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幼少期
11 アドリアンネの思い
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シェーノからのまさかの言葉に、アドリアンネは動揺を隠せなかった。
アドリアンネにできたのは、小刻みに首を横に振ることだけ。
(好きとか、そんな風に思うほど付き合いもないし、婚約者とはいえ、家柄的に不釣り合いだといまだに思ってるし、そんな感情を向けられないわ……)
そもそも、セルネスのほうがどう思っているのか、アドリアンネにはわからない。
魅力的と言われたことがあるが、あれは、自分のことを好意的に思っているから言っていたのか、お世辞なのか。
アドリアンネにはなんとなくわかっている。
あれはーー本心だ。
(どの辺りで魅力的だと思われたの?話さない令嬢が新鮮だからかしら?)
アドリアンネ以外に、話さない令嬢など、おそらくはいない。
ならば、普通とは違う令嬢として、セルネスには魅力的に映った。そう考えるのが妥当だった。
(私に異性としての好意を向けてくる男性なんて、いないだろうしね……)
そう思うと、気持ちが沈んでしまう。
アドリアンネも年頃の女の子なので、愛されたい気持ちがないわけではなかった。
『そういうシェーノさんは、好きな殿方はおられなかったのですか?』
仕返しとばかりに聞いてみると、シェーノは顔をリンゴのように真っ赤にした。
「わ、わ、わたしは……」
そこまで言うと、なぜか言い淀む。
『どうしたのですか?』
アドリアンネがそう聞いてみても、黙っているだけだった。
「いちおう……います」
もう熱でもあるのではないかと疑ってしまうくらいに真っ赤になったシェーノから飛び出た言葉は、それだけだった。
そして、これは本当のことだと、アドリアンネはすぐわかった。
(誰かしら?貴族ではないわよね?社交界には出ていないはずなのだし……)
いくら分家とは言え、引き取ることができたのであれば、シェーノたちの家はそこまで家柄が高くないはずだ。
そうなると、社交界などにも出ていないに違いない。そうなると、考えられるのは平民だ。
(もし、その平民との恋を叶えたいのであれば、出家するしかないけど、簡単な道ではないわ……)
貴族から平民となった。
それだけで、貴族だけでなく、平民からも異端の目で見られる可能性がある。
わざわざ裕福な暮らしから抜け出したいと感じる者はほとんどおらず、貴族から平民となったということは、家を追い出されたと捉える人が多い。
家を追い出されるということは、何かそれだけの粗相をしたということなので、平民としては関わりたくない。
話し相手がシエナしかいなかったアドリアンネは、すべてとはいかなくても、ある程度平民の暮らしは知っていた。
平民は、助け合わねば生きていくことは難しいのだと。だから、なるべく嫌われないように付き合わなければいけないと教わった。
当時のアドリアンネは、平民も貴族もあまり変わらないのかと単純に思っていただけだったが、今ならわかる。
きっと、平民は貴族なんかよりも繋がりが強い。
そうでなければ、反乱なんて言葉はとっくに廃れている。心を一つにできるから、反乱なんて起こせて、それを成功させたこともある。
そんな繋がりを向こうから断ち切られたら、本当の意味で一人で暮らさなければならない。
それは、ある意味死よりも残酷なことであるように感じる。
(だから、貴族への処罰に平民落ちなんてものがあるのでしょうね……)
何も知らない貴族からすれば、そんなのは甘すぎるから撤廃するべきという声もあるが、下手をすれば死刑よりも厳しいような気がしている。
「……姉さま?静かにしてどうしたの?」
シェーノの言葉で現実に引き戻されたアドリアンネは、首を横に振り、すぐに紙を見せる。
『なんでもありません』
「……なんか、姉さまって、兄さまに似てる」
唐突な似ている発言にアドリアンネは首をかしげる。
「兄さまもね、ぜんぜん話さないの。必要最低限って言うの?それくらいしか」
そう言われて、アドリアンネは、挨拶をしたときのことを思い出す。
確かに、最初は自分の名前だけを話して、とくに何も話さなかった。
姉と呼んでほしいと言ってから、少し動揺していたものの、やはり姉上さまとだけしか言っていない。
(話さないと話せないは違うと思うけどね)
話さないのは、それ以上話すことに必要を感じていないから。言葉にできないのではなく、言葉にしないだけ。
話せないというのは、必要不必要関係なく、まず言葉にできない。
『私の場合は筆話だから、多く文字を書こうとすると、それだけ相手を待たせてしまうんです』
文字を一文字書くだけでも、一秒近くはかかる。
それが二文字、三文字と増えていくと、それだけ書くのに時間はかかってしまう。
ずっと筆話でやってきているので、文字を書くのは速いほうだが、それでも時間を使う。
言葉は、話せばいいので、そこまで沈黙の時間は長くない。
(本当に、なんで私がセルネス殿下の婚約者になれたのかしら……)
そして、何かしらの理由で魅力的に映っている。
アドリアンネは、まったく理由がわからなかった。
(とりあえず、生誕パーティーのときに聞いてみようかしら……)
図らずも、セルネスと同じことを考えているのを、このときのアドリアンネは知るよしもなかった。
アドリアンネにできたのは、小刻みに首を横に振ることだけ。
(好きとか、そんな風に思うほど付き合いもないし、婚約者とはいえ、家柄的に不釣り合いだといまだに思ってるし、そんな感情を向けられないわ……)
そもそも、セルネスのほうがどう思っているのか、アドリアンネにはわからない。
魅力的と言われたことがあるが、あれは、自分のことを好意的に思っているから言っていたのか、お世辞なのか。
アドリアンネにはなんとなくわかっている。
あれはーー本心だ。
(どの辺りで魅力的だと思われたの?話さない令嬢が新鮮だからかしら?)
