18 / 28
第二章 オークの国
偵察
しおりを挟む
メイドメイジ部隊の奇襲ポイントの事前調査のため、ノウキとマリエール、エリザベートの三人は町の西に広がる森にいた。ノウキが異世界から転生して来た森だ。
森を抜けると大河があり、その向こうがオークの国だ。
マリエールの瞬間移動は視界内であればどこにでも移動可能だ。マリエールは転移も使えるようになっており、一度行ったところへは瞬時に移動できるようになっていた。
聖女を辞めたマリエールは、ノウキの秘書を務めるようになっていた。午前中はノウキの経営する香辛料店と飲食店を転移と格納を使って飛び回っている。これ自体が魔法の訓練にもなり、一石二鳥だ。
午後のマリエールは、自身の魔法の訓練とノウキの魔法の指導を行なっている。その結果、遂にノウキも瞬間移動ができるようになった。瞬間移動と転移は大差ない。転移先を目で見るか、頭の中でイメージするかの違いだけだ。
マリエールは頭の中でのイメージを苦手としていたため、「転移」の取得が「格納」よりも後だったが、ノウキはすぐに「転移」も取得した。
そんな二人の魔法の進歩と店舗経営の様子を見ていたエリザベートは、結婚するまでは自分もノウキの部下でいると言い出し、自ら訓練メニューを作成し、見る見るうちに魔法使いとしての才能を開花させ、店舗経営においては、経理を担当するようになっていた。
こうして、マリエールとエリザベートは、ノウキの左秘書、右秘書と呼ばれ、常にノウキと行動を共にするようになったのだ。
軍の中では、マリエールは中佐、エリザベートは少佐であるため、ノウキはまたもや三階級特進で、肩書はカトリーヌと同じ大佐になっていた。
そして、カトリーヌは後日、少将に昇進することが決まっていた。
三人は川が見えるところまで来ていた。
「ノウキ、まずは私が瞬間移動を繰り返して、敵地の内情を調べるてくるわ」
マリエールが川の向こうを見ながらノウキに提案した。
「そうですね。危なくなったら、すぐにここまで転移してください」
「わかったわ」
そう言い残して、マリエールは消えた。
川の向こう岸にマリエールが現れては消え、また、現れては消えを繰り返しているのが見えた。
瞬間移動を繰り返しているのだ。そして、全く姿が見えなくなった。
「お姉さま、大丈夫かしら」
エリザベートが心配しているが、ノウキはあまり心配していなかった。
案の定、しばらくして、マリエールが転移で戻ってきた。
「ノウキ、マップをお願い」
ノウキは頷いて三人の脳内にマップを展開した。
マリエールが見てきた内容がマップに反映される。まるで写真のようだ。
「この間、大敗を喫した砦はここよ。マップに赤い点が記される。今は我々が打って出ないことがわかっているみたいで、城壁には兵は一人もいなかったわ」
マリエールの報告を一通り聞いたが、ノウキにはどうにも腑に落ちなかった。
こちらに攻めてくる気配が全くないのだ。
「オークは本当に人族区を攻めるつもりなのでしょうか?」
人族との国境であるにもかかわらず、マリエールはオークの兵を一人も見ていない。
「もう少し奥まで入り込んでみる?」
マリエールの問いにノウキは頷いた。
「私と一緒に行きましょう。エリザベートはここで待機していてください。我々が1時間経っても帰ってこないときは、カトリーヌさんに報告をお願いします」
エリザベートの首肯を確認し、ノウキはマリエールと一緒に瞬間移動を繰り返しながら、オークの砦まで到着した。
「ここまで誰にも会わないですね」
この世界のオークは、肌が緑色で、耳が大きく、鼻が低く横に広がっているという特徴はあるが、人族とあまり変わらない容姿をしている。前世での白人と黒人との違いと大差ない。
だが、そのオークを一人も見ない。
「さっきもそうだったわ」
「オークの気配が全くしませんね」
ノウキとマリエールはお互いに頷いて、危険を犯して砦の塀の上に瞬間移動して、中を見て驚いた。
「水没している?」
砦の城壁に囲まれた砦の中はなみなみと水に満たされていた。そして、水の底には多くのオークの遺体と人族の遺体が沈んでいるのが見えた。
「マリエール、200メートルずつ奥の方に行ってみますか」
ノウキとマリエールは200メートルずつ瞬間移動で移動を繰り返して、3キロ進んだところで、延々と続く水濠を発見した。
「また水?」
水濠の先にはオークの姿がちらほら見えた。
一人のオークがこちらに気づいて何か言っている。
ノウキは全ての言葉を理解できる。オークの言葉も理解できた。
「マリエール、すぐに帰還します。エリザベートのところまで転移してください」
ノウキはマリエールと一緒にエリザベートのところまで急いで帰還した。
エリザベートは突然二人が現れて驚いている。確かに心臓に悪いだろう。でも、ノウキはエリザベートに構う余裕はなかった。
「マリエール、念の為、お風呂に入りましょう」
ノウキがそう言った途端、頭に激痛が走った。
いや、違う、エッチな命令じゃないのに……。
「い、今のはナシです」
マリエールが少し赤い顔をしていた。
ノウキはまだ頭痛がしたまま叫んだ。
「咬まれると死んでしまうダニが繁殖しているらしいです。転移で生物はついてこないはずですが、念の為、早くお風呂に入って下さい。水に弱いそうです。衣服は焼却して下さい」
マリエールの顔が赤から青に変わる。
「お風呂に転移するわ」
そう言ってマリエールが消えた。
「エリザベート、私もお風呂場に転移します。あなた一人で帰還してください。カトリーヌさんに迎えを出してもらうようにします」
ノウキはそう言い残して、お風呂場に転移した。
