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第2章 幼年編
298 鳥籠
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298 鳥籠
食後。
そのまま打合せ会議が始まった。ビリー先輩が小さなメモ帳片手に話し始める。
「次の44階層は1日の中で春夏秋冬の四季が変わるみたいだね。
魔獣や魔物もその四季に応じて変わるみたいだよ」
「それって1日の中でだろ?」
「そうだよ」
「1日で季節がそんなに変わるか?1階層ごとの間違いなんじゃねぇのか」
「ははは。オニールの言うこともよくわかるよ。でも僕たちがやることは先達の記録を大事にしてその上で臨機応変に進むべきじゃないかな」
「まあビリーが言うことに間違いはねぇからな」
「そういつもビリーは正しくてオニールは間違いなの」
「いつもかよ!」
「そうなの」
「まぁ‥俺もそう思うがな‥‥」
「素直なオニールは良い子なの」
よしよしと頭を撫でるリズ先輩にされるがまま嬉しそうにしているオニール先輩だった。
(まるで犬じゃんか!でも‥‥‥俺もマリー先輩に頭を撫でられたらされるがままだろうなあ。なんだったら仰向けで腹を撫でられたっていいぞ‥むふっ)
「ちょっとシルフィ、変態君がまた鼻の穴膨らましてるんですけど」
「ほっときゃいいのよシンディ。変態なんだから」
うん‥‥何も聞こえない聞こえない……。
「春は上からはスカラベーや蜻蛉、地面や木々の間からはアラクネが襲ってくるよ。
先輩の記録でも疲れたし、体調も悪くなっていったそうだね」
「たださえもう疲れてるのにか!」
「ああ。それでも頑張って進むしかないだろうね」
「「「‥‥」」」
過酷な道中は想像に余りあるくらいだ。すでにみんな疲労困憊なのに……。誰もが押し黙る。
「道中の野営が何泊になるのかわからないね。それと、途中で食べられる食事はまだあるかいシャンク君?」
「はい。僕が用意したのは『えなじーどりんく』と『なっつばー』6日分です」
「6日分もかい。ありがとうね」
「おおシャンクも料理人だぜ!」
「「「ありがとう」」」
「えへへ」
携帯食は材料とレシピをシャンク先輩に引き継ぎしたからな。しっかりと作ってくれたんだ。
「今年のパーティーはすごいよな。なにせ優秀な料理人が2人もいるんだからな」チラッ。
「ああ本当だよな。ありがたいことだ」チラッ。
「ギャハハ」チラッ。
「オニール、タイガー、ゲージ何か言いたいことあるの?」
「本当です!失礼ですよねーリズ先輩!」
「ん‥‥魔力がもったいないから許してあげるの」
「「「ほっ」」」
「痛い痛いリズ!セーラお前もだ!ギャハハ」
ガジガジガジガジガジガジガジ‥‥
そう言いながらゲージ先輩の尻尾をガジガジ噛んでいるリズ先輩とセーラだった……。
「43階層については以上だよ。みんな何かあるかい?」
「はい。記録どおりならリズ先輩とセーラは障壁が欠かせないはずですよね」
「そうだね。魔物の出現に応じて1日に何回か魔力を発現か‥‥。厳しいよね?」
「「ん(はい)」」
「で俺からの考えなんですけど‥‥」
リズ先輩とセーラをそれぞれのリアカーに乗せ「鳥籠」で囲む。そうしたら残ったチームは2人を気にせずに闘える。うまくいけば時間も短縮できるはずなんだ。
「アレク君できるのかい?そして2人ともそれで良いのかい?」
「「「ん(はい)」」」
元々体力面で不安の残る2人(リズ先輩が最初からリアカーに乗ってたとは知らなかったけど)を気にしなくて良くなれば進行速度も速くなる。まして2人の魔力を温存できたら万々歳だ。
