13 / 17
勇者と聖女は結婚をするもの
しおりを挟む
頭の痛みが消えると元の世界に戻っていた。エリオットの名前を叫んでも何処にもおらず、もう二度と会えない絶望で目が霞んだ。
全部、夢だった?あんなに愛し合ったのに。
ステファニーも使用人の人たちも獣人の人たちもいない。
周囲を見渡せば、現代日本の風景で帰りたかった場所なのに居心地が悪くて早くエリオットのいる屋敷に帰りたい。
聞き覚えのある声が聞こえて横を向くとそこにはケイタと私と、妹がいた。
「ちょっとケイタ、白と黒どっちが好きなの?」
双子の妹がケイタの前でスカートを捲って下着が見えるか見えないかのところで下ろした。怒って手で追い払うケイタに馬鹿にしたような口調で女の子が話しかける。
「ばーか、下着くらいでコーフンしてる。行こう月美」
と私は馬鹿にする。これはエリオットに隠したい恥ずかしい記憶の一つだ。
高校生活が始まって双子の妹の月美と一緒にケイタを馬鹿にしていた。月美と私は一卵性双生児で見た目はそっくりだった。目つきが悪くてやんちゃな方が月美、おっとりしている方が雪美と友達に言われていた。2人で好きになってしまった男の子を取り合いしていたのだ。入学式の時に一目ぼれしてから、行動的な私たちは彼に痴漢行為をしていた。
「違う方向の電車だろ」
「早起きして追いかけてきたに決まってるでしょう♡」
「あそこのラブホでしようよ♡今なら双子サービスで処女割含めた値段だって」
「親が放任主義でお金ならあるからさ、ねえ、チューしよう」
『うわあああああ、そんな奴に迫るなあああああ、全然格好良くないから。クズの陰キャだし、異世界に来たらデカいおちんぽといい顔の人もっといるから。前髪あげたらそんでもないからね。エリオットや騎士団の人と生ハメした方がいいよ!』
こっちの声が聞こえないのか、腕にしがみついておっぱいを押し付けている。あまりにも馬鹿過ぎて後ろから叩いても誰も気がつかない。
なんでこんな奴好きだったの。ありえない。実家が太いから?恋愛フィルターかかり過ぎでしょう。もうヤダ、やめて欲しい。
毎日が発情期でムラムラしていた。彼は私たちが迫っているのに全く靡かず、逆にそのせいで私たちの闘争心に火をつけてしまった。電車で痴漢されても全く感じず、イライラさせられる日々。
そんなある日、近道をするために通った道でケイタと3人で異世界に召喚された。呼び出したのは水銀色の髪の毛の男だった。
「勇者召喚に3人も召喚されるとは、この国の危機が迫っているのだろうか。しかし、男に女が2人…………しかし、まあ胸が大きいな」
「格好いいのにおっぱいしか見てないの有り得ない」
「きもっ、ねーよ!!お姉ちゃん、逃げよ!ケイタ、あんたも男なら守りなさいよ」
訳の分からない説明が始まった瞬間、月美が私たちを押して元の世界に戻る事が出来た。壁の穴が塞がる前に月美もこちらに来ようとしたのに、水銀色の髪の毛の変態が抱き着いて離さない。
「月美!」
「おねえちゃん、たしゅけて。や、やだこっちくんな、変態! わあああ」
壁の向こうから月美が逃げている声が聞こえた。
その日から私たちは月美の記憶を失った。
以前と違ってケイタに対する執着をなくしたが、完全に失ってはいなかった。元々は月美がケイタに執着していて、そのおまけ程度に私が付き纏っていただけだったから。
姉が支配する家は月美がいないと楽しくない。記憶を失っている私は何が原因か分からない。お金が貰る量が増えて大人しくしていた。
都合の悪い記憶が消えたおかげで、ケイタに片思いする少女と周りに評価になっていた。
こんな過去バレたら恥ずかしくてエリオットの顔が見られないよ。この世界に月美が何処かにいる。男に囚われているんだ。
過去の出来事を思い出してから、彼との関係が少し進んだ。
語彙力失うほど、エリオットは格好いい。どうしてセックスを嫌がっていたのだろう。両想いならセックスし放題なのに。お揃いの指輪も発光するほど認めている。この指輪は強く何かを思うと光り出す感情表現装置だ。テクニカルパレードのような光は恋心に反応する。
これが本当にそういう物なのか確認するためにケイタの元に向かった。
向かうは王城。先触れを出して、ふたりだけで会いたいと連絡をした。
「ステファニー、過去に好きだった人にときめかない条件って何?」
