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第一章 人族の国
カトリーヌの視点:メイドメイジ部隊
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私はカトリーヌ、メイデン伯爵家の第一軍の将軍だ。
ニ週間ほど前、エリザベート嬢が紹介したい男がいると彼女の母であるローズ元帥に話があった。
私も偶然その場に居合わせたが、記憶喪失の素性の分からない男だという。
いくら姉の聖女様から頼まれたとはいえ、そんなものを屋敷に住まわせているのかと、ローズ様がお怒りになるのはごもっともだ。
聖女様もなぜそんな素性のわからぬ男を妹のエリザベート嬢に紹介したのだろう。神託とのことだが、そんな具体的な神託はこれまで聞いたことがなかった。
慈悲深い聖女様が、男の境遇に同情して、エリザベートに託したのではないか、というのがローズ様のお考えだ。
ただ、エリザベート嬢がそんな男をわざわざローズ様に会ってくれというのは少しおかしい。
エリザベート嬢は有名なシスコンであるが故、姉の言うことには素直に従うはずだが、男を見る目はかなり厳しいのだ。
ということで、とにかく様子を見て来いとローズ様に言われて、私が送られてきた。マリエール様やエリザベート嬢に何か間違いがあってはいけないからだ。
最初ノウキを見たときは、若いのにえらく落ち着いている男、という印象だった。非常に整った顔立ちで、物腰が柔らかく、言葉遣いが丁寧で、誠実な印象を受ける。
一見すると女受けするルックスがよく優しいだけの男だが、目を見ると、表面からだけではうかがい知れない奥深さを持っているような感じがした。
これほどの第一印象を与える男性は、カトリーヌにとっては二人目だった。メイデン伯爵家当主のレイモンド様の第一印象と容貌は全く違うが、受ける印象がよく似ていた。
そういった感じで、カトリーヌのノウキに対する第一印象は100点満点だった。
そして、あのハンバーグとスパゲッティを食べ、ノウキを絶対に第一軍の部下にしたいと思った。不敬な話だが、ローズ様に知られて、ローズ様直属にされないように早々に自分の配下にすべきだと思ったのだ。
第一軍に編入すると言ったとき、ノウキが初めて動揺したように見えた。すぐに隠したが、一瞬目に戸惑いの色が見えたのだ。
恐らく軍人志望ではないのだろう。安心するがいい。私が秘蔵したいお前を前線になんか送るものか。
とそのときは思っていたのだが、今、目の前で見ているメイドメイジという魔法部隊の訓練を見て、早くも考えを変えたくなってしまっていた。
この男、一体何者だ?
メイドメイジ隊は若く美しい女性ばかりの20名のメイドたちだ。ノウキ直属のメイドたちとのことで、最初彼女たちを見たときは、ノウキの評価をいったん底辺まで下げた。このエロガキめがと。
ところが、訓練を見ているうちに気づいてしまった。誰一人手を抜かず、自分の限界を突破しようと、トレーニングメニューを忠実にこなしているのだ。人であれば、自己防衛本能が働いて、体に負荷がかからないよう無難な内容に自然と動きを変えてしまうのに、この部隊にはそれが全くない。しかも、20名全員がそうしている。
こんな訓練を一年も続けられることができたなら、強力な魔法部隊が完成する。
「ねえ、ノウキ。どうやったら彼女たちをあんな状態にできるの?」
「カトリーヌさんには僕のことを知っていただきたいので、真実を話します」
ニ週間ほど前、エリザベート嬢が紹介したい男がいると彼女の母であるローズ元帥に話があった。
私も偶然その場に居合わせたが、記憶喪失の素性の分からない男だという。
いくら姉の聖女様から頼まれたとはいえ、そんなものを屋敷に住まわせているのかと、ローズ様がお怒りになるのはごもっともだ。
聖女様もなぜそんな素性のわからぬ男を妹のエリザベート嬢に紹介したのだろう。神託とのことだが、そんな具体的な神託はこれまで聞いたことがなかった。
慈悲深い聖女様が、男の境遇に同情して、エリザベートに託したのではないか、というのがローズ様のお考えだ。
ただ、エリザベート嬢がそんな男をわざわざローズ様に会ってくれというのは少しおかしい。
エリザベート嬢は有名なシスコンであるが故、姉の言うことには素直に従うはずだが、男を見る目はかなり厳しいのだ。
ということで、とにかく様子を見て来いとローズ様に言われて、私が送られてきた。マリエール様やエリザベート嬢に何か間違いがあってはいけないからだ。
最初ノウキを見たときは、若いのにえらく落ち着いている男、という印象だった。非常に整った顔立ちで、物腰が柔らかく、言葉遣いが丁寧で、誠実な印象を受ける。
一見すると女受けするルックスがよく優しいだけの男だが、目を見ると、表面からだけではうかがい知れない奥深さを持っているような感じがした。
これほどの第一印象を与える男性は、カトリーヌにとっては二人目だった。メイデン伯爵家当主のレイモンド様の第一印象と容貌は全く違うが、受ける印象がよく似ていた。
そういった感じで、カトリーヌのノウキに対する第一印象は100点満点だった。
そして、あのハンバーグとスパゲッティを食べ、ノウキを絶対に第一軍の部下にしたいと思った。不敬な話だが、ローズ様に知られて、ローズ様直属にされないように早々に自分の配下にすべきだと思ったのだ。
第一軍に編入すると言ったとき、ノウキが初めて動揺したように見えた。すぐに隠したが、一瞬目に戸惑いの色が見えたのだ。
恐らく軍人志望ではないのだろう。安心するがいい。私が秘蔵したいお前を前線になんか送るものか。
とそのときは思っていたのだが、今、目の前で見ているメイドメイジという魔法部隊の訓練を見て、早くも考えを変えたくなってしまっていた。
この男、一体何者だ?
メイドメイジ隊は若く美しい女性ばかりの20名のメイドたちだ。ノウキ直属のメイドたちとのことで、最初彼女たちを見たときは、ノウキの評価をいったん底辺まで下げた。このエロガキめがと。
ところが、訓練を見ているうちに気づいてしまった。誰一人手を抜かず、自分の限界を突破しようと、トレーニングメニューを忠実にこなしているのだ。人であれば、自己防衛本能が働いて、体に負荷がかからないよう無難な内容に自然と動きを変えてしまうのに、この部隊にはそれが全くない。しかも、20名全員がそうしている。
こんな訓練を一年も続けられることができたなら、強力な魔法部隊が完成する。
「ねえ、ノウキ。どうやったら彼女たちをあんな状態にできるの?」
「カトリーヌさんには僕のことを知っていただきたいので、真実を話します」
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