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第2章 幼年編
422 円卓No.1
しおりを挟むモンデール神父が口を開く。
「大樹とすべくヴィヨルドのサミュエルに託した苗木は自身の力でロジャーやタイラーとの知己を得て、尚且つ老師ともご縁を結ばせていただきました」
「ふむ」
「その上で申し上げます。苗木がヴィンランドの学園を卒業するまではこのまま育てたいと存じます」
「ふむ。ディルはどうじゃ?」
「モンデールに同じ。まだまだ修練が足りませぬ。年寄りの私の目が届かぬところでは幸い兄弟子のタイラーとロジャーがおりますれば」
「ふむ。ではナターシャはどうじゃ」
「はい。私もまだまだかと愚考致します。優し過ぎる苗木ゆえに。ただ私も目が届かぬところにはサミュエル学園長がおりますので」
「ふむふむ。ミカサはどうじゃ?」
「私も皆々様に同じです。ただ私も王都におります。
が普段は盟友のミョクマルがおりますれば細かな点はあの男が配慮してくれましょう」
「ふむ。賢い男ゆえミョクマルも気づいておろうな。
サンデーは?」
「経営者としてはまだまだ甘いですね」
「お主も手厳しいのお」
「はい。立派な婿殿になってもらえるかもしれませんからね」
「はっはっは。サミュエルは?」
「はい。モンデールから預かった苗木はまだまだ打たれ弱い幼木かと。よってこのまま大きく道を踏み外さぬ限りは見守りたく存じます」
「皆よう言うた。お主らの思い、このテンプルもしかと胸に刻もう。ではあらためて杯を。ここに集いし我ら7人苗木を大樹にするべく見守り続けよう。苗木の健やかなる成長を祈念して乾杯!」
「「「乾杯!」」」
「それでの。さっそくなんじゃがお主らに頼みがあるんじゃが‥」
「なんでしょう老師?」
「ほれ、あそこ。1番の円卓を見てみい」
「狐仮面様をお連れ致しました」
1番の円卓に連れて来させられた俺。なんかわかんないけどとりあえず挨拶だな。
「ええーっとようこそヴィヨルドへ。狐仮面です?」
(デカっ!何この人たち!?デカ過ぎだろ!)
「「「おおー狐仮面君」」」
「「君が‥‥」」
「「「(本当に狐くらい小さいな)」」
(そりゃおっさんたちがデカ過ぎだからだよ!)
ガハハハハハ
フフフフフフ
わははははは
(ど、ど、ど、どうしよう?また心の声が漏れてたのか!おっさんたちが怒る前に逃げよっかな?)
「心配せんといい。狐仮面君。何も取って食ったりはせんぞ」
白い軍服を着た1番大きな体格のおっさんが言ったんだ。なにこのおっさんの頬の刀疵。顔も怖いわ!
隣の軍服のおっさんも片腕だけど2人してなにこの威圧感!ロジャーのおっさんやタイランドのおっさんと変わんないじゃん!なんなんだよこの威圧感は!筋肉ダルマかよ!
「筋肉ダルマは何かわからんがそこの顔の怖いデカいおっさんの言うとおりだよ」
「ヒッ!」
大きさは白軍服のおっさんには負けるけどそれでも十分に大きくて、中国の宮廷の人みたいな服を着たおっさんが言った。
すげぇなぁ!このおっさん2人も。不気味なくらいすげぇ魔力だなあ。魔力の底がぜんぜん見えないや。今まで会った人の中で断トツの魔力保有量じゃね?
「こんなかわいい狐君だったらちょっとだけ食べてみたい気もするけどねフフフ」
エルフ族のきれいなお姉さんも言った。うん、めっちゃきれいな2人だなぁ。へへへ。
でも誰かに似てるよなぁ。
「児童虐待は女神様から天罰が下りますぞ。ワハハハハ」
神父様の格好の背の高いおっさんも言った。
魔力もあるけどこの眼光と静かな雰囲気はモンデール神父様に近いな。見た目に騙されそうだけどめちゃくちゃ強いよなこのおっさんも。
でもこのおっさんも誰かに似てるんだよなぁ。うーん?
でもさ。
なんだよ!この円卓のおっさんたちの圧倒的な強者オーラは!全員怖いわ!
でもエルフのお姉さんたちはめちゃくちゃきれいだけど。
「まっ。きれいだって。正直な狐君ねー。ねクリスティ」
「はい女王陛下」
ううっ?!
また心の声が漏れてるよ!
「フフフ。じゃあ狐仮面君に私たちの自己紹介をするわね」
エルフ族のお姉さんの目配せを受けておっさんたちが自己紹介をし出したんだ。
「ではワシらから」
そう言ったのは中原最大にして最強と謳われるロイズ帝国のアレクサンダー前皇帝陛下とその補佐役、前騎士団長ペイズリーさんだった。
「ロイズ帝国のアレクサンダーだ」
「ペイズリーだ」
眩しいくらい目にも鮮やか。汚れ1つない真っ白な制服はロイズ帝国軍人の正装だ。
そんな制服を着用し、頬に残る古い刀傷が印象的な前皇帝アレクサンダー陛下と隻腕ながらもどう見ても強いだろっていう歴戦の軍人然としたペイズリー前騎士団長。
ともに隠しようもない強者の存在感を全身から放っているよ。
「「よろしくな狐仮面君」」
「あ、こちらこそよろしくお願いします」
出される手に自然と握手を交わしたんだ。
あっ、2人ともゴツゴツして豆だらけの手だった。やっぱり努力し続けた人の手だ。
「なるほどのガハハハ」
「ええ大殿わはは」
ん?
