アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

625 土魔法無双

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 「(よかったわ。あのうるさいオッサンが辞めてくれて)」

 「(そう言うなよ。ルシウスのおかげで最後にたくさん観客が集まってくれたんだからさ)」

 「(そうね)」

 「「(実はさ、これ俺らが主役じゃね?)」」

 「「「ワハハハハ。違いない!」」」





 魔法軍の広大な修練場。観客席には常時結界の魔石が機能しているため、観客は安心して修練の様子を見学できる。

 そんな修練場に、魔法軍本部所属の13人の若手魔法士と俺が対峙したんだ。

 「「「おいおい、まだまだどんどん観客が増えてるぞ」」」

 「「「ワハハハハ」」」

 「「「俺らの主役、確定だな」」」

 「「「おおよ!」」」


 当初の観客は、魔法軍に所属してる100人ほどだけだったんだけと‥‥どんどん増えてるよ。しかもなんで見知った顔ばかりなんだ?

 「「団長~!」」

 「「アレク~!」」

 あっ!子狸もいる!ゆっくり口を開けて俺になんか訴えてるぞ。なになに?

 (だんちょう  できるだけ  ゆっくり  じかんを  かけてください!)

 あ~また子狸、観客席で商売始める気だな。

 「おいガキ。今さら泣き言いっても通らねぇからな」

 「「「そうだぞ、ワハハハハ」」」

 「フン。いいかアリサ。陰に隠れて文句言うようなヘタレにはなるなよ。文句言うなら堂々と言えよ。
 それに応えない奴は本物のヘタレだからな」

 「?」

 「まぁこいつらみたいなヘタレにはなるなってことだ」

 「お兄ちゃん‥‥」

 そんな空気も読まずに、もう1人のバカがアリサに声をかけたんだ。

 「君かわいいね。あんなお兄ちゃんほっといて僕と一緒に‥」

 ズズッ!

 「うわあぁぁ!」

 途端に転ける若い男。立っていられないように足場を緩くしてやったんだ。

 「てめーもか!おいヘタレども。誰が大事な妹に触っていいと言ったよ」

 「コイツ‥‥人が下手にでてりゃ調子に乗りやがって!」

 「なんだ?指導してくれんのかヘタレ?」

 「なに?!」

 「お前らヘタレは何かって言うと指導って名前付けて集団で弱いものイジメができるって思ってるだろ?」

 「「「何をー!」」」

 「まあいっか。今も指導って名前のイジメをする気なんだろ。人数も増えたしな」

 「ホッホッホ。イジメじゃないわよ。これが魔法軍の愛ある指導よ」

 「だから言ってるじゃん。お前ら指導って名前付けてるだけだって」

 「ち、違うわよ!なにを言ってるのかしら」

 「でもよ、俺ら魔法軍13人じゃあ、さすがにガキがかわいそうだな」

 「「「違いねぇ。ワハハハハ」」」

 「ヘタレ君、足んないぞ。せめて30人くらいは連れて来いよ」

 「「なにをー!調子に乗るなガキ!」」

 「「「そうだそうだ!」」」

 「お前らこそ調子に乗ってんだよ!」

 「ガキが!口だけは達者だな」

 「フッ。でもな、ヘタレ君たち、お客さんもいっぱいいるぞ?
 みんながたくさん観てるからな。お前ら負けたらどうなるか、わかってるよな。クックック‥‥」

 やった、やった!言いたかったセリフあるある!  
 ぜったい悪役感出てたよ。俺、闇の仕事人だよ!

 「出てねーよ!ただの変態感しかよ!」

 「酷い!シルフィさん酷い!」




 「審判はルシウスのおっさんにしてもらうからな」

 「「「なんだと?!」」」

 「(まさかあのオヤジ、わざとウチらを負けにするんじゃない?)」

 「(このガキ、きっとルシウスに金渡してるんだぜ)」

 「(そうよ、そうに決まってるわ!)」

 「「「(汚ねぇガキだ!)」」」

 「お前ら本当に魔法軍か?やっぱ魔法軍の見習いだろ?
 1人じゃなんもできねぇくせしやがって」

 「「「なんだと?」」」

 「いいかヘタレども。てめーらの団長は誰がなんと言おうが帝国1の火魔法使いなんだよ。
 てめーらはバカだよ。こんなすごい魔法使いの知識、技術をちゃんと受け継がなくて。
 まあいい。これからは俺の妹がルシウスのおっさんの知識、技術を受け継ぐからな。
 みてろ。10年経たずに帝国1の火魔法使いは俺の妹になるからな」

