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― 第二章・それぞれの成長 ―
第39話 悲観と楽観と。
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あれから10日が経った。
北へと進軍する紫蓮らは、野営の際に必ず鍛錬している。
そこには、ラルたちの姿もあった。
敵の本拠地まで約5km程の距離で待機している軍勢の元に、放っていた斥候が戻ってきたようだ。
幕舎にて、総大将たる清虎が報告を受ける。
その内容は、「およそ10万の敵兵が南下しており、20分後には姿が見える模様」との事だった。
「ふむ。ならば、速やかに陣形を整えるとするかの。」
と述べる侍王に、60歳ぐらいの【騎士】が、
「やはり、御自ら、先陣に立たれるおつもりで?」
と、尋ねる。
オールバックにしている髪や、眉に、口周りの立派な髭は、白髪交じりだ。
老兵ではあるが、ガタイが良く、力が漲っている、というか、有り余っていそうな雰囲気だ。
領主に就任できるくらい申し分のない実績があるのだが…、
「肩書が大きくなればなるほど、自由が利かなくなるのが煩わしい。」
との理由で、中間管理職に留まっている。
清虎あたりが何度か説得を試みたものの、それ以上の出世は望まず、首を横に振り続けた男だ。
頑固者ではあるが、そういうところが逆に、侍王に気に入られ、信頼されるに至ったらしい。
「手筈どおり、最後尾は任せた。」
と、微笑む総帥に、その騎士が、
「はッ! 身命に変えましても。」
と頷く。
「お主たちも、左翼、右翼、それぞれに、頼んだぞ。」
と、清虎に声を掛けられた2人の女性が、
「はい。」
「お任せください。」
と各自、答えた。
一人は30代前半の【剣士】で、スカイブルーの髪を長めのボブにしている。
肌は白く、顔立ちは凛々しい。
彼女は、左翼軍を率いるようだ。
もう一人は30代後半の【騎士】で、銀髪をアフロにしており、男性にも引けを取らない筋肉質の肌は小麦色に日焼けしている。
ルックスは、“イケメン女子”といった感じだ。
こちらは右翼軍を采配する。
「では、行くとするかの。」
と、椅子から立つ侍王に続く3人であった。
午前09:30頃――。
双方の軍勢が、500Mぐらいの距離で睨み合っている。
北東から、
ヒュオオォォ…。
と吹きつける風が冷たい。
幾数もの軍旗が〝バタバタ〟と音を鳴らす。
中央の最前から三列目にて、
「はぁー。」
「やっぱ、何度やっても緊張するなぁ、戦ってやつはよ。」
と、口を開いたのは、保次だ。
「確かにね…。」
と同調したのはバンヌだった。
これに、ヴォニ―が、
「どうしたんだい?」
「珍しく、しおらしいじゃないか。」
と、目を丸くする。
「んー、上手く言えないけど…、なんか嫌な予感がするんだ。」
と不安そうなバンヌに、
「大丈夫だよ。」
「ほんの数日だけど、紫蓮くんたちと一緒に鍛錬したんだし。」
「今回も勝利して、生き残って、皆で美味しいご飯を食べよう!」
「あと、お酒も。」
と、ラルが笑顔で励ます。
保次が、
「ああ、その通りだ。」
「戦が終わったら乾杯しよう。」
「誰一人欠けることなく、全員でな!」
と告げた。
「うん、そうだね…。」
「そうなるように努めるよ。」
と、バンヌが意思表示する。
「戦闘が怖くても小便ちびるなよ。」
と茶化す保次に、
「そっちこそ!」
と、バンヌが返し、
「ハハハハハッ!」
と4人が楽しそうに笑う。
すぐそこまで、別れが近づいて来ているとは知らずに―。
北へと進軍する紫蓮らは、野営の際に必ず鍛錬している。
そこには、ラルたちの姿もあった。
敵の本拠地まで約5km程の距離で待機している軍勢の元に、放っていた斥候が戻ってきたようだ。
幕舎にて、総大将たる清虎が報告を受ける。
その内容は、「およそ10万の敵兵が南下しており、20分後には姿が見える模様」との事だった。
「ふむ。ならば、速やかに陣形を整えるとするかの。」
と述べる侍王に、60歳ぐらいの【騎士】が、
「やはり、御自ら、先陣に立たれるおつもりで?」
と、尋ねる。
オールバックにしている髪や、眉に、口周りの立派な髭は、白髪交じりだ。
老兵ではあるが、ガタイが良く、力が漲っている、というか、有り余っていそうな雰囲気だ。
領主に就任できるくらい申し分のない実績があるのだが…、
「肩書が大きくなればなるほど、自由が利かなくなるのが煩わしい。」
との理由で、中間管理職に留まっている。
清虎あたりが何度か説得を試みたものの、それ以上の出世は望まず、首を横に振り続けた男だ。
頑固者ではあるが、そういうところが逆に、侍王に気に入られ、信頼されるに至ったらしい。
「手筈どおり、最後尾は任せた。」
と、微笑む総帥に、その騎士が、
「はッ! 身命に変えましても。」
と頷く。
「お主たちも、左翼、右翼、それぞれに、頼んだぞ。」
と、清虎に声を掛けられた2人の女性が、
「はい。」
「お任せください。」
と各自、答えた。
一人は30代前半の【剣士】で、スカイブルーの髪を長めのボブにしている。
肌は白く、顔立ちは凛々しい。
彼女は、左翼軍を率いるようだ。
もう一人は30代後半の【騎士】で、銀髪をアフロにしており、男性にも引けを取らない筋肉質の肌は小麦色に日焼けしている。
ルックスは、“イケメン女子”といった感じだ。
こちらは右翼軍を采配する。
「では、行くとするかの。」
と、椅子から立つ侍王に続く3人であった。
午前09:30頃――。
双方の軍勢が、500Mぐらいの距離で睨み合っている。
北東から、
ヒュオオォォ…。
と吹きつける風が冷たい。
幾数もの軍旗が〝バタバタ〟と音を鳴らす。
中央の最前から三列目にて、
「はぁー。」
「やっぱ、何度やっても緊張するなぁ、戦ってやつはよ。」
と、口を開いたのは、保次だ。
「確かにね…。」
と同調したのはバンヌだった。
これに、ヴォニ―が、
「どうしたんだい?」
「珍しく、しおらしいじゃないか。」
と、目を丸くする。
「んー、上手く言えないけど…、なんか嫌な予感がするんだ。」
と不安そうなバンヌに、
「大丈夫だよ。」
「ほんの数日だけど、紫蓮くんたちと一緒に鍛錬したんだし。」
「今回も勝利して、生き残って、皆で美味しいご飯を食べよう!」
「あと、お酒も。」
と、ラルが笑顔で励ます。
保次が、
「ああ、その通りだ。」
「戦が終わったら乾杯しよう。」
「誰一人欠けることなく、全員でな!」
と告げた。
「うん、そうだね…。」
「そうなるように努めるよ。」
と、バンヌが意思表示する。
「戦闘が怖くても小便ちびるなよ。」
と茶化す保次に、
「そっちこそ!」
と、バンヌが返し、
「ハハハハハッ!」
と4人が楽しそうに笑う。
すぐそこまで、別れが近づいて来ているとは知らずに―。
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