「次は我らじゃな」
ダルク大国。通称魔導大国。中原屈指の魔法主導型の大国だ。その強さからロイズ帝国と合わせて中原の2強とも言われている。
レイモンド・ダルフォング皇帝と副官のユダ前宰相はともに1.8メル強。やっぱり高身長。中国の皇族が着るような深紅の民族衣装に身を包んでいる。
ロイズ帝国の2人がその身体に隠しようもない武力を体現しているとすればダルク大国の2人はえも言われぬ不気味さを漂わせてるんだよな。それは身体に纏う尋常ならざる魔力ゆえかな。
「ダルク大国のレイモンド・ダルフォングだ」
「副官のユダだ」
「「よろしくな狐仮面君」」
「よ、よろしくお願いします」
2人とも握手を交わした。
ん?柔らかな手にはゴツゴツしたものはないな。
「「これはこれは‥‥はははは」」
ん?さっきから何?
「次は私たちでいいかしら法皇?」
「ええもちろん。レディファーストですからな」
「フフフ。さっきのおじさん4人に聞かせてあげたいわね」
「女王様しーっ!」
「しっかり聞こえとるわ女狐め!」
「ほんにのぉ油断隙もあったものじゃないのぉ」
がはははは
ワハハハハ
2人の皇帝陛下が高笑いをしたんだ。
そして3番めに挨拶してくれたのは自治領エルファニア通称エルフの里の女王ネビュラ陛下とその従者クリスティさんである。
特徴的な尖った耳、ため息の出るくらいの美貌の女性2人。身長は1.8メルほど。長身のモデル然とした容姿。
ゆったりとした絹のロングドレス。目が覚めるような美しい銀髪を腰まで伸ばしたエルフ族の女王ネビュラ・エランドル陛下とその従者クリスティ・スカイさん。外観もよく似てるよなこの2人。
いったいいくつなんだろうな。エルフだから案外バ◯アだったりして。
「バ◯アとは初対面の女性に対して失礼だぞ狐仮面君」
「不敬なり狐仮面。この場で成敗してくれようぞ!」
「す、す、す、すいません。綺麗なお姉さんたち」
「「‥‥仕方ない(わね)」」
コワッ!でもチョロ!
やっぱ歳いってたんだ。わかんねぇー。ひょっとして子どもがいたりして。いやいやさすがにそれはないよな。
フフフフ
「いるわよ。この春まであなたにお世話になったマリーって子が」
ダッ!
ガバッッ!
その瞬間ジャンピング土下座をしていた俺だ。あのマリー先輩によく似た顔とエランドルの名前になぜ気づかない俺!
「ちなみに毎春ホークとも遊んでくれてるんだって?ホークは私の弟よ。あああと、狐仮面君が決勝で闘ったナダルはこのクリスティの弟よ」
「すいません。すいません。本当にすいません!マリー先輩には生命を救ってもらいました。ホーク師匠には毎年修行に付き合ってもらってます。ナダルには勝ってしまってすいません」
「まあ。素晴らしい土下座ね」
フフフフフ
ふふふふふ
「では最後に私たちじゃな」
汚れ1つを感じさせない真っ黒な司祭服。襟首のカラーと手首から覗くシャツの袖口のみ白い法国の正装を着たこの2人もまた1.8メル代後半の高身長。
カザール法国のハリー・ヴィクトリア法皇と若き司祭長ケビン・ナッシュである。
「ハリー・ヴィクトリアだ」
「ケビン・ナッシュだ」
「よろしくお願いします」
「ほぉーなるほどのぉ」
この2人もまた柔らかな手だった。ゴツゴツした手のハリー法皇とつるりとしたケビン司祭長。タイプのまるで異なる2人だなあ。
「狐仮面君にはいつも娘が世話になっているね」
ダッ!
ガバッッ!
「こ、こ、こちらこそセーラさんには生命を救ってもらったりお世話になっています。あっ、でも悪いことは誓ってしてません!背中を触ったくらいです。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「わははははは。娘の背中を触ったか。それは責任をとってもらわねばな」
「そ、そ、そ、それはもちろん、俺ができることならなんなりと‥‥」
「じゃああと5年仲良くしてやってくれ」
「そ、そんなことなら当然です。セーラは俺の大事な仲間ですから」
がははははは
わははははは
ふふふふふふ
「想像してたよりおもしろい子じゃのぉ狐仮面君は」
「「ほんにのぉ」」
「(天性の人たらしかもの)」
「(大殿も思いましたか)」
「さて美味いものを食べさせてもらったお礼を狐仮面君には言いたかったから席にまで来てもらったのよ」
「そうなんですね。マリー先輩のお母さん」
「何よ急に?!狐仮面君私だけ?!」
「へっ?だってマリー先輩のお母さんだから?」
「狐仮面君私はどう?」
「友だちのお姉さん?」
「そうよねフフフ」
「あークリスティ裏切ったわね!」
「いえ女王陛下。お母さんとお姉さん。事実は事実かと」
「キー!悔しーいっ!」
ガハハハハハ
フフフフフフ
わははははは
「さて狐仮面君には1つ質問があるわ。いいかしら?」
「はい。俺が答えられることならなんでも」
「じゃあさっそく」
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