アドリアンネ以外に、話さない令嬢など、おそらくはいない。
ならば、普通とは違う令嬢として、セルネスには魅力的に映った。そう考えるのが妥当だった。
(私に異性としての好意を向けてくる男性なんて、いないだろうしね……)
そう思うと、気持ちが沈んでしまう。
アドリアンネも年頃の女の子なので、愛されたい気持ちがないわけではなかった。
『そういうシェーノさんは、好きな殿方はおられなかったのですか?』
仕返しとばかりに聞いてみると、シェーノは顔をリンゴのように真っ赤にした。
「わ、わ、わたしは……」
そこまで言うと、なぜか言い淀む。
『どうしたのですか?』
アドリアンネがそう聞いてみても、黙っているだけだった。
「いちおう……います」
もう熱でもあるのではないかと疑ってしまうくらいに真っ赤になったシェーノから飛び出た言葉は、それだけだった。
そして、これは本当のことだと、アドリアンネはすぐわかった。
(誰かしら?貴族ではないわよね?社交界には出ていないはずなのだし……)
いくら分家とは言え、引き取ることができたのであれば、シェーノたちの家はそこまで家柄が高くないはずだ。
そうなると、社交界などにも出ていないに違いない。そうなると、考えられるのは平民だ。
(もし、その平民との恋を叶えたいのであれば、出家するしかないけど、簡単な道ではないわ……)
貴族から平民となった。
それだけで、貴族だけでなく、平民からも異端の目で見られる可能性がある。
わざわざ裕福な暮らしから抜け出したいと感じる者はほとんどおらず、貴族から平民となったということは、家を追い出されたと捉える人が多い。
家を追い出されるということは、何かそれだけの粗相をしたということなので、平民としては関わりたくない。
話し相手がシエナしかいなかったアドリアンネは、すべてとはいかなくても、ある程度平民の暮らしは知っていた。
平民は、助け合わねば生きていくことは難しいのだと。だから、なるべく嫌われないように付き合わなければいけないと教わった。
当時のアドリアンネは、平民も貴族もあまり変わらないのかと単純に思っていただけだったが、今ならわかる。
きっと、平民は貴族なんかよりも繋がりが強い。
そうでなければ、反乱なんて言葉はとっくに廃れている。心を一つにできるから、反乱なんて起こせて、それを成功させたこともある。
そんな繋がりを向こうから断ち切られたら、本当の意味で一人で暮らさなければならない。
それは、ある意味死よりも残酷なことであるように感じる。
(だから、貴族への処罰に平民落ちなんてものがあるのでしょうね……)
何も知らない貴族からすれば、そんなのは甘すぎるから撤廃するべきという声もあるが、下手をすれば死刑よりも厳しいような気がしている。
「……姉さま?静かにしてどうしたの?」
シェーノの言葉で現実に引き戻されたアドリアンネは、首を横に振り、すぐに紙を見せる。
『なんでもありません』
「……なんか、姉さまって、兄さまに似てる」
唐突な似ている発言にアドリアンネは首をかしげる。
「兄さまもね、ぜんぜん話さないの。必要最低限って言うの?それくらいしか」
そう言われて、アドリアンネは、挨拶をしたときのことを思い出す。
確かに、最初は自分の名前だけを話して、とくに何も話さなかった。
姉と呼んでほしいと言ってから、少し動揺していたものの、やはり姉上さまとだけしか言っていない。
(話さないと話せないは違うと思うけどね)
話さないのは、それ以上話すことに必要を感じていないから。言葉にできないのではなく、言葉にしないだけ。
話せないというのは、必要不必要関係なく、まず言葉にできない。
『私の場合は筆話だから、多く文字を書こうとすると、それだけ相手を待たせてしまうんです』
文字を一文字書くだけでも、一秒近くはかかる。
それが二文字、三文字と増えていくと、それだけ書くのに時間はかかってしまう。
ずっと筆話でやってきているので、文字を書くのは速いほうだが、それでも時間を使う。
言葉は、話せばいいので、そこまで沈黙の時間は長くない。
(本当に、なんで私がセルネス殿下の婚約者になれたのかしら……)
そして、何かしらの理由で魅力的に映っている。
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