森を抜けると大河があり、その向こうがオークの国だ。
マリエールの瞬間移動は視界内であればどこにでも移動可能だ。マリエールは転移も使えるようになっており、一度行ったところへは瞬時に移動できるようになっていた。
聖女を辞めたマリエールは、ノウキの秘書を務めるようになっていた。午前中はノウキの経営する香辛料店と飲食店を転移と格納を使って飛び回っている。これ自体が魔法の訓練にもなり、一石二鳥だ。
午後のマリエールは、自身の魔法の訓練とノウキの魔法の指導を行なっている。その結果、遂にノウキも瞬間移動ができるようになった。瞬間移動と転移は大差ない。転移先を目で見るか、頭の中でイメージするかの違いだけだ。
マリエールは頭の中でのイメージを苦手としていたため、「転移」の取得が「格納」よりも後だったが、ノウキはすぐに「転移」も取得した。
そんな二人の魔法の進歩と店舗経営の様子を見ていたエリザベートは、結婚するまでは自分もノウキの部下でいると言い出し、自ら訓練メニューを作成し、見る見るうちに魔法使いとしての才能を開花させ、店舗経営においては、経理を担当するようになっていた。
こうして、マリエールとエリザベートは、ノウキの左秘書、右秘書と呼ばれ、常にノウキと行動を共にするようになったのだ。
軍の中では、マリエールは中佐、エリザベートは少佐であるため、ノウキはまたもや三階級特進で、肩書はカトリーヌと同じ大佐になっていた。
そして、カトリーヌは後日、少将に昇進することが決まっていた。
三人は川が見えるところまで来ていた。
「ノウキ、まずは私が瞬間移動を繰り返して、敵地の内情を調べるてくるわ」
マリエールが川の向こうを見ながらノウキに提案した。
「そうですね。危なくなったら、すぐにここまで転移してください」
「わかったわ」
そう言い残して、マリエールは消えた。
川の向こう岸にマリエールが現れては消え、また、現れては消えを繰り返しているのが見えた。
瞬間移動を繰り返しているのだ。そして、全く姿が見えなくなった。
「お姉さま、大丈夫かしら」
エリザベートが心配しているが、ノウキはあまり心配していなかった。
案の定、しばらくして、マリエールが転移で戻ってきた。
「ノウキ、マップをお願い」
ノウキは頷いて三人の脳内にマップを展開した。
マリエールが見てきた内容がマップに反映される。まるで写真のようだ。
「この間、大敗を喫した砦はここよ。マップに赤い点が記される。今は我々が打って出ないことがわかっているみたいで、城壁には兵は一人もいなかったわ」
マリエールの報告を一通り聞いたが、ノウキにはどうにも腑に落ちなかった。
こちらに攻めてくる気配が全くないのだ。
「オークは本当に人族区を攻めるつもりなのでしょうか?」
人族との国境であるにもかかわらず、マリエールはオークの兵を一人も見ていない。
「もう少し奥まで入り込んでみる?」
マリエールの問いにノウキは頷いた。
「私と一緒に行きましょう。エリザベートはここで待機していてください。我々が1時間経っても帰ってこないときは、カトリーヌさんに報告をお願いします」
エリザベートの首肯を確認し、ノウキはマリエールと一緒に瞬間移動を繰り返しながら、オークの砦まで到着した。
「ここまで誰にも会わないですね」
この世界のオークは、肌が緑色で、耳が大きく、鼻が低く横に広がっているという特徴はあるが、人族とあまり変わらない容姿をしている。前世での白人と黒人との違いと大差ない。
だが、そのオークを一人も見ない。
「さっきもそうだったわ」
「オークの気配が全くしませんね」
ノウキとマリエールはお互いに頷いて、危険を犯して砦の塀の上に瞬間移動して、中を見て驚いた。
「水没している?」
砦の城壁に囲まれた砦の中はなみなみと水に満たされていた。そして、水の底には多くのオークの遺体と人族の遺体が沈んでいるのが見えた。
「マリエール、200メートルずつ奥の方に行ってみますか」
ノウキとマリエールは200メートルずつ瞬間移動で移動を繰り返して、3キロ進んだところで、延々と続く水濠を発見した。
「また水?」
水濠の先にはオークの姿がちらほら見えた。
一人のオークがこちらに気づいて何か言っている。
ノウキは全ての言葉を理解できる。オークの言葉も理解できた。
「マリエール、すぐに帰還します。エリザベートのところまで転移してください」
ノウキはマリエールと一緒にエリザベートのところまで急いで帰還した。
エリザベートは突然二人が現れて驚いている。確かに心臓に悪いだろう。でも、ノウキはエリザベートに構う余裕はなかった。
「マリエール、念の為、お風呂に入りましょう」
ノウキがそう言った途端、頭に激痛が走った。
いや、違う、エッチな命令じゃないのに……。
「い、今のはナシです」
マリエールが少し赤い顔をしていた。
ノウキはまだ頭痛がしたまま叫んだ。
「咬まれると死んでしまうダニが繁殖しているらしいです。転移で生物はついてこないはずですが、念の為、早くお風呂に入って下さい。水に弱いそうです。衣服は焼却して下さい」
マリエールの顔が赤から青に変わる。
「お風呂に転移するわ」
そう言ってマリエールが消えた。
「エリザベート、私もお風呂場に転移します。あなた一人で帰還してください。カトリーヌさんに迎えを出してもらうようにします」
ノウキはそう言い残して、お風呂場に転移した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
94
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる