逆ハーレムルートの後始末。

脇役令嬢

　エリザ・ベイリーは悪役令嬢である。では、ヒロインは何処にいるのだろうか？

　普段の私は手袋をしていて、今日はたまたま手袋を外していた。肌を接してしまうと人の記憶を読む事が出来、そのせいでとても嫌な思いをした事が多かったからだ。意識せずに流れてくる記憶は、いい事があった事なんてない。

　エリザ様の記憶によると、この世界は乙女ゲーム【彼女がいる美しい世界】の世界で、ヒロインが聖なる力に目覚めて隠していた所をヒーローたちに見つかり溺愛される小説だ。

　ヒロインを守るために、先回りして妨害してくる相手を倒し幸せな世界を作り上げるヒーローたち。彼らはエリザ様に妄信的になっているのを見て身震いをした。我儘放題だったエリザ様の性格が変わってしまい、今までの出来事を忘れてしまうくらい大好きになっていたのだ。

　一夫一妻の世界観で、今の状態を注意しない人がいないわけがない。思い出してみると注意をしていた、エリザ様と同じ身分の令嬢達は、今では私達と同じ脇役になっている。

『嫉妬は見苦しいぞ』
『エリザ様、気にしないで下さい』

　と彼らは令嬢たちに言い放ち、エリザ様を守るように背を向けてその場を後にした。
　今の世界はエリザ様にとって理想の世界なのだろう。関わらない方がいいに決まっている。あの人たちは何をするのか分からないし、敵とみなした相手に容赦がなさそうだ。

（今まで通り脇役に徹して、卒業するまで反論するのは我慢しよう）

　モブの朝は早い。

　モブだから授業は真剣に学ぶ。今後の人生を考えたら、学生時代なんてあっという間だ。エリザ様の記憶を見た時に、学生時代に沢山勉強をした方がいいと学ぶことが出来た。今まで成績が反映されずに不貞腐れていたけれど、頑張った方がいいと分かり目標を持つことが出来た。

　私はやっぱり魔導士になりたい。

　今のままでは実技もテストも頑張ったが評価されず、卒業まで平均的な人間として過ごすことが決まってしまう。外部の人に成績を見せる事が出来ればと何度も思っていた。