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革命の火蓋
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三ヶ月ほどが経過した。
王政府はひっ迫している財政の立て直しのため、新税制の導入に踏み切った。
ただでさえ生活が苦しいところに、新たな税が追加されるということで、市民の不満が爆発した。
税金の徴収は下級貴族の税収官が担当しているが、まずは彼らが標的にされた。
王都各所で税収官の邸宅が暴徒に襲われる事件が相次いだのだ。
当然のことながら、王政府は暴徒の鎮圧に乗り出すが、ここで市民に政府軍といい勝負をしてもらう必要がある。
白金隊と後に呼ばれる白金の武具に身を固めた精鋭千騎を政府軍に当たらせた。
どこから現れたのか分からないが、自分たちのために政府軍と戦ってくれる白金隊の出現に市民は狂喜した。
そして、市民たちの自衛団などが白金隊にどんどん加わっていき、白金隊を中心とした市民軍が組成されていった。
「ブルー、王政府の国庫の支出明細を暴露するわよ。白金隊の調査報告として、これを市民に発表して頂戴。それと軍費の使途明細の方は、政府軍にも漏えいさせてね」
「なるほど。政府軍を寝返らせるのか」
「軍の高官が自分たちの給料を搾取していると知ったら、末端の兵士たちはやってられないと思うの」
「シーファ様。全てがあなたの思い通りに動く。恐ろしいお方だ」
「あなたが私の意を汲んで的確に動いてくれるからよ。ここからは、ますます双方の力のバランス調整が大切よ。王や王妃が処刑されちゃったりしないようにしっかりと制御してね」
「了解した」
シミュレーションしていて難しかったのは、王家の存続だ。
共和制が立ち上がった後、王とは別の独裁者が現れるが、その独裁者が王家を滅亡させてしまわないようにするのが難しいのだ。
ライザーとユリカ姫は命からがら帝国に亡命し、別の王族が王位を継承し、独裁者にいいように利用されながらも、王家は存続するという形にしたい。
「王と王妃はうまく帝国に亡命させてね。ライカ姫は教国に逃げようとすると思うから、そうならないように策は講じておくわ」
「了解した。両陛下は白金隊が保護する手筈になっている」
「それでは、王都での活動は任せるわ。私はリンガに移動して、王国と帝国の両方をコントロールするわね。大丈夫だとは思うけど、思ったように制御出来ないと感じたら、すぐに連絡してね」
「帝国で何かするのか?」
「ブランには内緒だけど、私は皇后にならないとね。王国の王と王妃が命からがら逃げた先の皇后は、私でないとね」
皇后が私だと知ったときの彼らの驚く顔が今から楽しみだわ。
「ブランデル様を即位させるのか?」
「そうよ。今の皇帝の皇后になるという案もあるけど、私はあの皇帝が嫌いなの。でも、私は何故かブランのことは上手く助けられないから、皇帝を失脚させる策を練っているのよ。なかなかいい策がないのだけどね」
「色仕掛けはしないのか?」
「うん。実は色仕掛けなら上手く行きそうなのよ。でも、ブランが可哀想なのよね」
「ブランデル様が許容できる範囲で使えばいいのでは? ブランデル様に相談するといいと思う」
「そうね、そうしてみるわ。ところで、ブルー、あなたは男が好きなの? それとも女が好きなの?」
「恋愛相手という意味なら、好きになる相手は女だ。男は誘惑して利用するだけだ」
「自由自在でいいわね」
「そういうポジティブな感想は初めてだな」
「どちらからモテるの?」
「男からは今でもよく言い寄られる。女からは警戒されないから、すぐに仲良くなれるが、好きな女には振り向いてもらえない」
「あら? 何だか殊勝なことを言うのね。振り向いてもらうまで頑張りなさいよ」
「ああ、可能性はゼロだが、せいぜい頑張ってみるさ」
「それじゃあ、任せたわよ」
「ああ、必ずや期待に応えてみせる」
王政府はひっ迫している財政の立て直しのため、新税制の導入に踏み切った。
ただでさえ生活が苦しいところに、新たな税が追加されるということで、市民の不満が爆発した。
税金の徴収は下級貴族の税収官が担当しているが、まずは彼らが標的にされた。
王都各所で税収官の邸宅が暴徒に襲われる事件が相次いだのだ。
当然のことながら、王政府は暴徒の鎮圧に乗り出すが、ここで市民に政府軍といい勝負をしてもらう必要がある。
白金隊と後に呼ばれる白金の武具に身を固めた精鋭千騎を政府軍に当たらせた。
どこから現れたのか分からないが、自分たちのために政府軍と戦ってくれる白金隊の出現に市民は狂喜した。
そして、市民たちの自衛団などが白金隊にどんどん加わっていき、白金隊を中心とした市民軍が組成されていった。
「ブルー、王政府の国庫の支出明細を暴露するわよ。白金隊の調査報告として、これを市民に発表して頂戴。それと軍費の使途明細の方は、政府軍にも漏えいさせてね」
「なるほど。政府軍を寝返らせるのか」
「軍の高官が自分たちの給料を搾取していると知ったら、末端の兵士たちはやってられないと思うの」
「シーファ様。全てがあなたの思い通りに動く。恐ろしいお方だ」
「あなたが私の意を汲んで的確に動いてくれるからよ。ここからは、ますます双方の力のバランス調整が大切よ。王や王妃が処刑されちゃったりしないようにしっかりと制御してね」
「了解した」
シミュレーションしていて難しかったのは、王家の存続だ。
共和制が立ち上がった後、王とは別の独裁者が現れるが、その独裁者が王家を滅亡させてしまわないようにするのが難しいのだ。
ライザーとユリカ姫は命からがら帝国に亡命し、別の王族が王位を継承し、独裁者にいいように利用されながらも、王家は存続するという形にしたい。
「王と王妃はうまく帝国に亡命させてね。ライカ姫は教国に逃げようとすると思うから、そうならないように策は講じておくわ」
「了解した。両陛下は白金隊が保護する手筈になっている」
「それでは、王都での活動は任せるわ。私はリンガに移動して、王国と帝国の両方をコントロールするわね。大丈夫だとは思うけど、思ったように制御出来ないと感じたら、すぐに連絡してね」
「帝国で何かするのか?」
「ブランには内緒だけど、私は皇后にならないとね。王国の王と王妃が命からがら逃げた先の皇后は、私でないとね」
皇后が私だと知ったときの彼らの驚く顔が今から楽しみだわ。
「ブランデル様を即位させるのか?」
「そうよ。今の皇帝の皇后になるという案もあるけど、私はあの皇帝が嫌いなの。でも、私は何故かブランのことは上手く助けられないから、皇帝を失脚させる策を練っているのよ。なかなかいい策がないのだけどね」
「色仕掛けはしないのか?」
「うん。実は色仕掛けなら上手く行きそうなのよ。でも、ブランが可哀想なのよね」
「ブランデル様が許容できる範囲で使えばいいのでは? ブランデル様に相談するといいと思う」
「そうね、そうしてみるわ。ところで、ブルー、あなたは男が好きなの? それとも女が好きなの?」
「恋愛相手という意味なら、好きになる相手は女だ。男は誘惑して利用するだけだ」
「自由自在でいいわね」
「そういうポジティブな感想は初めてだな」
「どちらからモテるの?」
「男からは今でもよく言い寄られる。女からは警戒されないから、すぐに仲良くなれるが、好きな女には振り向いてもらえない」
「あら? 何だか殊勝なことを言うのね。振り向いてもらうまで頑張りなさいよ」
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