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グローディアス王国編

【閑話】女官長は可愛い姫様の夢を見る。

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竜の巣から戻った千尋を待っていたのは白王のげっそりした顔でした…。

「千尋~~助けてくれ!みんな…みんなが俺を責めるんだ!!」
「??白王なんで責められてるの?何か悪い事しちゃったの?」
「俺は…俺は何もやってない!!千尋に会えないからって俺のせいにするんだ!王も侯爵もセバスチャンも!!」
「ははは…そっか~じゃあ~久し振りにお弁当作ったから持って行って!みんなで食べてよ!今夜はちゃんと晩御飯も作るから!」
「ダメだ!お弁当くらいじゃあの暗い空気が消えてくれない!!」
「えええぇぇ~じゃあどうするの?」
「千尋!お前も王宮に来い!」
「いやいやいやいや…庶民は王宮とか行かないから!って言うか行けないから!!」
「大丈夫だ!転移で行くからバレないバレない!行くぞ!!」
「ええええぇぇぇ~ちょっとダメだよ!僕は一般人なんだから!!」
「行く!」

そう言って僕の襟首掴まえて転移しちゃったんだよ!!
そして気が付いた時は王宮の王様の執務室だったよ…ははは…

「チーちゃん!!」
「あ、おはようございます!」

そう言った瞬間王様に抱きしめられてました…。

「元気になったんだ…心配した…良かった…。」
「うん、心配かけてごめんね!」
「ああ~良かった…本当に良かった!パパ…チーちゃんの顔が見れないと寂しく寂しくて仕事も出来なくなっちゃうよ…」

ナチュラルにパパ呼び希望なんだね…王様…ここは素直に乗っておこう!
なんて思ったのが間違いでした…。

「パパ…ごめんね!今夜はパパの好きな味噌汁の具にするからね!」
「!チーちゃん!!」

まさかそこに第3者が居たなんて思っていなかったんだ…。
しかも、王宮でも偉い人がいるなんて予想もしてなかった!
そして、白雪や地球の神様と同じだったんだ…。

「陛下…噂は本当でしたのですね…。」
「あ…女官長…居たんだ…。」
「なんと…なんと言う事でしょうか…我が王室に…こんな事が起こるとは…。」
「ああ…女官長?落ち着いて?」
「王室に使え40年…こんな…こんな……。」
「女官長???」
「可愛い姫様がいらっしゃったとは!!!」
「「!!!」」
「王室も男子が生まれる事の方が多く姫君がいらっしゃる事を夢見て来ました!やっとやっと叶うのですね!!こんな可愛い姫様が我が王室に…何と嬉しい事でしょう!!」
「……女官長、チーちゃんは姫では…。」
「陛下!分かっております!!今はあの女狐が後宮におりますから内緒にされて居たのですね…ええ…分かっておりますとも!!可愛い姫様があの恐ろしい女狐に見つかってしまったら何をされるか分かりませんもの!!ああ~ですが姫が我が王室に姫様がいらっしゃる!なんと嬉しい事でしょう!!女官として十分なお迎えをいたさねば!!」
「「………」」
「久し振りに王女の間を開けさせなければ!!綺麗に掃除し調度も姫様に合わせて用意させなければ!!申し訳ありません…姫様…女官長ソフィアが必ず姫君に合った部屋をご用意致します!少しだけご辛抱下さいませ!!では陛下、私はこれで失礼致します…早速色々ご用意しなければならないので!」
「「…………」」

どうしたらいいの~~~~~!!!
僕が一人パニックしてたら王様は…。

「ま、いいか…!」
「ええええぇぇぇ~!!」
「王宮にチーちゃんの部屋が出来るし…姫…姫か~ふふふふ…」
「王様!ダメだよ!!僕一般人なんだから!正気に戻って~!!」

そんな時、白王に呼ばれて王様の執務室に来た筆頭侯爵とセバスチャンさんは…僕を抱きしめてニヤニヤしてる王様とダメだよ~絶対ダメ~って言っている僕を見て何があったんだと目を白黒させていた。


私は颯爽と王宮にある女官侍女達が集まる部屋に戻りました。
我々女官が活躍出来るのは高貴な女性がいる場所…。
確かに現在後宮に高貴な女性である王妃が居ますが…あんな女狐…!!
何かと帝国第1王女である事を言うあの女狐は帝国が余りにも臭いせいか香水をひと瓶使うくらいの勢いで全身香水をかける!
この王宮であの女狐の居場所は直ぐに分かる…強烈な香りがするのですから!
王妃の間で一日過ごすと鼻がおかしくなる。
まあ私達はプロですもの…顔には一切出しませんが、あの香りに慣れるまで相当の努力を致しました!
そして衣装もまた帝国風で…やたらと宝石やらビーズなどでゴテゴテしたドレスで…本当にセンスもなにもあったもんじゃない…。
今は亡き前王妃様はナチュラルな可愛いふんわりしたドレスがお好みで…私達もどれ程お仕えしていて癒される方だった…本当に亡くなられた時は女官全員で泣いて泣いて…。
そして、今お会いした姫様は…王家の血筋なのが分かる顔立ち(日本人の風合いが入っている)と色合い(偶然にも千尋君の今の色は王様と同じ深いブラウンなんだね。)何と言っても可愛いお顔と声!!
ああ~キュンキュンする!!
姫様に合わせた衣装を!そして可愛い姫様に相応しいお部屋を用意せねば!!
勿論!あの女狐にバレ無いように…ようやく戻って来られた我が王家の姫様をあの毒婦から守らねば!!

こうして女官長による姫君をお迎えするプロジェクトチームが女官と侍女で作られた。
そして…。

「おお~女官長…千尋に部屋を作っているとか…誠か?」
「これはシラユキ様、誠で御座います!あの女狐に内緒で御座いますから少しずつしか出来ないのが歯痒いのですが…。」
「その部屋、妾にも見せて欲しいのじゃ…妾達も逆らえぬ人(地球の神)が気にしていてな…この魔道具カメラというので撮影せよと命じられたのじゃ!」
「まあ!その方は姫様の…」
「親代わりになる方じゃ!千尋を大層可愛がっていてな…実の親はもう居ないのじゃ…妾達はその方からも千尋を守って欲しいと言われておるのじゃ!」
「そうで御座いましたか…姫様…何と言っていいのか…勿論!我々の総力を上げた部屋で御座いますから是非見て頂きご意見頂きたいと思います!」
「おお!では早速頼めるか?」
「はい!ではご案内致します!」

千尋君がその場に居たら速攻で色々訂正した事だろう…しかし、白雪も王様も話しを聞いた侯爵やセバスチャンも誰も止めたりしない…。
着々と千尋姫の部屋は出来上がっていくのだ!

あれから白雪様からの伝言で姫様の親代わりと言われる方からの厳しい駄目出しに女官、侍女と共に何度も何度もやり直しを繰り返しました。
ええ、萌えました…いや燃えましたわ!!
その方の言われる事の的確な指示に何度目から鱗が落ちた事でしょう!
最終審査を受け、姫様の親代わりの方からお褒めの言葉を頂いた時には、このプロジェクトに関わった全ての者で泣いて喜びました!!
しかも、親代わりの方から頑張って貰った褒美として甘い甘味まで頂き…余りの美味しさに全員で泣きながら食べました!白いフワフワで赤い果物が載ったシュートケーキと言うのだそうです。

「これは妾も食べた事の無い味じゃ!!千尋も作れるか?聞いてみなければ!!」
「姫様も料理を?」
「おお!千尋が作る料理は美味しいぞ!!きっとこの世界で1番である!!今度皆にもお弁当を作って貰って来よう!この様に頑張って貰ったのじゃ…千尋も喜ぶぞ!」

いや…それはどうだろう?

「さて、前から親代わりの方から預かっていた千尋のドレスを持って来た!これを見てくれるか女官長。」
「まあ、ドレスで御座いますか!!そうで御座いましたドレスの用意をせねばと考えていたのです!陛下と侯爵様から姫様の予算は潤沢に頂きましたから、どの様なドレスでも作れますとも!!」
「では、このドレスを1番に着せてやって欲しいのじゃ!そして他のドレスもこのサイズで作れば良い。」
「では…拝見致します!……これは!!何と見事なドレスでしょう!!」

桜色のふんわりしたドレスは繊細な刺繍とレースで彩られ形はシンプルだが可愛いドレスであった。

「なんと素晴らしい!!姫様の親代わりの方は素晴らしい感性をお持ちです!!」
「他にこの様にドレスの原案も下されたのじゃ…どれも千尋に似合うであろ?」
「これは!我が国の社交界に激震が走ります!!素晴らしい!!しかし、これを姫様だけが着られると女狐が何を言って来るか…シラユキ様、筆頭侯爵夫人にもこのドレスお見せしても良いでしょうか?侯爵夫人も同じ様なドレスを着て頂ければ誰も文句は言えません!前々から姫様とお会いしたいと言っておられましたから…きっと協力して頂けます!!」
「そうか…妾は社交には疎いゆえ、女官長にお任せしよう!!」
「畏まりました!!姫様を必ず国一番の姫君としてお披露目致します!!」
「うむ!楽しみにしているぞ!!」

こうして千尋姫お披露目プロジェクトは更に大きくなって広がり、王宮、筆頭侯爵家まで飛び火して燃え上がる事となった。

「いや、誰か止めてよ!!僕は男の子なんだって言って止めてよ!!」

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