パパはなんにも分かってない

第2話 香凛はなんにも分かってない

分かってない【パパ編】 その18

「んひゃっ！」
　腕を引き、仰向けにその身体を寝かす。こちらの性急さを教えるように、スプリングの軋む音が大きく鳴る。それと同時に胸を包んでいた下着を取り払ってやった。
　食めばふにゅりとした柔らかさを伝えてくる乳房。そのままじゅうっと強めに吸い付けば、香凛の身体はその刺激に身悶えた。
「っは」
　口を離せば細く糸を引いたその先には、赤い斑点が散っている。
「ん……！」
　指先でその跡をなぞりながら、問いかける。
「いっぱい、欲しいんだったか」
「……うん」
　あんまり強くされると痛いだろうし、あからさまな情交の痕跡だというのに香凛は欲しいと言う。
「そんなにイイもんか、これ」
　こっちはまるで所有印を付けているようで、背徳的な快感を味わえるが。
「だってコレ、パパが私にしてくれたことの証みたいで、好き……」
　本当に。
「へ、変かもしれないけど、その、後から見ても、あぁ私パパのものなんだなぁみたいな、そんな風に思えるから、だからその」
　本当にこの口は可愛いことしか言わない。
「オレだって香凛のものだよ」
　気が乗って、横たえたその身体を引っ張り起こす。
「なぁ、香凛も一つ、つけてくれ」
　自分にも欲しいと思ってしまった。
「え、できるか分かんない……」
　戸惑うことは想定内だ。
「今のをお手本にしてみろ。それが終わったら、嫌ってほどそこら中につけてやる」
「……どこでもいいの？」
「やりやすいところに」
　言ったら、おずおずとこちらの左胸の上の方に、香凛は唇を触れさせた。


　初めは本当に優しい口付けをしているだけのような感じだった。
　ちらりとこちらを窺いながらも、やがてきゅっと吸い上げてくる。
　それは拙い動きだった。だが、一生懸命に吸い上げようとしているのがよく分かる。
　何とも言えない中途半端な刺激ではあったが、香凛の方からこちらに触れているという状況に、身体はいつも以上に反応した。


　やがて唇が離れると、香凛は成果を確認するように胸元を凝視する。
「ちょっと薄いけど、一応……？」
「十分だ」


　後で存分に確認させてもらおう。


　それより今は、こちらのお姫様のご要望を叶えなくては。
「んあ！」
　首筋に食いついて、また身体をベッドに沈める。鎖骨、腋、胸、腹、脇腹、ひっくり返して背中にも。
「んっ、あう、ふっ」
　あらゆる場所に吸い付いて、夥しい数の印を刻んでいく。白い肌は、オレの欲望と独占欲の跡でどんどん染め上げられていった。
　粗方上半身を貪り尽くしたら、次は閉じられていた足を掴んでグイと大きく開かせる。すべやかな内腿は、まだ誰も足を踏み入れていない雪原のようだ。
「んひゃぁ！」
　反射的に閉じようとするその脚の間に頭を潜り込ませ、腿にも吸い付く。抑えた腕の中でびくびくと震える香凛に気を良くして、左右どちらの腿も斑に染め上げた。
　そのうちに、先で芳香を放っている場所へ引き寄せられる。白の下着はすっかり濡れそぼり透けていた。
　そこへ鼻先を押し当てると、香凛がバタバタと足を暴れさせる。
「やだぁ、に、匂い嗅いでる……！？」
「うん、堪らない」
　ぐりぐり押し付けると、ぐちゅんとぬかるんでいる様子が伝わる。布一枚隔てたその向こうでは、もう十分に準備が整っているようだった。
「はうっ！？　やぁ……！」
　布越しに秘所を食んだら、可愛い声が飛び出して来る。布と擦れてぐちょぐちょと音が鳴り、染み出した蜜の味が舌に伝わる。
「やめ、待って、そんなの……！」
　嫌がるので、一旦解放して身体を起こす。赤く蒸気した顔を眺めたら、そろそろ直接触れたくなって、下着に手を掛ける。――――と、その手が思わず止まった。


「香凛……」


　いつものようにずり下げようとしたのだが、様子が違った。
　下着の両脇には、細い紐。蝶々結びにされたそれは、飾りではない。解かれることを待っている。


「こんなもの、いつの間に」
　赤い顔を更に真っ赤に染めながら、蚊の鳴くような声で香凛は言った。
「お、男の人は、こういうのが、好きかなって、その…………違った？」
　違わない。
「誘うつもりで？」
　端を摘み上げる。
「よ、喜んでもらえたらなって……」


　ゴクリ、と大きく喉が鳴った。


　本当は自分で脱いでみせてもらえたらなんて考えが過ったが、そこまで要求するのは酷だろう。それに早くこの頼りない下着を紐解いて、その奥に触れたい。


　くいっと引っ張ると、心配になるくらいあっさりと紐は解けて行った。ずるりと尻から引き抜けば、あっという間に一糸纏わぬ姿になってしまう。
　焦らして脱がそうかという考えは、紐に触れた瞬間に飛んでいた。
「きゃっ！？」
　再び秘所に頭を沈めた。次は直接味わう。
「や、やだ、ね、パパぁ」
　膨れ上がった蕾。舌先で包皮を捲り、快感を求めるソコを存分に可愛がってやる。
「んきゃっ、ぁ、あぁん」
　刺激に戦慄く身体。
「あ、舐め、ないで、それっ」
　必死に伸ばしている香凛の手が頭に触れるが、髪を梳いているような動きにしかなっていない。
「そんなとこ、舐めちゃやだって、いつも言ってる……！」
　これをされると前後不覚になるから、香凛はいやいやと言葉では言う。だが、とてつもなく気持ちイイらしいのは、反応の良さから分かっていた。
　嫌なのは、こんなことをされて感じまくっている自分が恥ずかしいからなのだといつぞや言っていたから、本気で嫌がっているのではないと分かっている。


　入口を隠す花弁を丸ごと食んで、しゃぶる。
　舌先でぎゅっと絞ればその奥からじゅわりじゅわりと甘露が恵まれる。
「んんーっ！」
　激しく腰が揺れたが、それは抵抗というよりは快感に身悶え誘っているように感じられた。
　これでもかという程しゃぶりつくして蕩かした後、その花弁を割って蜜口を舌先で突けば、そこは十分過ぎるほどに潤っていた。今更刺激を与えるまでもなく、触れた舌先に蜜がつぅっと伝って来る。
　つぷり、入口に少しだけ舌を捩じ込めば、
「んあっ、ひゃんっ！」
　ソコはこちらを歓迎するようにきゅうっと締まった。
「あ、あ、」
　ぐいぐいとそのまま捩じ込む。
「んん――――っ」
　甘く艶のある嬌声が部屋に響く。可愛い。


　香凛が一つ波を越えたところで、舌を引き抜いた。
　溜まっていた蜜を啜り上げてから、忍ばせていた避妊具を手早く着けて入口に宛がう。


「挿入るぞ」
「う、んっ――――！」
　腰を押し進めれば赤黒く膨れ上がった屹立は、卑猥な音を立てながら香凛のナカに沈んでいく。媚肉を押し広げて、許されるところまで深く深く切り込む。
　香凛の内側はいつでも熱く柔らかい。一生懸命オレのものを頬張ってくれる。
　一つ抜き差しする度に正気が散っていくような、危ない快感が後頭部を走った。