GOD SLAYER’S

猫乃麗雅

文字の大きさ
上 下
23 / 267
― 第二章・それぞれの成長 ―

第23話 謀

しおりを挟む
国主専用である広大な屋敷の東西南北には、それぞれ庭園が在る。

“東の間”の大きめな縁側に、〝ドカッ〟と胡坐あぐら座りした清虎が、

「神の下僕げぼくか…。」
「間違いないのじゃな?」

と、庭でひざまずいているセルグと“影”に確認した。

これに、影が、

「は。その者に口を割らせましたので。」

と答える。

続いて、セルグが、

「北に隣接している“神之国”が、こちらに攻め込むことを決めたそうでして…。」
「それに先んじてヒーゴン国内の至る街や村で、内部事情を探っていた模様です。」

と、述べた。

「ふ…む。つまり、何人もの工作員を放っておったということか?」

と国主が窺う。

「はい。」

と、二人が頷いたところ、

「ふぅ――ッ。」

と息を吐いた清虎が、

「つい最近、跡目争いが終わったばかりじゃろうて、せわしないのぉ。」

と、眉間にシワを寄せた。


それは、今から三年ぐらい過去のことだった…。

当時の王が崩御する際に、第二王子を跡継ぎに指名してしまったので、これを不服とした第一王子が挙兵し、兄弟で激突を繰り広げていたのである。

結果、第一王子が勝利を収めるも、その期間中、政治がとどこおっていたので、経済が著しく悪化してしまったようだ。


「内政に力を注いで立て直しを図れば良かろうて、他国を制圧することで威厳を示そうとは…、なかなか愚鈍のようじゃな。」

と国主が呆れ顔になった。

「して?」
「いつ頃じゃ?」

との清虎の問いに、影が、

「現在、戦準備を行っているそうでございまして…、およそ二ヶ月後には国境に現れるようです。」

と、説明する。

「ならば、こちらも急ぐとするかのッ。」

と不敵な笑みを浮かべる国主であった。



翌朝、千代/フーリィ/金時と鍛錬している所にセルグが訪れ、昨日の出来事と、これからの方針を伝えた。

「“神之国”と戦!?」

と、いささか興奮した紫蓮しれんが、想像していたよりも早い段階で復讐の一歩を踏み出せることに、ワナワナしだす。

おそらくは、武者震いであろう。

煙草たばこを吸いながら、

あやういな…。)

と思ったセルグが、

「お前が神どもに恨みを抱いているのは知っちゃあいるが…、今は未だ勝てる相手じゃねぇからな。無茶すんなよ。」

と、戒めた。

狼の獣人であるフーリィが、

「いつ、つんだい?」

と尋ねたところ、

「予定は一ヶ月後だ。」

と、返したセルグが、その場を去りながら、

「じゃ、ソイツラが死なねぇ程度には鍛えてやるんだな。」

と後ろ向きで右手を振る。

千代が、

「あの人の言うとおりだ。」
「紫蓮、神を目の当たりにしても、暴走しないように。」

と、念を押したところ、

「あ、ああ…。分かって、る、さ…。」

と口を濁した紫蓮に、狸の獣人である金時が、

「もし、そうなったら、気絶させてでも君を止めるよ。」

と、険しい表情になった。

これに、紫蓮が、

「現時点で倒せないんだったら、命は無駄にしねぇさッ。」
「挑むのは、もっと強くなってからだッ!」

と宣誓する。

南から初夏の風が吹いてくるなか、フーリィが、

「それじゃあ、出陣までの間、みっちり稽古つけてやるから、覚悟すんだよ、アンタたち!」

と、気合を入れ直すのだった―。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄していただき、誠にありがとうございます!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,319pt お気に入り:1,882

許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,856pt お気に入り:3,626

ここはあなたの家ではありません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:66,008pt お気に入り:2,038

王女殿下に婚約破棄された、捨てられ悪役令息を拾ったら溺愛されまして。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:24,844pt お気に入り:7,100

不死王はスローライフを希望します

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:47,067pt お気に入り:17,481

離縁するので構いません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:71,640pt お気に入り:777

令嬢はまったりをご所望。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,842pt お気に入り:21,426

処理中です...