蒼い月 -ペンダントの力-

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夢の中へ

夢の境

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夏の終わりを告げる蝉の声が、まだ残暑の熱気とともに寮の窓から入り込んでいた。
試験が終わってからの一か月、智己は恐ろしいほど大胆になっていた。

「拓也出てるぞ」とドアを鳴らすたび、拓也は部屋に1人きりだと信じ込み、自慰を始める。
胸筋を弄り、乳首に声をあげ、腰をひねりながら「ああ……もっと」と喘ぐ姿を、智己はそれを観察した。
夜ごと繰り返される光景は、智己に強烈な昂ぶりと背徳を与え続けた。

だが――それでも足りなかった。
(俺は……覗くだけじゃ満たされない。拓也の本音を、この目で、この耳で、もっと深く引き出したい)

その欲望が臨界に達したのは、8月下旬の蒸し暑い夜。
共通の部屋で汗を拭きながらノートをまとめていた拓也に、智己は声をかけた。

「なあ、拓也。ちょっとこれ、見てくれ」

シャツの下から取り出したのは、例のペンダントだった。
蛍光灯の光を受け、揺れる石が細い鎖ごと小さく弧を描く。

「なんだよ、それ」
拓也は苦笑しながら目を向け――そのまま視線を逸らせなくなった。
瞳は石に吸い込まれるように揺れ、瞬きが減っていく。

智己は揺れを大きくし、低い声で囁いた。
「拓也……目を逸らすな。そのまま見ていると、体の力が抜ける。呼吸が深くなる。心が軽くなる」

拓也の肩がゆっくりと落ち、机に置いた手がだらりと弛緩する。

「そうだ……いいぞ。お前は俺の声だけを聞く。俺の言葉は自然に受け入れられる。疑問も違和感もない。当たり前だと思える」

拓也の唇がわずかに動いた。
「……当たり前……」

智己は胸の高鳴りを抑えきれず、さらに言葉を重ねる。

「これまでの暗示、覚えてるな。」

智己は深く息を吐き、いよいよ新しいルールを与えた。

「ここからが新しい暗示だ。よく聞いて。」

ペンダントをさらに揺らし、言葉を刻み込む。

「俺が『拓也、おやすみ』と言ったとき――その後に起きることはすべて“夢”になる。お前は夢を見ていると思う」
「……夢……」

「夢の中では、俺の言葉や提案は自然に採用される。抵抗はない。タブーもない。だから自由に行動できる。感じたこと、思ったことは、そのまま言葉になる」

「……自由に……採用する……」

「現実と同じように、俺に対しては素直で包み隠せない。夢だから、さらに一歩踏み込める」

拓也の瞳が虚ろに揺れ、穏やかな笑みを浮かべる。

「そして――俺が『拓也、おはよう』と言ったら夢は終わる。そこから覚めて、すべて夢だったと思う。」

「……おはようで、目覚める……」

智己はペンダントを胸元にしまい、肩を軽く叩いた。
「よし……もう目を開けろ。普通に戻っていい」

拓也はまばたきをして、首を振る。
「……なんか、ぼーっとしてたな。寝落ちしたか?」
「いや、ちょっと休んでただけだ」智己は平然を装う。

一呼吸置いて――智己は拓也を見据え、低く囁いた。
「拓也、お休み」

その言葉と同時に、拓也の瞳が揺らぎ、力が抜けた。
椅子の背にもたれかかり、深い呼吸を繰り返す。

(……作動した。これが“夢モード”だ)

智己の胸が熱く震える。
これまでの「一人きりの自慰」を観察する日々では足りなかった。
だがこれからは違う――拓也は“夢”の中で、智己とどんな関係も結べる。

拓也の声で、もっと本音を聞きたい。俺だけが知る拓也の欲望を、この“夢”の中で全部さらけ出させてやる

智己はその姿を見つめながら、唇を湿らせた。
「……さあ、最初の夢を見てもらおうか」
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