 「「プッ」」

 「「冗談!」」

 「「馬鹿じゃないこの子」」

 「「本気で魔法軍の僕らに勝てる気でいるのかよ?」」

 「「「ウケる!」」」

 わははははは
 フフフフフフ
 ワハハハハハ

 「ガキ、手足無くなっても知らねえからな!」

 「火だるまにしてやるわ!」

 「クックック。吠えろ吠えろヘタレの小虫どもめ!」

 「「「許さん!」」」

 「吠えろ弱虫め。お前らがバカにする土魔法の怖さを身体で味わわせてやる」

 「「なに言ってるんだ、ガキめ!
 いいか火や風、水の前には土なんてへみたいなもんなんだぞ!」」

 「「「そうだそうだ!」」」

 「土?はぁー?夢見てるんじゃないわよ!」

 「準備はいいな」

 「「「いつでもいいぞバカめ!」」」






 「ルシウスのおっさん、めちゃくちゃゆっくり数えてくれよー」

 「よし、わかったアレクよ。
 それでは始まるぞ。魔法軍若手13人対帝都学園3年生アレクの勝負 始め!」

 20メル離れて。13人と向き合った。

 「よろしくお願いします!」

 「「「‥‥」」」

 やっぱり。こういう奴らは挨拶ができないんだよな。
 

 









 



 「いーーーち、にーーーい‥‥」

 ルシウスのおっさんがカウントを取り始めた。

 13人か。うん、ぜんぜん問題ない。火魔法が6人風魔法が5人、水魔法が2人。内2人が火と風のダブル。
 とりあえず様子みがてら、最初の10カウントは逃げようかな。

 「ここに火の球を浮かびあがらせ、汝の敵を撃ち滅ぼすものなり。ファイアボール!」

 「ここに風の刃を浮かびあがらせ、汝の敵を撃ち滅ぼすものなり。エアカッター!」

 「ここに水の弾を浮かびあがらせ、汝の敵を撃ち滅ぼすものなり。ウォーターボール!」

 シュッ!

 シュッ!

 シュッ!

 全員が杖を構えて、ブツブツと予備の詠唱を唱えてから、大きな声を張りあげている。

























 「‥‥」

 「‥‥」

 「「シルフィ(アレク)なんか言ってよ!」」

 「遅っ!?」

 マジかよ。遅すぎる!歩きながら避けれるわ!
 しかもバカしゃねぇか。各自が連携もなく自由に発現してる。
 まさか魔法軍ではこんなこと教えてんのかよ?

 「バカか。こやつらは‥‥」

 「師匠‥‥」

 「アリサ!」

 天を仰ぐルシウスのおっさんの横にいるアリサに、意味がわかるか?とアイコンタクトしたんだ。

 コクコク

 ヨシ。さすがは俺の妹だ。

 拡声魔法機を借りた俺は話をし始めたんだ。模擬戦とはいえ、戦闘中であるにもかかわらずにね。


 「お前ら、なぜ協力しない?そんなことも学んでないのか!
 背中預けるって意味もわかってないのかよ!」

 「くそっ!
 ここに火の球を浮かびあがらせ、汝の敵を撃ち滅ぼすものなり。ファイアボール!」

 シュッ!

 拡声魔法機で喋りながら軽く避けていく。

 「お前らみんなは、俺が俺が、私が私が自分が目立つことだけ考えてるよな。
 でもそれじゃ魔法軍、軍団の意味がないんだよ!

 「死ね死ね!
 ここに風の刃を浮かびあがらせ、汝の敵を撃ち滅ぼすものなり。エアカッター!」

 シュッ!

 首を傾けるだけで避けていく。だって俺にはエアカッターの形までハッキリ見えてるから。

 「「な、なぜ当たらないんだ!?」」

 「魔法軍はなあ、騎士団や他の闘う軍と力を合わせて闘う。だから中原最強の帝国っていわれてるんだよ!
 お前らみたいに、そんな個人主義で勝てるもんか!」

 「ここに水の弾を浮かびあがらせ、汝の敵を撃ち滅ぼすものなり。ウォーターボール!」

 シュッ!

 もう避けるのもめんどくさいから戦闘靴で蹴ってやった。

 「きゅうーーー、じゅううーーー」












 「「「‥‥」」」

 「はい最初の10が終わったぞ」

 「「「ど、どうなってる?」」」

 「次の10。俺は土魔法の防御だけを使うからな。
 あーもう1つサービスしてやるよ。ここから俺は1歩も動かないからな」

 「「「な、な、なんなんだこいつは!?」」」

 「「「よ、よし。囲め囲め!」」」

 ダダダッ‥‥
 ダダダッ‥‥

 あっという間に13人のヘタレ君たちに囲まれたんだ。その距離8メルはヘタレ君でも余裕で届く射程圏。

 「よく避けたと褒めてあげるわ!でもこの距離ならぜったい外さない。アンタは火で燃やされ、風で削られ、水で手足がちぎれるのよ。ヒャヒャヒャ‥‥」

 「俺のエアカッターはお前の首くらい切れるからな!」

 「私のウォーターボールは手足ぐらい簡単に穴を開けられるんだからね!」

 「そうかい、そうかい。それじゃあがんばれよ」

 「「「死ねガキ!」」」



 「ここに火の球を‥‥ファイアボール!」

 「ここに風の刃を‥‥エアカッター!」

 「ここに水の弾を‥‥ウォーターボール!」

 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!
 シュッ!

 
――――――――――


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