんなものよね

とたくさん食べ過ぎた罪悪感を、世の女性全ての責任にすり替えて納得する。

何はともあれ、甘いものを食べれば落ち着いてしまうのだから、本当に不思議だ。

「そう、よかった。」
とニッコリ微笑んだリンドは

「じゃあさ、庭でも散歩する?

ちょうど今珍しい花が見頃なんだよ。好きだったろ?花」

「??えっ、ええ…まぁ、お花はとっても好きですけれど、どうしてリンド様がそれを?」

「んあっ、ああ、間違えた!そんな気がしたって意味だよっ、うん、気にしないで!あっ、じゃあ行こうか。」



はてなが飛ぶ私をよそに、私の手をとって立たせてくれる。

もう手を握られるのにもいい加減慣れてきて、

手はそのままリンド様に繋がれたまま振り払うことなく散歩する。

確かに、本当にキレイなお庭だわ

ティアはうっとりと眺めながら、

美しく、でもどこかあたたかみのある庭園の柔らかな香りに心が満たされた。

色とりどりの花が見事に咲く庭園は、

広大な広さにも関わらず、隅々まで丁寧に手入れが施され、

その中を歩いていると、とても良い香りに包まれて

まるで天界にでもきたのかと勘違いするほど夢見心地にさせてくれた。

そんなティアの表情を見たリンドは

「幸せそうな顔してる。はぁ…よかった。」

と心底ホッとした表情をみせる。

「どうして?この前会っただけで、どうしてこんなにもよくしてくださるんですか?」

ふと、本当にそう思い、つい口をついて出てしまった。

「それは、君を大好きで幸せにしたいって思ってるから。これくらい当然だろ?」

あまりに美しく色気たっぷりの表情でそんなこと言われたら、さすがにくらっときて倒れそう。

でも、おかしい。

いつもならこんな甘い言葉聞かされたら、

気持ち悪さが込み上げるのに、そうならない。

いいことかもしれないけど、

センサーが反応しないなら、その言葉は嘘かもしれなくて、

自分の感覚か彼の言葉か、どちらを信じればいいのか戸惑っていると、

「きゃっ」

急にリンドが私を横抱きにしてヒョイっと抱える。

「どう?女性はこういうの好きって聞いたんだけど、嬉しい⁇」

「や、やめてください!おっ、おろして、おろしてくださいっ」

もがいたが、彼の腕の中は頑丈すぎてびくともしない。

細身なのに、筋肉がしっかりついていて、私の力ではどうにもならない。

それでも彼の胸を押しのけるようにしてあらがっていると

「かわいすぎ」
そう言うと同時にまた唇を奪われる!

「んッ!ぅんっ…うっ」

ドンッドンッ

必死で胸を叩くがどうにもならない。

そのうち息が苦しくなって、必死で首を振って彼の唇から逃げた。

「プハッ、はぁ…はぁ…」

「ふふ、鼻で息をすればいいのに。慣れてないんだな。…かわいい」

抱き上げたまま頬を寄せてくる。

あまりに美しい顔が寄せられてもう気を失いそうだ。

と、そこへ執事が現れて…

「リンドール様、失礼いたします。お客様がお見えです。」

ティアは心底助かったとホッとする。

「なんだよ!いいとこで!客?呼んでないけど⁇」

リンドは邪魔されたことの苛立ちを隠しもせず、執事を睨みつけるが

この執事、どうやらリンドの扱いに慣れているらしく、全く動じずに続けた。

「そちらのリズティア様の兄君様、ロズウェル様がお見えです」

「ナニ⁈兄君⁈」
「えっ⁈お兄様⁈」

2人は同時に言うと、顔を見合わせた。
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