私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ

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親睦会

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 ニーナと私もテントに向かった。

「さあ、伯爵様、足元にお気をつけてください」

 このフレグランスの面々だが、貴人慣れしているのか、皆、言葉が丁寧で、所作も優雅で美しい。

 年齢はまちまちで、レイモアがおそらく年長で三十前後、マリアとアンが二十代、ガガとニーナが十代後半から二十代前半といったところだが、皆、容姿端正で、まるで貴族の令嬢のようだ。

「他の貴人護衛の冒険者の方たちも、あなたたちのように丁寧で優雅な対応なのかしら」

「どうでしょうか。私たちは帝国に移動される貴族様専門の護衛ですので、少し特殊だと思います」

 帝国専門とは知らなかった。

「ひょっとして帝国の貴族にも詳しいのかしら」

「私たちはそうでもないですが、ブランは詳しいです。グロリア伯爵様のお名前も知っているようでした。あの、失礼な言い方をお許し下さい。実在する貴族様ということで、私たちも護衛依頼をお受けしたのです」

「おほほ、それは失礼ではなくてよ。身元確認は当然のことですわ」

 そう言いつつも、私は焦っていた。

 帝国の貴族の名前など王国では誰も知らないと思って、油断していた。

 グロリア家がシーファを勘当したのは二十五年前で、グロリア家からは記録は抹消されているし、王国も王妃が帝国貴族出身であることは隠して来た。

 王妃は他人の空似で済ませたいのだが。

「でも、女性となりますと、伯爵様はますます王妃様そっくりであらせられますね。お美しくて眩しいです」

 まあ、そうなるわよね。

 私は国民に人気があって、肖像画がバカ売れだと聞いていたが、どうやらお世辞ではないようで、国民の多くが私のこのプラチナブロンドの髪と虹彩に憧れているようなのだ。

「実は生まれた時に王妃様と同じ髪と瞳の色をしていたので、シーファという王妃様と同じ名前を頂いちゃったのよ。私は爵位は持っていないから、正式にはグロリア伯爵令嬢になるの」

「では、シーファ様とお呼びした方がよろしいでしょうか?」

「そうね、その方がしっくりとするわ」

 話しているうちにテントについた。

 魚釣りをしているうちに設営が終わったようで、テントが四つ用意されていた。

 私とニーナのテント、ブランのテント、マリアとアンのテント、レイモアとガガのテントだろう。

 ブランはすでに報告したようで、ガガと一緒に晩御飯の準備を始めていた。

 レイモアとマリアとアンがテーブルに座って談笑していたが、私たちに気づいて立ち上がって、笑顔でテーブルへと案内してくれた。

「男の人の割には綺麗すぎると思っていたんです。でも、ずいぶんとお若いので、まだそういう男の方もいらっしゃるのかと思っておりました。女性でも男性でもどちらでも護衛いたしますので、ご安心ください」

 レイモアが開口一番に契約の続行を確約してくれたので、私は安心した。

 シミュレーションで大丈夫だとは思っていても、本番で実現するとホッとする。

 同性ということで、少し彼女たちとの距離が縮まった気がした。

 私が十六歳だと知ると、彼女たちは一様に驚いていた。

 レイモアがやはり最年長で二十九歳、マリアとアンが二十五歳、ガガとニーナが二十歳ということだが、彼女たちの誰よりも年上に感じると言う。

 まあ、確かに私は四十なのだが。

 驚いたのはブランの年齢だ。

「十八!?」

 いやどう見ても二十代後半だ。三十代と言われても納得の落ち着きぶりだし、十八で何であんなに美味しい料理ができるのだ。

 実年齢よりもおっさんとおばさんが、二人いるってことか。

 話しているうちに晩御飯となったが、今晩は無礼講でバーベキューにしようということになった。

 私は男性の演技をしなくて済むようになって、少し気が楽になったようで、ついついお酒が進んでしまい、盛大に酔っ払ってしまった。

 後で聞いて赤面したのだが、始終ケラケラ笑っていたらしいが、一人ずつ捕まえて、笑いながら説教をかましていたらしい。

 私は本当に楽しかったのだ。こんなに楽しかったのは、いつ以来だろうか。
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