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犯人捜し
犯人の手掛かり
しおりを挟む私はとにかく、セナさんから犯人の身体的特徴を探り出すことにした。とはいえ、長時間一緒にいたわけではないから、セナさんの持っている情報は少ない。
顔も好みだったというわりには、サングラスしてたって言うし。
「サングラスしてたって分かるよ。ほら、にじみ出る色気ってヤツ?」
セナさんがおそらく苦い顔をしていた私に言う。そうか、サングラスしてても顔の輪郭とか、髪型が好みの可能性もあるのか。
「あ、あと声がよかった」
ちょっとハスキーな声でね、最高。そう目を輝かせるセナさん。
「あと、服装がヴィジュアルバンドっぽかった。あたし、ヴィジュアルバンド、好きなんだよね」
私の頭の中では、最高にロックなミュージックとシャウトするヴォーカルの図が浮かんでいる。これ、絶対間違ったヴィジュアルバンドの図だよね。
「とにかくまとめると、服装・見た目ともにヴィジュアルバンドっぽい、サングラスをかけたハスキーボイスの男の人ってことだね」
こうやって見ると、色んな属性を持った人なんだね、探しやすそうではあるけど。私の言葉に、セナさんは頷く。
「そうそう」
しかし、そんな服装の人がいたらこのお店だったらかなり目立つ気がするなぁ。私は辺りを見回す。かっこいいお兄さんたちを眺めるために来た、着飾った女子たち、そんな女子をナンパするために来ましたって感じのストリート系の格好をしたお兄さんたち。……ん?
よく考えたら、いかにもナンパしに来ましたって感じの人たちの中に紛れようと思ったら、紛れられそう? ヴィジュアル系バンドと、ストリート系ファッションってきっと別物だけど、あんだけわらわら固まって動いている人たちの中に紛れたら、追っかけようとしても見失っちゃうかもしれない。
ふむむむ……。これは、なかなか探すのが難しいような気が。それに。
「同じ店を使うかどうか、だよね」
「え?」
私の言葉に、セナさんとルリアさんが顔を見合わせる。
「もし、そういった詐欺行為を何件もやるつもりなら、同じ店を何度も使うかな、と思って」
同じ店で同じような詐欺行為を何度もやったらきっと、お店の人に何かしらの形でバレる可能性が高くなるし、声は上げられないけど被害に遭った人が待ち伏せしている可能性があると思う。そのリスクを回避するため、普通なら店を何度も変えるんじゃないかな。あとは、同じ店を使うにしても数日開けるとか。
「となると、この店に現れる可能性は低いかもしれない、ということですわね?」
ルリアさんが顔をしかめる。
「あくまで、可能性の話ね。本気で犯人を見つけるつもりなら、同じようなお店をそれぞれ見張る必要があるんじゃないかな」
ただ、これには人数がいる。この街に何件カフェがあるのかにもよるけど。今いるのは、セナさん、ルリアさん、フリントさん、私の4人。4人でこの街のカフェ全部を見張れるかどうかだね。
いくらこの街が始まりの街で小さく見えるとしても、もっとお店ありそうだよね。どうしよう……。
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