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掌握 6

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「ヴィルヘルム、後は頼むぞ」
「畏まりました。…しかし、ティナは面白いことを言いますね。ふふふ」

ヴィルヘルムに死体の後片付けを頼み、ティナの待っている隠れ家に帰ると、お菓子を作っていた。

お菓子の焼いた匂いで家の中は甘い匂いに包まれていた。

「おかえりなさい、シグルド」
「ただいま、ティナ」

もう夜中だが、ティナは俺が帰ってくると思ったのか夜食のつもりでパンケーキを焼いていたらしい。

「丁度良かったです。パンケーキを食べませんか?リンゴのジャムも作ったんですよ」

ティナはよく作るのか、慣れた手つきで作っていた。

テーブルに並べたパンケーキを食べると意外と美味しい。

「料理が上手いのか?」
「お金がありませんからね。普段から自分で作っていました」

あのボロ屋に住んでいたのだから、金はなかったのだろう。
だけど、ティナは全くすれてない。

「ティナ、明日は一緒に出かけるぞ」
「どこに?」
「夜会に連れて行ってやる」
「誰のですか?私は貴族様じゃありませんよ」
「バリィ公爵の出席している夜会だ」

ティナはあからさまに嫌な顔をした。

「あのバリィ公爵様は評判はいまいちですよ。私兵もガラが悪くて皆、近づきたがらなかったですよ」
「美味いものもあるらしいぞ」
「…行きます。シグルドと一緒ですよね?」
「勿論だ。ティナをエスコートしてやろう」

ニコリと頬づえをついて言うと、ティナは少し赤くなり、眉間にシワを寄せた。

「シグルド…怪しいですよ」
「では、今日はもう寝るぞ」
「…もう一つベッドを買って下さい」

ティナは、また添い寝させられるとわかっているように言った。

大体、この小さな隠れ家にベッド2つなんて邪魔だ。
レティシアと寝たいとは思ったこともないが、ティナだと思うとレティシアの身体だろうが、一緒に寝たいと思ってしまう。

「ベッドは一つで充分だ」
「シグルド…私とレティシア様が入れ替わっていることを覚えていますか?」
「忘れたことはない」

そして、ティナの添い寝だとよく眠ることができ、翌日にはバリィ公爵の邸へとティナを連れて行った。



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