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問題解決と言霊クラフトその3
好きという気持ち
しおりを挟む私は、フジヤさんがチラシのデザイン案を考えてくれている間に自分のアイテムのアイデアを考える。今日はまだあと一つ、アイテムにスキルを付与できるからね。
お店の新たな看板商品になるようなアイテムがいいな。私はそう思いながら、店の商品を今一度見て回る。その様子をフジヤさんがじっと見つめる。そしてにっこり笑いかけてくる。
「サランちゃん、このお店のことが本当に好きなんだね」
「え」
私は驚いてフジヤさんの方を振り返る。すると、彼女はこう続けた。
「見てたら分かるよ。このお店のことを第二の居場所みたいに大事にしてるんだね」
そう言われて、私は即座に頷く。
「そうですね。確かに、現実世界での仕事場は好きではないですが、このお店のことは好きです」
誰に強制されるでもなく、自由に売りたいと思った商品を売り、何か作って業績に貢献したいと思う、そんなお店。
私の職場では、頼まれた仕事しかしたいとは思わない。でも、ここでは頼まれた仕事だけでなく、もっとお店のために何かできないかと思うし、常に頭のどこかで、お店の役に立ちそうなアイデアは落ちてないか考える。
現実世界での仕事では考えられないこと。それが、この世界では起きている。きっと私は、このお店が、カンナさんが、そしてこの世界に生きている私が「好き」なんだ。
フジヤさんは、ゆっくり頷く。
「それだけ誰かに好かれるお店、大事にされるお店の力になれるなんて、こんな素敵な事って、ないよ。サランちゃんに出会えて、よかった」
月並みな言葉かもしれないけど、そう付け足しながらフジヤさんは照れくさそうに軽く頬を染めた。
「私も、フジヤさんに出会えてよかったです。フジヤさんにそう言ってもらえなかったら私、この好きって気持ち、気づけなかったかもしれません」
私はそう言って、なお一層、店内を見つめる。私の第二の居場所。この居場所をさらに居心地よい場所にするために、居場所を失わないために頑張らないと。
「フジヤさん、チラシに載せる用の目玉商品を考えますから、それを載せるスペース、空けといて頂けますか」
「りょーかい。いいね、目玉商品。バッチリ配置できるようにデザインしてみるよ」
フジヤさんのウインク。よーし、私のこの「好き」を思い切りぶつけたいいアイテム、作っちゃうよー!
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