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ここは取締組です 第1話
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鬼の彼に連れられて来たのは、瓦屋根の立派なお屋敷であった。新築とまではいかないものの、手入れがよく行き届いているようで、生け垣はきっちりと刈られており、落ち葉の一枚も落ちていない。そして大きな門には、『取締組』と書かれている。
「さっ、桜谷隊長っ!お疲れ様です!」
「おう。ご苦労さん。」
門番らしき鬼が私をおぶる彼に挨拶をする。おそらく、彼よりは下の役職なのだろう。心なしか、彼の登場に怯えているようだ。
門番の鬼は、私を見て何か言いたげな様子であったが、桜谷隊長と呼ばれた彼の顔を見て口を閉ざしてしまった。
「さ、こっからは自分で歩き。」
「あの、本当にありがとうございました。えっと、お名前は……桜谷さんでよろしいですか?」
「おう。桜谷劉紀、邏卒九番隊の隊長や。」
邏卒ってなんだろう、この門構えと服からして、現代でいう警察みたいなものだろうか。
てゆうか鬼が警察!?鬼って悪役のイメージなんだけど、この世界の基準が分からない……。
廊下を歩く間も、他の隊士らしき鬼が廊下をすれ違うたびに、桜谷さんに怯えながら挨拶をしていく。
もしかして、この人とっても偉い人なんじゃ……と考えていると、桜谷さんはある部屋の前で止まった。
「京ちゃんおる~?」
桜谷さんが障子越しに声をかける。なんともまぁ、気が抜けた掛け声だ。
「……劉紀か。入れ。」
障子をスパンと開ける桜谷さんの脇から、部屋を覗くと、またえらい男前の鬼さんが、筆を持ち何かを記入しているところであった。
「なっ!劉紀!その娘は誰だ!」
京ちゃんと呼ばれた男前の鬼は、私を見て眉間に深く皴を寄せる。まぁ、突然知らない女が自分の部屋に入ってきたら、そうなりますとも。
「……つまり、劉紀が見回りをしていたら、突然その身元不詳の娘が出てきたと。そしてその娘の……桃子、君がいうには、自分のいた世界とは違う世界に急に飛ばされてきてしまったと、そういうことか?」
「はい!そういうことです!」
私は、全力でうんうんと頷く。目の前の京ちゃんという鬼は、かなり冷静で知的な印象を受ける。私だったら、こんな信じられない話を聞いて冷静にいられないなぁ。きっと。
「にわかには信じがたいが……。劉紀の悪ふざけではなかろうな?」
「こんなつまらん嘘つかんわい。……確かに、俺の目の前に突然現れたんや。それにこの、けったいな恰好。京ちゃんも見たことあらんやろ?」
「まぁ、たしかに……。我々の持つ知識では、君の話を信じる以外ないな……かといって、君をこのまま野放しにすることはできんだろう。……悪いが、総長にも話をさせてもらうぞ。」
やはり、大事になってしまいそうだ。この鬼さんは、神楽京也さんと言って、なんと邏卒副総長らしい。鬼の寿命は知らないが、若く見えるのにエリートなんだろうなぁと感心する。
桜谷さんとは、ファーストネームで呼び合ってるし、おそらく仲もいいのだろう。
「さっ、桜谷隊長っ!お疲れ様です!」
「おう。ご苦労さん。」
門番らしき鬼が私をおぶる彼に挨拶をする。おそらく、彼よりは下の役職なのだろう。心なしか、彼の登場に怯えているようだ。
門番の鬼は、私を見て何か言いたげな様子であったが、桜谷隊長と呼ばれた彼の顔を見て口を閉ざしてしまった。
「さ、こっからは自分で歩き。」
「あの、本当にありがとうございました。えっと、お名前は……桜谷さんでよろしいですか?」
「おう。桜谷劉紀、邏卒九番隊の隊長や。」
邏卒ってなんだろう、この門構えと服からして、現代でいう警察みたいなものだろうか。
てゆうか鬼が警察!?鬼って悪役のイメージなんだけど、この世界の基準が分からない……。
廊下を歩く間も、他の隊士らしき鬼が廊下をすれ違うたびに、桜谷さんに怯えながら挨拶をしていく。
もしかして、この人とっても偉い人なんじゃ……と考えていると、桜谷さんはある部屋の前で止まった。
「京ちゃんおる~?」
桜谷さんが障子越しに声をかける。なんともまぁ、気が抜けた掛け声だ。
「……劉紀か。入れ。」
障子をスパンと開ける桜谷さんの脇から、部屋を覗くと、またえらい男前の鬼さんが、筆を持ち何かを記入しているところであった。
「なっ!劉紀!その娘は誰だ!」
京ちゃんと呼ばれた男前の鬼は、私を見て眉間に深く皴を寄せる。まぁ、突然知らない女が自分の部屋に入ってきたら、そうなりますとも。
「……つまり、劉紀が見回りをしていたら、突然その身元不詳の娘が出てきたと。そしてその娘の……桃子、君がいうには、自分のいた世界とは違う世界に急に飛ばされてきてしまったと、そういうことか?」
「はい!そういうことです!」
私は、全力でうんうんと頷く。目の前の京ちゃんという鬼は、かなり冷静で知的な印象を受ける。私だったら、こんな信じられない話を聞いて冷静にいられないなぁ。きっと。
「にわかには信じがたいが……。劉紀の悪ふざけではなかろうな?」
「こんなつまらん嘘つかんわい。……確かに、俺の目の前に突然現れたんや。それにこの、けったいな恰好。京ちゃんも見たことあらんやろ?」
「まぁ、たしかに……。我々の持つ知識では、君の話を信じる以外ないな……かといって、君をこのまま野放しにすることはできんだろう。……悪いが、総長にも話をさせてもらうぞ。」
やはり、大事になってしまいそうだ。この鬼さんは、神楽京也さんと言って、なんと邏卒副総長らしい。鬼の寿命は知らないが、若く見えるのにエリートなんだろうなぁと感心する。
桜谷さんとは、ファーストネームで呼び合ってるし、おそらく仲もいいのだろう。
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