18 / 48
第一章
王太子殿下の事情
しおりを挟む
「あの……ここは?」
「俺の城の寝室だ。離宮は寒いから、ここに連れて来た」
ぐっすり眠りに落ちていて全く気がつかなかった。
だからといって、どうしてリヒト様の寝室に連れて来るのか。寝室はプライベートな空間ではないのだろうか。
しかも、寒いことを知っているということはリヒト様が直接あの離宮から連れ出したのだ。
「あの……どうやってここに?」
「抱きかかえて連れて来たが?」
寝ている間に運ばれるとは、予想もしてなかった。困惑と同時に恥ずかしくなる。
リヒト様は、なにか考えているのかと思うと、表情も変えずにこちらを見る。
「リーゼ。部屋を変えるか?」
「……リックからお聞きになりました?」
「報告は受けている」
「でしたら、離宮から部屋を変える必要はありません」
ベッドの上で、無言で私の返答を聞いている。
「なら、離宮に使用人を付ける」
「いりませんけど……今は、食事も運んできてくれますし、何の問題もありませんよ」
「……なら、リックは離宮付きも兼任させる。俺がいない時は、なにかあればリックに言え。すぐに俺に連絡がつく」
「はい。でも、お気になさらないでくださいね」
リックは、騎士団の隊長なのは、リヒト様の側近として動くやすくするためらしい。そのリヒト様の側近と私がいる離宮付きを兼任することになるけど、今もリックがなにかと気を遣ってくれているから、特にかわることもないだろう。
そう思っていると、ベッドの上で膝を立てて座っているリヒト様の手が私の頬に伸びてくるとゆっくりとキスをされる。
「あの……」
「……リーゼ。妖精姫にはなにか意味があるのか? なにか特殊な能力があるとか……」
「特別な能力はなにも……妖精の愛し子ではありますけど……」
「身体には、なにも変化はないのか?」
「なんの変化ですか……?」
なにも変化はない。そういえば、リヒト様の腕の中で寝ていたようだから、弓から魔力の補充が出来てない。持って眠るだけでも魔力の回復はできるはずなのに……。
でも、身体に魔力不足という感じはない。思わず、身体を確認するように手のひらを見ていた。
「なにか変化があるのか?」
「……いえ、なにも」
「言えないことか?」
私の秘密になにか心当たりがあるような言い方だった。でも、私の魔法の核が異常だとはおいそれと言えない。ルーセル様は、妖精から聞いて知っているかもしれないけど、他には誰も知らないのだから。
「……リーゼ。俺にも秘密がある」
口をつぐんだ私に、リヒト様から話し始めた。
「俺が女を必要としている理由だ」
それは、絶倫だからではないのだろうか。ベッドの上でそう話しだされると、今にも飛び掛かって来るのでは? と思わず後ろにじりっと下がってしまう。
いや、リヒト様の後宮にいるのだからいつ手を出しても、問題はないのだけど……。
「……なぜ後ろに下がる?」
「な、なぜでしょうか……」
不審がられてしまった。ベッドの上で距離を取ろうとすると、リヒト様に目を細められて呆れられる。
「女に逃げられるのは初めてだぞ」
「逃げているわけでは……」
どうやらプライドに触ったらしい。
怒ることないけど、なぜかムッとして話を続け始めた。
「リーゼは俺の魔力を浴びて、何もないのか?」
「どういう意味ですか? リヒト様も魔法使いですか?」
「違う。勘違いしている人間もいるが、俺は魔法は使えない。だが、魔力が常時溢れているんだ」
「どうやって……そんなことはありえません。それに魔力があれば魔法が使えるのでは?」
自分に収めきれない魔力があるなど、そんな人間は聞いたこともない。
魔法を使うなら、魔力が必要だから必ずその人間に魔法の核があるはずだ。その中に魔力があると言われているのだから。
魔力があるなら、魔法が使えるはず。それなのに、魔法が使えないということは矛盾している。
「俺の魔法の核が壊れている。だから、魔力を核に留めておくことができない障害がおきているらしい。そのうえ、魔法の核が壊れているから、魔法を使うことすら出来ない」
「では、魔力の使い道は……?」
「ない」
何という魔力の無駄なのだろう。いらないなら、私が欲しい。私は、リヒト様と反対で自分で魔力を回復することがほぼできないのだから……。
それにハッとした。
初めてリヒト様に魔法を撃った時に魔力を回復しなくても身体が弱ることは無かった。
『身体には、変化はないのか?』先ほど言われた言葉に思い当たることが出てきた。
「まさか……女性を召しているのは……」
「魔力が常時溢れているから、どこかで発散させないと死んでしまう。魔力が貯まると身体に熱が溜まるからな」
それが性欲に結びついているのだ。高ぶったものを発散するから、魔力が自然と身体から出ているのだろう。魔力が高い魔法使いは性欲が強いとは聞いたこともある。
それに、性欲を発散させないと余計に魔力が落ち着かなる。リヒト様の立場上、それは不味いことだろう。
「……それが、リーゼと出会ったあの時から、魔力が落ち着いているというか……あれから、誰とも同衾しなくても異常がない。心当たりはないのか? 原因は君しか考えられない」
冷や汗が出てきた。絶対に私のせいだ。私が無意識にリヒト様の溢れる魔力を知らずに吸収していたのだ。私の身体の調子が良いこともわかった。
働なくても良くなったから、余裕が出ているだけかと思ったけど……。
「思い当たることがあるんだな?」
私の冷や汗を見て、そう聞いてきた。
「あります……その……私も魔法の核が異常なのです」
「俺の城の寝室だ。離宮は寒いから、ここに連れて来た」
