アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
228 / 635
第2章 幼年編

229 白銀の世界

しおりを挟む



26階層や27階層の秋の世界が嘘のようだ。

回廊を抜けた先の28階層は真っ白な雪の世界だった。
これ歩かなければ、見とれるくらいきれいな景色だ。
でも、歩かなければ先に行けない。


 「みんないい?行ける?」

 「「「大丈夫です」」」

 「でも真っ白でどこを歩いて行くか、俺わかんないです」

 「あっ僕もわからないです」

 「うん、私もぜんぜんわかんないです」

 「そうよね、ぱっと見じゃわからないよねー」

 「フッ、そうだよな。セーラ、ここから何か目印は見えないか?」

 「えーっと……キム先輩、木しか見えません」

 「そうだよな。でもそれが正解だ」

 「えっ?」

 「ここから1番近い木を目指して歩く。そしてそこからまた1番近い木を目指して歩く。この繰り返しで先に行けるんだ」

 「じゃあ夜は動けないんですね」

 「その通りだ。夜は野営になる。でも俺たちボル隊は幸せだぞ。この極寒の中、野営もアレクのおかげで野営食堂で寝られる」

おぉー、キム先輩が野営食堂って言ってくれたよ。

 「はい、俺に任せてください!」

 「フフッ」

 「でも僕たちはアレク君のおかげでいいんですけどブーリ隊の先輩たちはどうするんですか?」

 「雪を固めて洞を作るんだよ。中は意外に暖かいぞ。だが夜警は1人で最悪だがな」

28階層、29階層は白い地獄と言われる意味はこんなところから来てるんだな。
でも、ここをクリアして30階層に到達したら、50数年続く学園ダンジョンでも真ん中以上、上位の成績にはなるはずだからな。
やっぱり30階層までは行きたいよな。


 「さあ、わかったら出発よ。雪の中だからね、練習通りで行くよ」

 「「「はい」」」

雪中行軍の練習も学園でやってきた。
もちろん雪がないから、歩くだけなんだけどね。

雪をかき分けながら歩くから先頭が1番たいへんだ。1列で歩く最後が1番楽になる。楽とはいえ、最後尾にセーラを置くわけにはいかないから、セーラは4番めで固定。

他の4人が順番に先頭を歩く。ポーターのシャンク先輩が荷物を運ぶのは変わらないから、この2日間はシャンク先輩の負担はかなりのものになる。

 「いいんだよ。僕はこれまでアレク君にずっと助けられてきたからね。歩くくらいなんて事ないよ」

そう言ってシャンク先輩はニッコリと笑った。


キム先輩を先頭に歩き出した。
雪は新雪のふわふわの雪。
戦闘靴の上には「かんじき」も付けてるよ。
大きな格子の編みがけになったもの。
これで雪を踏みしめながら歩くんだ。

目標はここから100メルほど先の2本の大木。
100メルほどを体感で30分かけて。

2日間の雪中行軍が始まった。


――――――――――――――


いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:668pt お気に入り:186

甘い婚約~王子様は婚約者を甘やかしたい~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,066pt お気に入り:390

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,991pt お気に入り:3,015

処理中です...