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第2章

第44話 国家転覆計画

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【華友商事に女神降臨!?】
 言い得て妙な見出しだ。確かに女性変化した私は、女神アナトなのだから、女神で間違いではない。
 時々、思う事がある。頭を殴られて気を失っていた間に見ていた夢は、果たして本当に夢であったのか?と。疑問に思うキッカケは、夢の中で中国のSS(ダブルエス)ランクで、強敵だったワンの持つ銃神スキルを模倣ラーニングしたが、私のスキル一覧の中に、その銃神スキルがあるのだ。夢の中でスキルを得るなんて事が出来るのだろうか?いや、出来るはずが無い。そんな事が可能なら、私のステイタスはスキルで埋まっているだろうから、不可能だと言う事になる。それならば、私は最初から銃神スキルを持っていた事になる。余りにも都合の良い夢を見過ぎているし、夢で見た事は実際に起こっている。アストピアの事件は、知らないけども。だから良く分からない。まさかまだ母アシェラの超強力催眠ヒュブノにかかっているのでは?と疑いたくもなる。
 今回の新興宗教アストピアによる同時多発毒ガス事件は、教祖の死と言う形で終息したかに見えたが、教団幹部のNo.2である国中秀夫が教祖の息子を2代目教祖に仕立て上げ、初代教祖の起こした奇跡の数々は、実は息子の能力であったと吹聴し、実際に奇跡を見せて信者を再び呼び戻した。国中は2代目教祖を己の傀儡かいらいとして、教団の実権を握った。元々、国家転覆計画を描いたのは国中であり、初代教祖はそれに乗っただけである。
 同時多発毒ガス事件の失敗を反省し、国中は地下に潜って、密かに前回よりも苛烈なテロを画策していた。教団は、警察にも差し押さえられていない秘密の地下工場を持ち、そこでホスゲンを生産していた。国中は、大量生産したホスゲンを裏ルートを使って大陸(中国)、北朝鮮、露西亞ロシア、ベトナム、モンゴル、アフガニスタン等のいわゆる東側諸国に密売した。そこで得た収益を使って、その国の兵士を雇った。表向きは外国人労働者として、隠れ蓑のダミー会社に入社させた。教団が管理している建物を寮にして、兵士を隠したのだ。そして未曾有の国家転覆計画は実行される。
 その日は朝から激しい雨が降っていた。何処からともなく大勢の外国人労働者が、口々に異国の言葉でまくし立てながら、国会議事堂の正門に押し掛けていた。その日は、重要な議題があり、国会が開催されていた。正門を警備している警察官では対応し切れず、語学が流暢な者が対応していたが、異なる言語が多くて対応に苦労していた。
 注意を正門に向けさせている隙に、側面の壁を乗り越えて、外国人労働者に扮した兵士達は侵入に成功した。しかし、壁面には侵入者を報せる防犯が仕掛けられており、敷地内には複数の防犯カメラがあった。異変に気付いた警備が集まって来たが、複数の防犯カメラは、1発で確実に銃で撃ち壊され、警備も銃撃されて生命を落とした。防弾ジャケットを着込んでいたが、頭を1発で撃ち抜かれた。侵入した兵士の中には、凄腕のエリートが少なからずいた為、外で警護していた警察官は全員殉職した。
 議事堂の中に侵入すると、中の職員を片っ端から撃ち殺した。兵士らは、計画通りに議会に突入すると、大臣以外は不要とばかりに逃げる議員から射殺して回った。465人の議員のうち、その半数近くは殺された。
 この大ニュースは日本だけでなく、全世界を震撼させた。SAT(Special Assault Team)は日本警察が誇る特殊部隊だ。直ぐに警視総監指揮の下、対策本部が立てられた。交渉人ネゴシエーターが交渉を始めるよりも早く、犯人達は動いた。
 詰め寄せる報道陣に対して報道規制を敷き、内部にこちらの動きを察知出来ない状態にしていた為、業を煮やしたのか?議員の1人が正門に向けて歩かされた。残酷な事に、その議員の両腕は斬り落とされていた。口に何かの瓶を咥えさせられていたが、正門前でその瓶を1発の射撃で割られると、ホスゲンが周囲に霧散し、吸った者は次々と血の泡を吹いて窒息死した。これは犯人達の中に、金メダリスト級の射撃の名手がいる事を表しており、事態の深刻さが増した。犯人達は冷酷で残虐非道だ。中にいる総理大臣以下、議員達の安否が気遣われた。
 日本国民だけでなく、全世界がこの事件に釘付けとなった。日本史上初、いや世界でも類を見ない最悪のテロ事件に、騒然となった。
「先輩、ニュース見たでしょう?日本はどうなるんですかね?」
「日本の法律はしっかりしてて、それを遵守していれば、上が変わっても下の影響は少ない。そう言う風に出来ている世の中だ。しかし、テロによってそれが根底から覆されるかも知れないな。情報によると犯人達は、東側諸国の連中だろう?西側諸国にあたる日本とは考え方が違うから、真反対な国に変えられてしまうかも知れないぞ。これはSATに頑張ってもらうしかないな」
「そう言えば、華友の女神。僕も会った事があるんですが、近くで見たら普通の女の子だったんだけどなぁ。女神様、どうか日本を救って下さい、お願いします」
「おいおい、神頼みか?」
ははは、と笑ったが内心笑えなかった。その女神は私だからだ。
「あまりアナトに…女になりたくは無いんだが…」
 白い天井を見上げると、目を閉じて溜息をついた。
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