ぐっすり眠りに落ちていて全く気がつかなかった。
だからといって、どうしてリヒト様の寝室に連れて来るのか。寝室はプライベートな空間ではないのだろうか。
しかも、寒いことを知っているということはリヒト様が直接あの離宮から連れ出したのだ。
「あの……どうやってここに?」
「抱きかかえて連れて来たが?」
寝ている間に運ばれるとは、予想もしてなかった。困惑と同時に恥ずかしくなる。
リヒト様は、なにか考えているのかと思うと、表情も変えずにこちらを見る。
「リーゼ。部屋を変えるか?」
「……リックからお聞きになりました?」
「報告は受けている」
「でしたら、離宮から部屋を変える必要はありません」
ベッドの上で、無言で私の返答を聞いている。
「なら、離宮に使用人を付ける」
「いりませんけど……今は、食事も運んできてくれますし、何の問題もありませんよ」
「……なら、リックは離宮付きも兼任させる。俺がいない時は、なにかあればリックに言え。すぐに俺に連絡がつく」
「はい。でも、お気になさらないでくださいね」
リックは、騎士団の隊長なのは、リヒト様の側近として動くやすくするためらしい。そのリヒト様の側近と私がいる離宮付きを兼任することになるけど、今もリックがなにかと気を遣ってくれているから、特にかわることもないだろう。
そう思っていると、ベッドの上で膝を立てて座っているリヒト様の手が私の頬に伸びてくるとゆっくりとキスをされる。
「あの……」
「……リーゼ。妖精姫にはなにか意味があるのか? なにか特殊な能力があるとか……」
「特別な能力はなにも……妖精の愛し子ではありますけど……」
「身体には、なにも変化はないのか?」
「なんの変化ですか……?」
なにも変化はない。そういえば、リヒト様の腕の中で寝ていたようだから、弓から魔力の補充が出来てない。持って眠るだけでも魔力の回復はできるはずなのに……。
でも、身体に魔力不足という感じはない。思わず、身体を確認するように手のひらを見ていた。
「なにか変化があるのか?」
「……いえ、なにも」
「言えないことか?」
私の秘密になにか心当たりがあるような言い方だった。でも、私の魔法の核が異常だとはおいそれと言えない。ルーセル様は、妖精から聞いて知っているかもしれないけど、他には誰も知らないのだから。
「……リーゼ。俺にも秘密がある」
口をつぐんだ私に、リヒト様から話し始めた。
「俺が女を必要としている理由だ」
それは、絶倫だからではないのだろうか。ベッドの上でそう話しだされると、今にも飛び掛かって来るのでは? と思わず後ろにじりっと下がってしまう。
いや、リヒト様の後宮にいるのだからいつ手を出しても、問題はないのだけど……。
「……なぜ後ろに下がる?」
「な、なぜでしょうか……」
不審がられてしまった。ベッドの上で距離を取ろうとすると、リヒト様に目を細められて呆れられる。
「女に逃げられるのは初めてだぞ」
「逃げているわけでは……」
どうやらプライドに触ったらしい。
怒ることないけど、なぜかムッとして話を続け始めた。
「リーゼは俺の魔力を浴びて、何もないのか?」
「どういう意味ですか? リヒト様も魔法使いですか?」
「違う。勘違いしている人間もいるが、俺は魔法は使えない。だが、魔力が常時溢れているんだ」
「どうやって……そんなことはありえません。それに魔力があれば魔法が使えるのでは?」
自分に収めきれない魔力があるなど、そんな人間は聞いたこともない。
魔法を使うなら、魔力が必要だから必ずその人間に魔法の核があるはずだ。その中に魔力があると言われているのだから。
魔力があるなら、魔法が使えるはず。それなのに、魔法が使えないということは矛盾している。
「俺の魔法の核が壊れている。だから、魔力を核に留めておくことができない障害がおきているらしい。そのうえ、魔法の核が壊れているから、魔法を使うことすら出来ない」
「では、魔力の使い道は……?」
「ない」
何という魔力の無駄なのだろう。いらないなら、私が欲しい。私は、リヒト様と反対で自分で魔力を回復することがほぼできないのだから……。
それにハッとした。
初めてリヒト様に魔法を撃った時に魔力を回復しなくても身体が弱ることは無かった。
『身体には、変化はないのか?』先ほど言われた言葉に思い当たることが出てきた。
「まさか……女性を召しているのは……」
「魔力が常時溢れているから、どこかで発散させないと死んでしまう。魔力が貯まると身体に熱が溜まるからな」
それが性欲に結びついているのだ。高ぶったものを発散するから、魔力が自然と身体から出ているのだろう。魔力が高い魔法使いは性欲が強いとは聞いたこともある。
それに、性欲を発散させないと余計に魔力が落ち着かなる。リヒト様の立場上、それは不味いことだろう。
「……それが、リーゼと出会ったあの時から、魔力が落ち着いているというか……あれから、誰とも同衾しなくても異常がない。心当たりはないのか? 原因は君しか考えられない」
冷や汗が出てきた。絶対に私のせいだ。私が無意識にリヒト様の溢れる魔力を知らずに吸収していたのだ。私の身体の調子が良いこともわかった。
働なくても良くなったから、余裕が出ているだけかと思ったけど……。
「思い当たることがあるんだな?」
私の冷や汗を見て、そう聞いてきた。
「あります……その……私も魔法の核が異常なのです」
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
1,876
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる