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第八章 神の統治

海底神殿

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「お帰りなさいませ」

 古代寺の宝物殿の一階にワインは待機していた。俺とミサトが別行動するときは、ワインはどちらにもついて行かない。

 モモとシロは皇帝を帝国まで送り届けている最中だ。アオは光ケーブルの敷設中で、もうすぐ古代寺でもネットに繋げられるようになるはずだ。

 俺は直立不動というか、直立浮遊しているワインに聞いてみた。

「ちょっと聞きたいんだが、藪神社の海の底に海底神殿があるって知っているか?」

「いいえ、あるのですか?」

「子供の言うことだが、貴族の娘だから、何かはあるのだろう」

「調べましょうか?」

「ミサトはいつぐらいに戻るのかな?」

「数日は戻られないのではないでしょうか。皇帝を随行させながら、モモと作戦を練られるようです」

「そうなのか? じゃあ、俺と今から一緒に調べに行かないか」

 俺とミサトが別行動するときは、ワインはどちらにもついて行かないが、頼めばついてくる。

「かしこまりました」

「そういえば、今まで水に入ったことがないが、入れるのか?」

「霊体のままでは自然のものは透過できませんので、権現なさる必要がございます」

「息はどうするんだ?」

「止めて下さい」

「一度、聞きたかったんだが、息はいつまで止めていられるんだ? 一度、試したことがあるが、全く苦しくならなくて、数十分ほどでやめてしまったんだ」

「神通力の補填が必要なければ、いつまで止めておられても大丈夫です」

「呼吸は神通力補填のためか?」

「はい、それと古いものを新しいものと交換されておられます。一度の呼吸で得られる神通力はわずかですので、人の呼吸とは全く別なのですが、酷似した形になるのです」

「なあ、俺たちって死ぬのか?」

「生死は状態の一つです。人は死んだら生に戻れないよう作られていますが、霊王も神霊様も死ぬことは可能ですが、再び生の状態に戻ることができます。ですので、死にますが、死は終わりではなく、生の前の状態に過ぎません」

「死んだら生き返るのに時間がかかるとかは?」

「霊王は時間がかかりますが、神霊様はご自分で決めることができるようです。すぐ生き返ってもいいですし、しばらく死んでいても大丈夫です」

「何だか俺たちって超越してるな」

「もちろんでございます。全てを創造される御方々でございますゆえ」

「じゃあ、水にずっと入っていても大丈夫?」

「一万年ほど神通力の循環がない状態が続きますと、神通力に若干の影響が出るそうです」

「ははは、大丈夫。一万年も水中にいないから。よし、行こうか」

「はい、お供します」

 俺とワインは神走りで薮神社へと向かった。疲れないし、そこそこのスピードだが、それでも二時間ほどかかる。その間、暇なんだよな。

「ミサトが滅ぼしちゃった旅行担当の霊王って、瞬間移動できたんだろう?」

「はい、左様でございます」

「神霊は瞬間移動を使えないのか?」

「神々に時間を司る方と空間を司る方がおられまして、このお二方からお力を頂戴する必要がございます。お二方ともそのう気難しい方々でして、霊王では消滅したグレーだけが両方持っておりました」

「確か千年かかるって言ってたっけ?」

「はい、あと数百年は転生して来ないです」

「ほんと、便利なヤツを滅ぼすよなあ」

「グレーは男か女かはっきりしないため、ゆうき様からも不評でございました。ゆうき様が空間、ミサト様が時間のお力をお持ちですので、ご協力されれば瞬間移動は可能でございます。グレーは確かに便利でしたが、グレー亡き後も、瞬間移動はよくされておられました」

「そうなのか!? お前たちは聞かないと答えないからなあ」

「ゆうき様には正直に申し上げます。ミサト様の逆鱗に触れて、滅ぼされないための処世術でございます」

「だよなあ。だんだんミサトが怖くなって来たよ」

 そんな会話を続けながら俺たちは藪神社に到着した。ネットを王宮まで敷くことにして、キララやエリコさんには、引き続き王宮に住んでもらうことにしたので、神社は静寂に包まれていた。

 海面まで行き、俺とワインは権現し、いくつか打ち合わせをした後、海に潜った。

 恐ろしくきれいな海だ。ちなみに権現すると、ネガ色の世界とはおさらば出来る。

 日の届くところは、かなり遠くまではっきりと見えるが、神殿らしきものは見当たらなかった。

(西って言っていたな)

 西の方は特に注意深く見てみたが、やはり神殿のようなものはない。せっかくなので、少し西に移動してみるか。

 俺はワインに西の方に向かうというゼスチャーをした。ワインがサムアップして、了解の意を示した。潜る前にいくつかハンドサインを教えておいたのだ。

 ワインが俺の背後に近寄って来て、俺の両肩をつかんだ。ワインは二人の姿勢を海面に並行させてから、両足の裏から水流を発生させた。ジェットスクリューという魔法である。

 猛烈な勢いで二人は前進を始めた。一時間ぐらいしても何もなければ帰るつもりだったが、三十分過ぎたあたりで、前方に建物らしきものが見えて来た。

(本当だ。神殿だ)

 俺とワインは海底神殿の門前に到着した。

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