5 / 12
Ⅴ
昭和63年12月③ 夕刊配達
しおりを挟む
大学の講義が四限まである火曜日を除けば、薄くて軽く折込みを挟むことの稀な夕刊の配達には、精神的に余裕を持って臨める。すべてを業務用自転車に載せられるし、朝刊より配達部数も二十ほど少なく、要する時間も二十分ほど短くて済むが、夕刻からの肉体労働は体に堪えてしまう。一年で最も日没の早い十二月上旬の今は、なおさらだ。
一郎と同じS大生の息子がいる宮本さん宅と、十二区との境にある湯河原さん宅は、壁ポストに新聞を投げ入れできる。毎月の開始日の二十日に、快く集金に応じてもらえるのもありがたかった。全体の十パーセント、三十数軒でも、二十五日の初回の〆をクリアするのは楽でない。給料日前だからと、二十四日までは断られる場合が少なくないからだ。
ブロック塀の端に、業務用自転車の前籠とハンドルを立てかける。東海や歴代担当者も、朝夕の配達のたびにそうし、同じブロックを擦っていたようだ。跡がくっきりと目立っているものの、橋本さんは黙認してくれる。一郎は、夕刊を片手に壁ポストを無視して黒い鉄製の縦格子の門扉を引き、古い平屋に沿って裏庭へと駆けて行く。居間につづく濡れ縁に、ぱさっ、とあえて音の立つように薄い新聞を落とし、「夕刊でーす」と声をかける。浅黒い顔に幾つもの皺を深く刻んだ七十代らしき大奥さんと、色白だけれども似た顔つきをした四十代らしき若奥さんが、いつもどおり「ご苦労様ー」と家中から労いの一言を返してくれた。
しだいしだいに、練馬大根等の畑は宅地に転用されているようだが、十一区ではかつて農村だったころの面影を目にできる。古くからある家は、玄関のドアや引戸の近くにポストを設置しており、門先に新聞の配達場所はほぼない。自転車を降りて広い敷地内を駆けねばならない場合もある。他の区域に比べて配達に時間がかかる要因の一つだけれども、一郎は気にしないように心がけていた。より近い距離で読者からかけてもらう謝意の込められた言葉は、新聞屋の仕事をつづけていく上での糧となるからだ。
松本さん宅では、壁ポストに朝刊を投げ入れる。夕刊は、自転車を降りて門を抜け、玄関ドアを開けて脇にある靴箱の上に置く。足の悪い八十代らしき大奥さんは、新聞を読むことを日々の楽しみにしている。配達に気づくためであり、夕刻は一人でいることが多いらしく室内を歩いて取りに行けるようにするためだ。
去る九月上旬のある日、玄関から「夕刊でーす」と声をかけたときに、いつもの「ご苦労様ー」ではなく、「助けてー」と老女の叫び声が返って来た。「新聞屋さん、助けてー」とつづく。何事かと思いながら、「失礼します」と言ってジョギングシューズを脱ぎ、一郎は声のした方角へ進むと、居間でこちら向きに膝を曲げた総白髪の大奥さんが横臥していた。後方にある介護用ベッドから転落したという。パニック状態に陥り、動けなくなっていたものの、大事はなかった。外した軍手をジャージの上着のポケットに突っ込み、再度「失礼します」と言い、小柄だが意外に重い背筋の曲がった老女を抱き上げてベッドに戻した。夕刊をベッドの縁に置き直すと、落ち着きを取り戻し何度も感謝の言葉を口にしている大奥さんに一礼し、配達に戻った。
――この前は、本当にありがとう。九月分の集金時に、五十代らしき若奥さんに手を引かれつつ、玄関口までわざわざ顔を出してくれた大奥さんから、先日のお礼にと、三足セットのスポーツ用靴下をもらった。以来、配達や集金の際にありがたく穿かせてもらっている。
つい、「不着」をしてしまう所がある。最たる例は、中元酒店だ。シャッターポストに朝刊を入れ忘れることはないけれども、なぜか店内に入って奥さんに手わたしする場合が多い夕刊はときおり忘れ、配達終了後に販売店の事務室に電話をもらうまで思い出せない。東海や歴代担当者も、たびたび同じミスをしでかしたようだ。頭を下げながら改めて夕刊を手わたす際に、奥さんからも旦那さんからも、お𠮟りを受けたことは一度もない。「忙しい中、わざわざありがとう」などと逆に礼を言ってもらえる。不着をすれば、他の読者からは注意されたり、嫌味を言われたりすることも少なからずあるのに。お詫びというわけでもないが、一郎は必ず朝方と夕方に中元酒店の自動販売機でロングサイズの缶コーヒーを買い、配達中の水分補給を行っている。
Y新聞本社勤めの田野倉さん宅の近くには、BMWやベンツといった西ドイツ産車が、よく門先に横付けされている。熊本の郡部出身の一郎だけれども、目新しく感じない。S大の裏門通りに、イギリス産やイタリア産などを交えた多くの高級外車が停められているからだ。ソアラやシーマといったハイソカーの類でも、国産の駐車は憚られるらしい。配達中に見かける外車の所有者は、子供をS学園に小学校から入れるような金持ちと限らない。新築も中古も高騰して億越えの珍しくなくなりつつある販売価格に尻込みし、戸建てやマンションの購入を諦め、賃貸住宅で割り切って自動車に金をかける中間層が、このところ増えているという。
犬の悲鳴が聞こえて来る。スコップで殴打されているのだ。今日も吉田さん宅の門先で、中型の雑種らしき飼い犬が。「夕刊です」と一郎は控えめに声をかけながら、壁ポストに投函する。角刈り頭にすっかり白い物が混ざっている旦那さんは、例によって鋭い視線を投げて返す。何見てんだよ、と言いたげな堅気らしからぬ表情で。
