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第一章
疲れた朝には
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明日には、リヒト様が仕事から帰って来られる。それまでに離宮を綺麗にしたいと思い、必死で頑張っていた。リックの助けもあり、それなりに綺麗にはなったけど……庭の植物は殺風景なものだった。
植物が早く立派に育つには、大地を活性化させるのがいいのだけど……そう思い、妖精の弓を持ち、今夜も月明りの下で庭の土に豊穣の魔法をかけていた。
月のでる夜にこの魔法をかけるのは、月が大地に力を与えてくれると言われているから。実際に、こんな満月の夜は植物の育ちは良く、害虫に抵抗する力も増すのだ。
魔法が終われば、「ふうっ」と一息つく。なにか植えたいとは思うけど、いつまでここに居るかわからないから、なにかを植えることに躊躇してしまう。
花壇も、花を植えたら妖精が来てくれるかもしれないのに……。
「……疲れたわ」
でも、明日にはリヒト様がお帰りになる予定だ。茶葉をお願いしたから、せめて綺麗にしてから飲みたくて、けっこう頑張っていた。
リックの前では疲れた顔を見せると、使用人を呼ばれそうだし、また女官長と争う気がしてそんな顔を見せられなかった。
部屋に戻ると、初めてこの部屋に入って来た時よりもずっと綺麗になっている。
魔力の回復は、明日の朝でもいいわね……どうせ、あとは寝るだけだ。何もすることなどない。
綺麗になったベッドに妖精の弓を持ったまま倒れるように入り布団に包まるとそのまま眠ってしまっていた。
____いつもよりも温かい。
暖炉の煙突掃除をしてないし、薪がなかったからまだ暖炉をまだ使ってなかったのに……。
……なんで?
そう思うと、眼を開く前に頭に敷いているものが枕ではない感触だとわかる。背中には、手を添えられている。
眼を開くと目の前には、筋肉質な胸板。髪には、寝息が微かにかかる。
筋肉質な胸板の持ち主を確認すると、男らしい綺麗な寝顔のリヒト様がいる。その彼の腕の中で私は寝ていた。
起き上がろうにも、がっしりと腕の中に閉じ込められている。その中で、首を左右に回して見える部屋を見ると、知らない天井に壁紙……知らない部屋だった。
ここはどこ? なんでリヒト様と寝ているのだろうか??
というか、なぜこの方は私が寝ている時にベッドにくるのだろうか。
しかも、リヒト様は上半身裸。私は薄いナイトドレスのみ。乱れてはいないけど、いきなり半裸の男性の腕の中にいることに恥ずかしくなる。
じたばたと腕の中から抜け出ようと必死になると、頭の上がほんの少しだけ揺れた。
「……お、起きてます?」
「腕の中で、それだけ動かれてはな……」
「わ、笑わないでください」
「笑う? 笑っているか?」
「楽しそうに見えますけど?」
リヒト様は、自覚がなかったのか、ほんの少し驚くと微かに口角が上がっていた。
植物が早く立派に育つには、大地を活性化させるのがいいのだけど……そう思い、妖精の弓を持ち、今夜も月明りの下で庭の土に豊穣の魔法をかけていた。
月のでる夜にこの魔法をかけるのは、月が大地に力を与えてくれると言われているから。実際に、こんな満月の夜は植物の育ちは良く、害虫に抵抗する力も増すのだ。
魔法が終われば、「ふうっ」と一息つく。なにか植えたいとは思うけど、いつまでここに居るかわからないから、なにかを植えることに躊躇してしまう。
花壇も、花を植えたら妖精が来てくれるかもしれないのに……。
「……疲れたわ」
でも、明日にはリヒト様がお帰りになる予定だ。茶葉をお願いしたから、せめて綺麗にしてから飲みたくて、けっこう頑張っていた。
リックの前では疲れた顔を見せると、使用人を呼ばれそうだし、また女官長と争う気がしてそんな顔を見せられなかった。
部屋に戻ると、初めてこの部屋に入って来た時よりもずっと綺麗になっている。
魔力の回復は、明日の朝でもいいわね……どうせ、あとは寝るだけだ。何もすることなどない。
綺麗になったベッドに妖精の弓を持ったまま倒れるように入り布団に包まるとそのまま眠ってしまっていた。
____いつもよりも温かい。
暖炉の煙突掃除をしてないし、薪がなかったからまだ暖炉をまだ使ってなかったのに……。
……なんで?
そう思うと、眼を開く前に頭に敷いているものが枕ではない感触だとわかる。背中には、手を添えられている。
眼を開くと目の前には、筋肉質な胸板。髪には、寝息が微かにかかる。
筋肉質な胸板の持ち主を確認すると、男らしい綺麗な寝顔のリヒト様がいる。その彼の腕の中で私は寝ていた。
起き上がろうにも、がっしりと腕の中に閉じ込められている。その中で、首を左右に回して見える部屋を見ると、知らない天井に壁紙……知らない部屋だった。
ここはどこ? なんでリヒト様と寝ているのだろうか??
というか、なぜこの方は私が寝ている時にベッドにくるのだろうか。
しかも、リヒト様は上半身裸。私は薄いナイトドレスのみ。乱れてはいないけど、いきなり半裸の男性の腕の中にいることに恥ずかしくなる。
じたばたと腕の中から抜け出ようと必死になると、頭の上がほんの少しだけ揺れた。
「……お、起きてます?」
「腕の中で、それだけ動かれてはな……」
「わ、笑わないでください」
「笑う? 笑っているか?」
「楽しそうに見えますけど?」
リヒト様は、自覚がなかったのか、ほんの少し驚くと微かに口角が上がっていた。
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