「不快感でざわざわしたら嫌いになった証拠ですね。中にはそういうことを感じない人もいますが、雑に扱われて嫌いにならなかったら、鈍感通り越して馬鹿ですよ」
「うん分かった」
物言いがハッキリしているステファニーのおかげで目が覚めた。
久しぶりに会ったケイタはあの頃の輝きを失っていて、笑顔で駆け寄ってきたけれど胸のあそこもキュンキュンしなかった。
格好良くなったのだろう。あの頃の無気力主人公感がなくなり、今は週刊連載の主人公みたいだ。生きる目的がハッキリ分かると人間は変わる。
「久しぶり。ケイタ元気にしていた」
「雪美、俺は元気だ」
熱が籠った目で見つめられ、手で触れられそうになり背筋がゾッとした。後ろに仰け反って、ステファニーが前に立った。近くにいた彼のメイドがケイタに聞こえないように舌打ちをした。用意されたお茶の席に案内され、先ほどの行為をカバーするために懐かしい話を続けた。
彼は相槌を打ち、雑に扱われる私たちに気がつかない。お茶も雑に注がれため息をつかれた。召喚の時に馬鹿にされたことがここで響いている。
この日、好感度は地の底まで低くなりケイタへの気持ちがなくなった。
「会えてよかった。本気でそう思ってる」
心の何処かにケイタが私と妹を求めていたら、協力しようと思っていた。これでも一度好きになった男だからだ。安堵した彼は首を振る。
「雪美みたいに暇じゃないからな。俺は勇者で、この国を救わないといけない」
「どんなことをしているの?雪美分かんないから教えて欲しいな」
「それは……異世界の知識を与えている」
「すごぉい、ケイタなら絶対に文明開化出来るって信じてるよ」
褒めちぎって王宮内に月美がいないか探すことにした。ステファニーに私とそっくりな人がいたら教えて欲しいと指示をした。柱の側に隠れている時に王宮の使用人たちの声が聞こえた。
「本当に酷いわよね。異世界から来た聖女様はケイタ様に対して酷い態度なのよ」
「メスガキって何よ。酷いわね」
「エリオット様が引き取ったけれど、彼以外護衛騎士になりたがる人がいないから連日お疲れなのよ」
ステファニーが何か言いたそうにしていたけれど、無視をさせた。過去の行いのせいで、こんな目に会うなんて。でもそれだけの事を私たちはしたんだ。
面白がって、ケイタに迫った結果こうなったんだ。立ち止まって、少し先を歩くステファニーの元に走ろうとした時だった。部屋に引きづり込まれ口を抑えられる。
「おい、どこの貴族か知らないがエロい身体をちらつかせて、私の下肢を大きくさせたのだから、慰めなさい」
「珍しい黒髪だ。高く売れるから処女のまま連れて行こう」
あまりにも突然の事で、藻掻くことが出来ず泣いて抵抗するしかない。人攫いに捕まるなんて王宮内であるなんて信じられない。
「ドレス越しにも分かる乳首が愛らしいな」
「少しだけしゃぶりましょうか、ふひひ」
――助けて、エリオット…………。
目を瞑ると、殴り飛ばされた2人が羽交い絞めにされてエリオットが抱きしめていた。
「遅れて申し訳ございません。あの者たちは尋問した後に殺します」
「俺たちは催眠術で洗脳されたんだ。おっぱいが大きい女は誘っているって」
「ご慈悲をください。誘拐は15回しかしていません」
妙に口が軽い犯罪者が騎士団に連行され、長く尋問を受けることになった。
♢♢♢
聖女と勇者は結婚するもの。そんなの噂だけだと思っていた。
領地を一緒にエリオットと視察している時、足がない母親がいた。菌に感染したせいで切断するしかなく、重い木の義足だと歩きにくいためゆっくり歩いているのだとか。
「雪美様、少し待ってくださいね」
エリオットは母親に近づくと簡単に足を生やすことに成功した。喜んでいる親子を目の前に、奇跡を実際に目の前にして私は喜べなかった。聖なる力に目覚めたエリオット。この事は数日中に国中に広がって、その後はどうなるのだろうか。
ぼんやりとしたまま食事を食べて、意識を取り戻した時は就寝前だった。
「ステファニー、好きな男の寝込みを襲うのって罪になるの?」
「勃起しているなら無罪に決まってます。過去の判例にありますが、オナホと間違ったからと無罪になってます」
「そっか、分かったわ。エリオットを襲って処女奪って来るね」
「そういう思考なんですか。頑張って下さいね」
「エリオットを聖女になんかさせない。絶対に結婚を阻止させるんだから」
全部、夢だった?あんなに愛し合ったのに。
