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第324話 二度目の仰天
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「だから俺は、ケイのそういう部分をどうにかしたくて、この猿芝居のような席をもうけたんだ」
ユキは佐野をまっすぐに見据えて言う。
「……そうだったんですか」
佐野の頬が、かあっと熱くなる。自分の短絡的な考え方を恥じているからだ。
目の前のことばかりに気を取られ、自分の視野に入っているものだけで、せっかちに結論を出してしまった。
自分はユキの気持ちを完全に無視して持論を展開し、勝手に逆ギレしていたのだ。
もっと思慮深くならなければ――
卓上コンロの火が消えて、すっかり静まりかえっている鍋物に目をやりながら、佐野はひたすら自省する。
全くもって、自分はこの鍋物と同じではないか。沸騰しまくって大騒ぎし、結果、煮詰まって、味も食材も台無しにする。
さっさと火を消せば、そんないきり立つ気持ちも消えるのに、消火スイッチの存在すら眼中にない。
自分の考えに固執して、火を消すという行為自体が頭に浮かばないのだ。
結局はユキがコンロの火を止めて、さらには、自分の逆上をも鎮めてくれたのだ。
「すみません……田上課長の言葉を完全にはき違えておりました」
佐野は、ユキへ深く頭を下げる。
「ふふふ。いいんだ。気にするな。まあ、そういうところもひっくるめて、全部、古山建設の弊害さ。新卒で入社したのなら、その会社の影響をもろに受けるのは当然のことだからな」
ユキはゆったりと微笑んで、言葉を続ける。
「それにな、そんな心の持ち方で、俺と一緒にいてもつまらんだろう。もちろん、俺だってしんどい。だってこれから――仕事以外でも、俺と長くつき合うんだから」
「……!」
佐野にとって、今夜二度目の仰天である。
ユキは佐野をまっすぐに見据えて言う。
「……そうだったんですか」
佐野の頬が、かあっと熱くなる。自分の短絡的な考え方を恥じているからだ。
目の前のことばかりに気を取られ、自分の視野に入っているものだけで、せっかちに結論を出してしまった。
自分はユキの気持ちを完全に無視して持論を展開し、勝手に逆ギレしていたのだ。
もっと思慮深くならなければ――
卓上コンロの火が消えて、すっかり静まりかえっている鍋物に目をやりながら、佐野はひたすら自省する。
全くもって、自分はこの鍋物と同じではないか。沸騰しまくって大騒ぎし、結果、煮詰まって、味も食材も台無しにする。
さっさと火を消せば、そんないきり立つ気持ちも消えるのに、消火スイッチの存在すら眼中にない。
自分の考えに固執して、火を消すという行為自体が頭に浮かばないのだ。
結局はユキがコンロの火を止めて、さらには、自分の逆上をも鎮めてくれたのだ。
「すみません……田上課長の言葉を完全にはき違えておりました」
佐野は、ユキへ深く頭を下げる。
「ふふふ。いいんだ。気にするな。まあ、そういうところもひっくるめて、全部、古山建設の弊害さ。新卒で入社したのなら、その会社の影響をもろに受けるのは当然のことだからな」
ユキはゆったりと微笑んで、言葉を続ける。
「それにな、そんな心の持ち方で、俺と一緒にいてもつまらんだろう。もちろん、俺だってしんどい。だってこれから――仕事以外でも、俺と長くつき合うんだから」
「……!」
佐野にとって、今夜二度目の仰天である。
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