「じゃあちょっと見た目悪いですけど『鳥籠』を作りますね」
「ん」
「よろしくねアレク」
――――――――――――――
翌朝は塩鮭の塩焼きとお粥だ。せめてお腹いっぱいと思いお代わりも多く用意したけど‥‥。
「あーやっぱりコメはうめえよなぁ」
「このおかゆもおいしいの。でもやっぱり食べたいのは‥」
「「「ごはん!」」」
異世界。異国の地で。金髪銀髪のイケメンイケ女に、心は日本人が刻まれたよ。
でも申し訳ないけど、残量を考えるともう節約レシピでいかなきゃならないんだ。そして俺は種籾として稲を絶対持ち帰るんだ。
▼
「じゃあみんな出発するよプッ」
「「「はいプッ、ククッ」」」
ボル隊、ブーリ隊のリアカーには人1人入る「鳥籠」が設置された。
通気性もよい金属製鳥籠の周囲をさらに土魔法の土壁で囲ったものだ。暑さ寒さを凌げるように土壁部分は中から手で開閉できる。
これならスカラベーや蜻蛉の攻撃でさえ充分耐えられる。
「ちょっとちょっとアレク君。もう少し見た目をなんとか出来なかったの?ククッ」
「ああなっちゃったんですよねククッ」
「アレク、あれはその‥アレだよなククッ」
「アレク君小さなころ僕を誘拐した悪い人たちもあれに入ってたよ」
そう、リアカーに載る「鳥籠」は処刑前の極悪人が閉じ込められた籠そっくりの見た目だった……。
「ねぇアレクなんでみんな笑ってるの?」
「ああ‥セーラがかわいいからだよ」
「かわいいって‥もう!」
誤解のうちに前へ進むボル隊だった。
「「「‥‥」」」
誰も何も話さない。
鳥籠の中から漂ってくる強烈な殺気と視線を見て見ぬフリをするブーリ隊だった。
――――――――――――――
長く続いた学園ダンジョン探索もそろそろ佳境へと入っていきます。
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食後。
そのまま打合せ会議が始まった。ビリー先輩が小さなメモ帳片手に話し始める。
「次の44階層は1日の中で春夏秋冬の四季が変わるみたいだね。
魔獣や魔物もその四季に応じて変わるみたいだよ」
「それって1日の中でだろ?」
「そうだよ」
「1日で季節がそんなに変わるか?1階層ごとの間違いなんじゃねぇのか」
「ははは。オニールの言うこともよくわかるよ。でも僕たちがやることは先達の記録を大事にしてその上で臨機応変に進むべきじゃないかな」
「まあビリーが言うことに間違いはねぇからな」
「そういつもビリーは正しくてオニールは間違いなの」
「いつもかよ!」
「そうなの」
「まぁ‥俺もそう思うがな‥‥」
「素直なオニールは良い子なの」
よしよしと頭を撫でるリズ先輩にされるがまま嬉しそうにしているオニール先輩だった。
(まるで犬じゃんか!でも‥‥‥俺もマリー先輩に頭を撫でられたらされるがままだろうなあ。なんだったら仰向けで腹を撫でられたっていいぞ‥むふっ)
「ちょっとシルフィ、変態君がまた鼻の穴膨らましてるんですけど」
「ほっときゃいいのよシンディ。変態なんだから」
うん‥‥何も聞こえない聞こえない……。
「春は上からはスカラベーや蜻蛉、地面や木々の間からはアラクネが襲ってくるよ。
先輩の記録でも疲れたし、体調も悪くなっていったそうだね」
「たださえもう疲れてるのにか!」
「ああ。それでも頑張って進むしかないだろうね」
「「「‥‥」」」
過酷な道中は想像に余りあるくらいだ。すでにみんな疲労困憊なのに……。誰もが押し黙る。
「道中の野営が何泊になるのかわからないね。それと、途中で食べられる食事はまだあるかいシャンク君?」