ステファニーも使用人の人たちも獣人の人たちもいない。
周囲を見渡せば、現代日本の風景で帰りたかった場所なのに居心地が悪くて早くエリオットのいる屋敷に帰りたい。
聞き覚えのある声が聞こえて横を向くとそこにはケイタと私と、妹がいた。
「ちょっとケイタ、白と黒どっちが好きなの?」
双子の妹がケイタの前でスカートを捲って下着が見えるか見えないかのところで下ろした。怒って手で追い払うケイタに馬鹿にしたような口調で女の子が話しかける。
「ばーか、下着くらいでコーフンしてる。行こう月美」
と私は馬鹿にする。これはエリオットに隠したい恥ずかしい記憶の一つだ。
高校生活が始まって双子の妹の月美と一緒にケイタを馬鹿にしていた。月美と私は一卵性双生児で見た目はそっくりだった。目つきが悪くてやんちゃな方が月美、おっとりしている方が雪美と友達に言われていた。2人で好きになってしまった男の子を取り合いしていたのだ。入学式の時に一目ぼれしてから、行動的な私たちは彼に痴漢行為をしていた。
「違う方向の電車だろ」
「早起きして追いかけてきたに決まってるでしょう♡」
「あそこのラブホでしようよ♡今なら双子サービスで処女割含めた値段だって」
「親が放任主義でお金ならあるからさ、ねえ、チューしよう」
『うわあああああ、そんな奴に迫るなあああああ、全然格好良くないから。クズの陰キャだし、異世界に来たらデカいおちんぽといい顔の人もっといるから。前髪あげたらそんでもないからね。エリオットや騎士団の人と生ハメした方がいいよ!』
こっちの声が聞こえないのか、腕にしがみついておっぱいを押し付けている。あまりにも馬鹿過ぎて後ろから叩いても誰も気がつかない。
なんでこんな奴好きだったの。ありえない。実家が太いから?恋愛フィルターかかり過ぎでしょう。もうヤダ、やめて欲しい。
毎日が発情期でムラムラしていた。彼は私たちが迫っているのに全く靡かず、逆にそのせいで私たちの闘争心に火をつけてしまった。電車で痴漢されても全く感じず、イライラさせられる日々。
そんなある日、近道をするために通った道でケイタと3人で異世界に召喚された。呼び出したのは水銀色の髪の毛の男だった。
「勇者召喚に3人も召喚されるとは、この国の危機が迫っているのだろうか。しかし、男に女が2人…………しかし、まあ胸が大きいな」
「格好いいのにおっぱいしか見てないの有り得ない」
「きもっ、ねーよ!!お姉ちゃん、逃げよ!ケイタ、あんたも男なら守りなさいよ」
訳の分からない説明が始まった瞬間、月美が私たちを押して元の世界に戻る事が出来た。壁の穴が塞がる前に月美もこちらに来ようとしたのに、水銀色の髪の毛の変態が抱き着いて離さない。
「月美!」
「おねえちゃん、たしゅけて。や、やだこっちくんな、変態! わあああ」
壁の向こうから月美が逃げている声が聞こえた。
その日から私たちは月美の記憶を失った。
以前と違ってケイタに対する執着をなくしたが、完全に失ってはいなかった。元々は月美がケイタに執着していて、そのおまけ程度に私が付き纏っていただけだったから。
姉が支配する家は月美がいないと楽しくない。記憶を失っている私は何が原因か分からない。お金が貰る量が増えて大人しくしていた。
都合の悪い記憶が消えたおかげで、ケイタに片思いする少女と周りに評価になっていた。
こんな過去バレたら恥ずかしくてエリオットの顔が見られないよ。この世界に月美が何処かにいる。男に囚われているんだ。
過去の出来事を思い出してから、彼との関係が少し進んだ。
語彙力失うほど、エリオットは格好いい。どうしてセックスを嫌がっていたのだろう。両想いならセックスし放題なのに。お揃いの指輪も発光するほど認めている。この指輪は強く何かを思うと光り出す感情表現装置だ。テクニカルパレードのような光は恋心に反応する。
これが本当にそういう物なのか確認するためにケイタの元に向かった。
向かうは王城。先触れを出して、ふたりだけで会いたいと連絡をした。
「ステファニー、過去に好きだった人にときめかない条件って何?」
「不快感でざわざわしたら嫌いになった証拠ですね。中にはそういうことを感じない人もいますが、雑に扱われて嫌いにならなかったら、鈍感通り越して馬鹿ですよ」
「うん分かった」
物言いがハッキリしているステファニーのおかげで目が覚めた。
