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第2章 幼年編
229 白銀の世界
しおりを挟む26階層や27階層の秋の世界が嘘のようだ。
回廊を抜けた先の28階層は真っ白な雪の世界だった。
これ歩かなければ、見とれるくらいきれいな景色だ。
でも、歩かなければ先に行けない。
「みんないい?行ける?」
「「「大丈夫です」」」
「でも真っ白でどこを歩いて行くか、俺わかんないです」
「あっ僕もわからないです」
「うん、私もぜんぜんわかんないです」
「そうよね、ぱっと見じゃわからないよねー」
「フッ、そうだよな。セーラ、ここから何か目印は見えないか?」
「えーっと……キム先輩、木しか見えません」
「そうだよな。でもそれが正解だ」
「えっ?」
「ここから1番近い木を目指して歩く。そしてそこからまた1番近い木を目指して歩く。この繰り返しで先に行けるんだ」
「じゃあ夜は動けないんですね」
「その通りだ。夜は野営になる。でも俺たちボル隊は幸せだぞ。この極寒の中、野営もアレクのおかげで野営食堂で寝られる」
おぉー、キム先輩が野営食堂って言ってくれたよ。
「はい、俺に任せてください!」
「フフッ」
「でも僕たちはアレク君のおかげでいいんですけどブーリ隊の先輩たちはどうするんですか?」
「雪を固めて洞を作るんだよ。中は意外に暖かいぞ。だが夜警は1人で最悪だがな」
28階層、29階層は白い地獄と言われる意味はこんなところから来てるんだな。
でも、ここをクリアして30階層に到達したら、50数年続く学園ダンジョンでも真ん中以上、上位の成績にはなるはずだからな。
やっぱり30階層までは行きたいよな。
「さあ、わかったら出発よ。雪の中だからね、練習通りで行くよ」
「「「はい」」」
雪中行軍の練習も学園でやってきた。
もちろん雪がないから、歩くだけなんだけどね。
雪をかき分けながら歩くから先頭が1番たいへんだ。1列で歩く最後が1番楽になる。楽とはいえ、最後尾にセーラを置くわけにはいかないから、セーラは4番めで固定。
他の4人が順番に先頭を歩く。ポーターのシャンク先輩が荷物を運ぶのは変わらないから、この2日間はシャンク先輩の負担はかなりのものになる。
「いいんだよ。僕はこれまでアレク君にずっと助けられてきたからね。歩くくらいなんて事ないよ」
そう言ってシャンク先輩はニッコリと笑った。
キム先輩を先頭に歩き出した。
雪は新雪のふわふわの雪。
戦闘靴の上には「かんじき」も付けてるよ。
大きな格子の編みがけになったもの。
これで雪を踏みしめながら歩くんだ。
目標はここから100メルほど先の2本の大木。
100メルほどを体感で30分かけて。
2日間の雪中行軍が始まった。
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