GOD SLAYER’S

猫乃麗雅

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― 第五章・魔の領域 ―

第188話 悲愴・後編

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後方を確認して、

「なんてこった……。」

眉間にシワを寄せた【武士】の弥太郎やたろうに近づいた“一柱の男神”が[ラージソード]を振り上げる。

それに気づいた【騎士】のバウンが、

「危ない!!」

弥太郎へと〝ドス ドス〟走っていく。

「むッ?!」

体勢を整え直そうとする【武士】を、神が大剣で斬り付けてくる。

急ぎ、[刀]を横にして、

ガギィン!

ラージソードを受けた弥太郎ではあったが、バランスが悪かったようで、膝を地に着いてしまった。

ここを狙って、神がラージソードで突こうとしてくる。

躱せそうにない【武士】は、死を覚悟した。

しかし、ギリギリで割って入ったバウンが、

ガツンッ!!

盾で護ってくれたのである。

〝ほっ〟とした二人ではあったが、いつの間にか左側に詰めてきていた別の男神が繰り出した[槍]によて、

ズブシュ!

【騎士】が、首を貫かれた。

神が槍を抜いたところで、バウンが右へと倒れていく。

眼前の出来事に呆然とする弥太郎に、正面の神が大剣を払おうとする。

そこへ、15㎝大の[氷のつぶて]が50個ほど飛んでいき、男神の上半身にヒットした。

これはイザッドによる魔法だが、敵は甲冑に守られ傷を負ってはいない。

それでも、動きを止めることには成功したようだ。

「バウン?」
「おい……。」
「バウン!?」

親友の落命に戸惑う【武士】に、左横の神が[長槍]を叩きつけようとしてくる。

その右腹部に〝ズバン!!〟と、長さ3M×最大直径30㎝で先端の尖った[水の杭]が当たった。

どうやら、【武闘家】のラットが、右足を蹴り上げて発射したスキルらしい。

これによって、男神がグラつく。

「弥太郎!」
「今のうちに立って!!」

“兎の半獣”が後ろから呼び掛けるも、

「バウン。」
「…嘘だろ??」
「なぁ、おいって!」
「バウン!!」

本人の耳には届いていないみたいだ。

そんな弥太郎を、男神が[ラージソード]で刺そうと構える。

この胸元に、“魔法使いの老人”が最小幅5㎝×最大幅25㎝×長さ2.5Mの[風の渦]を放つ。

それ・・が直撃して、2~3歩ほど退がった神が、

「さっきから邪魔ばかりしおって。」
「人間のジジィめが……。」

宙に浮きつつ、

「まずは、お前から始末してくれようぞ!」

怒りを露わにし、イザッドへと向かう。

一方、別の男神は、槍を下から振るって、【武士】を攻撃しようとしていた。

“魔法使い“と“武士”の間に位置するラットは、

「あ、え?」
「ちょっと…。」

どっちの救援に行くべきか、判断に迷っている。

[長槍]が弥太郎に迫るなか、この神へと、最大幅25㎝×長さ2.5Mで三日月状の【火炎の刃】が発射された。

ラーザが、戦士用の大剣にて、[武器伝導]を扱ったみたいだ。

彼女や、【忍者】の秀嗣ひでつぐなどは、群がってきていた30人程の敵兵を殲滅し、ようやく自由になったらしい。

ともあれ、“赤髪の女戦士”によるスキルを、上体にくらった男神が、〝ボゥッ!!〟と燃える。

「しっかりするんだ!」
「弥太郎!!」

右側からラーザに一喝された【武士】が、〝ハッ!〟と我に返った。

そこへ、

「ぐおッ!!」

との“老体の魔法使い”の声が聞こえてきたのである。

“赤髪の戦士”らが視線を送ったところ、右斜め上から斬られたイザッドが、うつ伏せに倒れていってた。

「爺さ」と言いかけたラーザは、仲間の半数ぐらいが亡くなっている事を初めて知り、絶句したのである。

つるぎの神”が反転し、“槍の神”を包んでいた炎が消えるなか、立ち上がった弥太郎が、

「ラットに、秀嗣。」
「ラーザを連れて逃げろ。」

副団長として指示を出す。

「な?!」
「冗談じゃないぞ、弥太郎!」

抗議しようとするラーザに、

「いいから、この場は俺に従え!!」
「……、悔しいが、俺達じゃアイツらには勝てねぇ。」
「ここで全員くたばっちまう可能性が高い。」
「ラーザ…、団長のお前が生き長らえさえすれば、何度でもやり直せるだろ。」

このように述べる弥太郎の近くに、パーティーメンバーが集まって来る。

“二柱の神”は、隙を窺っていた。

「新しい“鮮紅せんこうの豹一団”を、あっち・・・で楽しみにしているぞ。」

〝フ〟と笑みを零した【武士】が、【武闘家】と【忍者】に、

「頼んぞ。」

そう伝える流れで、

「残りは俺と共に戦え!」
「命を懸けるぞ!!」

周囲に告げたのである。

ラット&秀嗣に両脇を挟まれて、連れて行かれようとする団長が、

「離してくれ!」
「皆を置き去りにするわけにはいかない!!」
「“あの世”とやらが存在しているのならば、ボクも一緒に旅立つ!」

子供みたいに駄々を捏ねた。

この間にクール(リキャスト)タイムを終えた神どもが、改めて直径3Mの魔法陣を構築していく。

“スキル”や“魔法”を使い果たしている[鮮紅の豹一団]は、まだクールタイムが済んでいない。

味方が全滅しかねない状況で、“兎の半獣”と“忍者”に引きずられるかのようになっているラーザの、

「嫌だ!!」
「嫌だ、嫌だ、嫌だ!」
「ボクが戦っちゃいけないんだったら、皆も退避しろぉおッ!!」

といった悲痛な叫びが響き渡ったのである―。
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