久しぶりに会ったケイタはあの頃の輝きを失っていて、笑顔で駆け寄ってきたけれど胸のあそこもキュンキュンしなかった。
格好良くなったのだろう。あの頃の無気力主人公感がなくなり、今は週刊連載の主人公みたいだ。生きる目的がハッキリ分かると人間は変わる。
「久しぶり。ケイタ元気にしていた」
「雪美、俺は元気だ」
熱が籠った目で見つめられ、手で触れられそうになり背筋がゾッとした。後ろに仰け反って、ステファニーが前に立った。近くにいた彼のメイドがケイタに聞こえないように舌打ちをした。用意されたお茶の席に案内され、先ほどの行為をカバーするために懐かしい話を続けた。
彼は相槌を打ち、雑に扱われる私たちに気がつかない。お茶も雑に注がれため息をつかれた。召喚の時に馬鹿にされたことがここで響いている。
この日、好感度は地の底まで低くなりケイタへの気持ちがなくなった。
「会えてよかった。本気でそう思ってる」
心の何処かにケイタが私と妹を求めていたら、協力しようと思っていた。これでも一度好きになった男だからだ。安堵した彼は首を振る。
「雪美みたいに暇じゃないからな。俺は勇者で、この国を救わないといけない」
「どんなことをしているの?雪美分かんないから教えて欲しいな」
「それは……異世界の知識を与えている」
「すごぉい、ケイタなら絶対に文明開化出来るって信じてるよ」
褒めちぎって王宮内に月美がいないか探すことにした。ステファニーに私とそっくりな人がいたら教えて欲しいと指示をした。柱の側に隠れている時に王宮の使用人たちの声が聞こえた。
「本当に酷いわよね。異世界から来た聖女様はケイタ様に対して酷い態度なのよ」
「メスガキって何よ。酷いわね」
「エリオット様が引き取ったけれど、彼以外護衛騎士になりたがる人がいないから連日お疲れなのよ」
ステファニーが何か言いたそうにしていたけれど、無視をさせた。過去の行いのせいで、こんな目に会うなんて。でもそれだけの事を私たちはしたんだ。
面白がって、ケイタに迫った結果こうなったんだ。立ち止まって、少し先を歩くステファニーの元に走ろうとした時だった。部屋に引きづり込まれ口を抑えられる。
「おい、どこの貴族か知らないがエロい身体をちらつかせて、私の下肢を大きくさせたのだから、慰めなさい」
「珍しい黒髪だ。高く売れるから処女のまま連れて行こう」
あまりにも突然の事で、藻掻くことが出来ず泣いて抵抗するしかない。人攫いに捕まるなんて王宮内であるなんて信じられない。
「ドレス越しにも分かる乳首が愛らしいな」
「少しだけしゃぶりましょうか、ふひひ」
――助けて、エリオット…………。
目を瞑ると、殴り飛ばされた2人が羽交い絞めにされてエリオットが抱きしめていた。
「遅れて申し訳ございません。あの者たちは尋問した後に殺します」
「俺たちは催眠術で洗脳されたんだ。おっぱいが大きい女は誘っているって」
「ご慈悲をください。誘拐は15回しかしていません」
妙に口が軽い犯罪者が騎士団に連行され、長く尋問を受けることになった。
♢♢♢
聖女と勇者は結婚するもの。そんなの噂だけだと思っていた。
領地を一緒にエリオットと視察している時、足がない母親がいた。菌に感染したせいで切断するしかなく、重い木の義足だと歩きにくいためゆっくり歩いているのだとか。
「雪美様、少し待ってくださいね」
エリオットは母親に近づくと簡単に足を生やすことに成功した。喜んでいる親子を目の前に、奇跡を実際に目の前にして私は喜べなかった。聖なる力に目覚めたエリオット。この事は数日中に国中に広がって、その後はどうなるのだろうか。
ぼんやりとしたまま食事を食べて、意識を取り戻した時は就寝前だった。
「ステファニー、好きな男の寝込みを襲うのって罪になるの?」
「勃起しているなら無罪に決まってます。過去の判例にありますが、オナホと間違ったからと無罪になってます」
「そっか、分かったわ。エリオットを襲って処女奪って来るね」
「そういう思考なんですか。頑張って下さいね」
「エリオットを聖女になんかさせない。絶対に結婚を阻止させるんだから」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
388
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる