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キャンプ
森の魔獣に拉致されて
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盆栽魔人に誘われて向かった先には切り株でできたちゃぶ台ぐらいの高さのテーブルがあった。ちなみに椅子のようなものは当然のごとくない。盆栽たちは背が低いから棒立ちしたときにちょうどいい高さなのかもしれないけど、私には少し低すぎるし、……正座でもしようかな。
幸いなことにこの辺りの地面はそんなに湿っていないし、膝立ちするぐらいなら衣服もそこまで汚れないと思う。
『人間さん、お茶を用意したのです~』
『さあ、飲むのですー!』
『飲んで「美味しい」と、感想を言うのです!』
いや、感想まで固定なの? でもとりあえずここは従っておくしかなさそうかな。幸いなことに魔力の光はそこまで強くなさそうだから、少し舌がピリピリするぐらいで済みそうだし……。
「(ごくっ、ごくっ)うん、美味しい……ですよ」
『よかったのですー!』
『人間さん、おかわりいかが?』
『ささっ、どうぞどうぞー、なのです~』
なにこれ、死ぬほど苦いんだけど。そして、勢いよく飲みすぎたせいで舌だけでなく喉の奥までヒリヒリするんだけど⁉︎ でもこれぐらいなら我慢できないことはない……やっぱりこれ以上は無理!
「いえ、もうお腹いっぱいなので、お構いなく……」
『人間さんは少食なのです?』
『もしかして、遠慮しているのです?』
『それともお口に合わなかったのです?』
「いえ……えっと。そういうわけではなく……」
ひえぇ、そんなに迫ってこないで! 私は魔力値が低いから、食べても美味しくなんてないよ‼︎ちゃんとしたものを食べないとお腹を壊す……あ、そうだ! こういう時は私よりも美味しいものを餌にすれば。確か鞄の一番上の方にカエル肉(乾燥)があったはず……。
薪を持ち運ぶつもりで持ってきていた鞄の一番上を弄ると、葉っぱに包まれた乾燥カエル肉に手が触れたのでそのまま引っ張って、机の上に投げつけるようにして取り出して並べることに。
「えっと……盆栽魔人さん? お礼にカエル肉でも食べますか? 美味しいですよ」
『ぼんさい?』『ぼんさいって何です?』『天才の対義語です? 私たちはしょせん凡才です?』
「ひえぇ……」
そうじゃないんです! 頭の上の盆栽をバカにするつもりはないんです! あれですね。可愛いヘアスタイルですね。とてもよく似合ってますよ……やっぱり嘘です! カエルの肉はカエルですし、盆栽はどう見ても盆栽です!
『人間さん、ありがたく貢物をいただくのです』
『ありがたやー、ありがたやー』
『感激で頭から葉っぱが落ちるようなのです!』
え、何それは。もしかして目から鱗的な意味?
いずれにせよ盆栽たちがカエルに気を取られている今が最大のチャンス!
「あの、それでは私はこの辺りで……。そろそろ出発せねばなりませんので」
『うん! またね、人間さん』
『バイバイ! お肉ありがとね、人間さん!』
野生動物に遭遇した時のように決して背中を向けずにじりじりと5メートルぐらい後退して、頭上の葉っぱが見えなくなったのを確認したら振り返らずに一気に走り抜ける。体感で10秒ぐらい全力疾走をするとようやくキャンプ場が見えてきた!
『お主よどうした? まるで死に目にでも会ったようにやつれておるぞ⁉︎』
「ああ、お馬さん……。実は森で盆栽魔人に遭遇して……」
『ぼんさい……魔人? それは魔人なのか? それとも魔獣の一種なのか? いずれにせよお主が無事なようでよかった。すまぬな、気軽に「森に入れ」などと言ってしまい。まさかこの森にそのような凶悪な存在がおるとは思わなかったのだ』
「はぁ、はぁ……。まあ、なんとか逃げ出せたからいいよ。私も今後は軽率な行動は取らないように気をつけることにするね!」
私には、この世界での記憶は全くないけど。
でもきっと、やり残したことは沢山あるはずだから。
差しあたっては……。
「それじゃあお馬さん。日も登ってきたし、そろそろ出発しようか!」
『よかろう! ではお主よ、我に馬装をするが良い!』
幸いなことにこの辺りの地面はそんなに湿っていないし、膝立ちするぐらいなら衣服もそこまで汚れないと思う。
『人間さん、お茶を用意したのです~』
『さあ、飲むのですー!』
『飲んで「美味しい」と、感想を言うのです!』
いや、感想まで固定なの? でもとりあえずここは従っておくしかなさそうかな。幸いなことに魔力の光はそこまで強くなさそうだから、少し舌がピリピリするぐらいで済みそうだし……。
「(ごくっ、ごくっ)うん、美味しい……ですよ」
『よかったのですー!』
『人間さん、おかわりいかが?』
『ささっ、どうぞどうぞー、なのです~』
なにこれ、死ぬほど苦いんだけど。そして、勢いよく飲みすぎたせいで舌だけでなく喉の奥までヒリヒリするんだけど⁉︎ でもこれぐらいなら我慢できないことはない……やっぱりこれ以上は無理!
「いえ、もうお腹いっぱいなので、お構いなく……」
『人間さんは少食なのです?』
『もしかして、遠慮しているのです?』
『それともお口に合わなかったのです?』
「いえ……えっと。そういうわけではなく……」
ひえぇ、そんなに迫ってこないで! 私は魔力値が低いから、食べても美味しくなんてないよ‼︎ちゃんとしたものを食べないとお腹を壊す……あ、そうだ! こういう時は私よりも美味しいものを餌にすれば。確か鞄の一番上の方にカエル肉(乾燥)があったはず……。
薪を持ち運ぶつもりで持ってきていた鞄の一番上を弄ると、葉っぱに包まれた乾燥カエル肉に手が触れたのでそのまま引っ張って、机の上に投げつけるようにして取り出して並べることに。
「えっと……盆栽魔人さん? お礼にカエル肉でも食べますか? 美味しいですよ」
『ぼんさい?』『ぼんさいって何です?』『天才の対義語です? 私たちはしょせん凡才です?』
「ひえぇ……」
そうじゃないんです! 頭の上の盆栽をバカにするつもりはないんです! あれですね。可愛いヘアスタイルですね。とてもよく似合ってますよ……やっぱり嘘です! カエルの肉はカエルですし、盆栽はどう見ても盆栽です!
『人間さん、ありがたく貢物をいただくのです』
『ありがたやー、ありがたやー』
『感激で頭から葉っぱが落ちるようなのです!』
え、何それは。もしかして目から鱗的な意味?
いずれにせよ盆栽たちがカエルに気を取られている今が最大のチャンス!
「あの、それでは私はこの辺りで……。そろそろ出発せねばなりませんので」
『うん! またね、人間さん』
『バイバイ! お肉ありがとね、人間さん!』
野生動物に遭遇した時のように決して背中を向けずにじりじりと5メートルぐらい後退して、頭上の葉っぱが見えなくなったのを確認したら振り返らずに一気に走り抜ける。体感で10秒ぐらい全力疾走をするとようやくキャンプ場が見えてきた!
『お主よどうした? まるで死に目にでも会ったようにやつれておるぞ⁉︎』
「ああ、お馬さん……。実は森で盆栽魔人に遭遇して……」
『ぼんさい……魔人? それは魔人なのか? それとも魔獣の一種なのか? いずれにせよお主が無事なようでよかった。すまぬな、気軽に「森に入れ」などと言ってしまい。まさかこの森にそのような凶悪な存在がおるとは思わなかったのだ』
「はぁ、はぁ……。まあ、なんとか逃げ出せたからいいよ。私も今後は軽率な行動は取らないように気をつけることにするね!」
私には、この世界での記憶は全くないけど。
でもきっと、やり残したことは沢山あるはずだから。
差しあたっては……。
「それじゃあお馬さん。日も登ってきたし、そろそろ出発しようか!」
『よかろう! ではお主よ、我に馬装をするが良い!』
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