「はい。僕が用意したのは『えなじーどりんく』と『なっつばー』6日分です」
「6日分もかい。ありがとうね」
「おおシャンクも料理人だぜ!」
「「「ありがとう」」」
「えへへ」
携帯食は材料とレシピをシャンク先輩に引き継ぎしたからな。しっかりと作ってくれたんだ。
「今年のパーティーはすごいよな。なにせ優秀な料理人が2人もいるんだからな」チラッ。
「ああ本当だよな。ありがたいことだ」チラッ。
「ギャハハ」チラッ。
「オニール、タイガー、ゲージ何か言いたいことあるの?」
「本当です!失礼ですよねーリズ先輩!」
「ん‥‥魔力がもったいないから許してあげるの」
「「「ほっ」」」
「痛い痛いリズ!セーラお前もだ!ギャハハ」
ガジガジガジガジガジガジガジ‥‥
そう言いながらゲージ先輩の尻尾をガジガジ噛んでいるリズ先輩とセーラだった……。
「43階層については以上だよ。みんな何かあるかい?」
「はい。記録どおりならリズ先輩とセーラは障壁が欠かせないはずですよね」
「そうだね。魔物の出現に応じて1日に何回か魔力を発現か‥‥。厳しいよね?」
「「ん(はい)」」
「で俺からの考えなんですけど‥‥」
リズ先輩とセーラをそれぞれのリアカーに乗せ「鳥籠」で囲む。そうしたら残ったチームは2人を気にせずに闘える。うまくいけば時間も短縮できるはずなんだ。
「アレク君できるのかい?そして2人ともそれで良いのかい?」
「「「ん(はい)」」」
元々体力面で不安の残る2人(リズ先輩が最初からリアカーに乗ってたとは知らなかったけど)を気にしなくて良くなれば進行速度も速くなる。まして2人の魔力を温存できたら万々歳だ。
「じゃあちょっと見た目悪いですけど『鳥籠』を作りますね」
「ん」
「よろしくねアレク」
――――――――――――――
翌朝は塩鮭の塩焼きとお粥だ。せめてお腹いっぱいと思いお代わりも多く用意したけど‥‥。
「あーやっぱりコメはうめえよなぁ」
「このおかゆもおいしいの。でもやっぱり食べたいのは‥」
「「「ごはん!」」」
異世界。異国の地で。金髪銀髪のイケメンイケ女に、心は日本人が刻まれたよ。
でも申し訳ないけど、残量を考えるともう節約レシピでいかなきゃならないんだ。そして俺は種籾として稲を絶対持ち帰るんだ。
▼
「じゃあみんな出発するよプッ」
「「「はいプッ、ククッ」」」
ボル隊、ブーリ隊のリアカーには人1人入る「鳥籠」が設置された。
通気性もよい金属製鳥籠の周囲をさらに土魔法の土壁で囲ったものだ。暑さ寒さを凌げるように土壁部分は中から手で開閉できる。
これならスカラベーや蜻蛉の攻撃でさえ充分耐えられる。
「ちょっとちょっとアレク君。もう少し見た目をなんとか出来なかったの?ククッ」
「ああなっちゃったんですよねククッ」
「アレク、あれはその‥アレだよなククッ」
「アレク君小さなころ僕を誘拐した悪い人たちもあれに入ってたよ」
そう、リアカーに載る「鳥籠」は処刑前の極悪人が閉じ込められた籠そっくりの見た目だった……。
「ねぇアレクなんでみんな笑ってるの?」
「ああ‥セーラがかわいいからだよ」
「かわいいって‥もう!」
誤解のうちに前へ進むボル隊だった。
「「「‥‥」」」
誰も何も話さない。
鳥籠の中から漂ってくる強烈な殺気と視線を見て見ぬフリをするブーリ隊だった。
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長く続いた学園ダンジョン探索もそろそろ佳境へと入っていきます。
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