零細土建会社を営んでいる吉田さんは、不惑をすぎてから授かったらしい小学生四年生の息子ともども、新聞屋、新聞屋、と一郎を蔑む。ときには凄む。気に食わないことを口にした瞬間に、お前もぶん殴ってやるぞ、と言わんばかりに。吉田の旦那さんの少年時代は、戦中及び戦後の混乱期と重なるはずだ。何らかの理由で、自身も飼い犬のように繰り返し虐待を受けた体験があるのではないだろうか。一郎も、月々の集金時に吉田さんから言葉の暴力を受けつつ、新聞販売店に扱き使われながら生きている。やるせなさを覚えずにはいられない。
吉田さん宅の先、袋小路の突き当たりにある梅の木荘は、高田馬場にある大学や予備校や専門学校に通う貧乏男子学生向けのトイレ共同、風呂なしのアパートだ。裏に流行りのユニットバス付きのワンルームマンションが建ったばかりなので、安っぽい造りが余計に目につく。一郎たちの寮よりも、おそらく古い。
木造二階建て、十六部屋ある梅の木荘では、たびたび問題が起こる。配達開始の前月末に訪問して確認を取るに当たり、新聞拡張員のあげる「不良カード」に注意を要した。契約した学生がすでに転出していたり、契約自体が実際に存在していなかったりすることも珍しくない。拡張員に嘘をつかれ学生の納得いかない契約であったとしても、新聞の配達はつづける。押しの強さに負けたのならば、洗剤等を受け取ったのならば、ハンコを押したのならば、取ってもらわねばならぬ。一郎は、自身の良心を丸め込んでいる。
拡張員の取った契約とは言え、三ヶ月にわたって新聞を梅木さんに押しつけたときは、酷く凹まざるをえなかった。領収書を切った後に、月の輝きが目に沁みた。吉田の旦那さんと同年代の梅木さんは、辺りの地主であった梅の木荘の大家の妹で、生まれつき右の手足に障害を持っている。学校にも行けず、近くにある大きな本家屋敷の片隅で育ったらしい。字が読めず、兄から生活費を援助してもらいながら、梅の木荘の隣の小さな平屋でテレビだけを楽しみに一人で暮らしている。吉田さん宅から聞こえて来る犬の悲鳴を日々どんな思いで耳にしつづけているのだろうか。
倉本畳店の旦那さんは、典型的な職人で気難しい。店先のポストに投函し、「夕刊です」と声をかけても、一郎を一瞥するだけ。娘夫婦の八木さんも、裏の古い借家で本紙を取ってくれている。その隣に住む緒田の婆さんの陰険さには、集金に行くたびに閉口せざるをえない。姿すら見せず、いかず後家らしき娘に新聞代を払わせている間に、サービスが悪い、配達が遅い、などと奥の居間から玄関まで聞こえるように大きな声でねちねちと嫌味を言うからだ。溝口印刷店の奥さんは、愛想も好いが、人も好い。五月に「家庭新聞」の三ヶ月間の無料モニターになってくれた上に、八月から十月まで黙って取りつづけ、代金を払ってくれた。モニター契約終了を見落としたのは一郎なのに、何ら咎められなかった。
まゆみ荘は、順路の終盤にある。古い木造二階建てのアパートの三部屋のドアポストに夕刊を投函し、自転車のサドルに跨った。一郎は、深い溜息をつきながら道向かいの砂利敷きの駐車場に目をやる。青い二トントラックは、すでに停められていた。今日の配達中に、佐藤の若奥さんに逢えなかった。ロマンスグレーも見かけなかった。でも彼女やジュンちゃんと一緒に二〇三号室にいるのかもしれない――。疲れが全身に重くのしかかってくる。
一郎と同じS大生の息子がいる宮本さん宅と、十二区との境にある湯河原さん宅は、壁ポストに新聞を投げ入れできる。毎月の開始日の二十日に、快く集金に応じてもらえるのもありがたかった。全体の十パーセント、三十数軒でも、二十五日の初回の〆をクリアするのは楽でない。給料日前だからと、二十四日までは断られる場合が少なくないからだ。
ブロック塀の端に、業務用自転車の前籠とハンドルを立てかける。東海や歴代担当者も、朝夕の配達のたびにそうし、同じブロックを擦っていたようだ。跡がくっきりと目立っているものの、橋本さんは黙認してくれる。一郎は、夕刊を片手に壁ポストを無視して黒い鉄製の縦格子の門扉を引き、古い平屋に沿って裏庭へと駆けて行く。居間につづく濡れ縁に、ぱさっ、とあえて音の立つように薄い新聞を落とし、「夕刊でーす」と声をかける。浅黒い顔に幾つもの皺を深く刻んだ七十代らしき大奥さんと、色白だけれども似た顔つきをした四十代らしき若奥さんが、いつもどおり「ご苦労様ー」と家中から労いの一言を返してくれた。
しだいしだいに、練馬大根等の畑は宅地に転用されているようだが、十一区ではかつて農村だったころの面影を目にできる。古くからある家は、玄関のドアや引戸の近くにポストを設置しており、門先に新聞の配達場所はほぼない。自転車を降りて広い敷地内を駆けねばならない場合もある。他の区域に比べて配達に時間がかかる要因の一つだけれども、一郎は気にしないように心がけていた。より近い距離で読者からかけてもらう謝意の込められた言葉は、新聞屋の仕事をつづけていく上での糧となるからだ。
松本さん宅では、壁ポストに朝刊を投げ入れる。夕刊は、自転車を降りて門を抜け、玄関ドアを開けて脇にある靴箱の上に置く。足の悪い八十代らしき大奥さんは、新聞を読むことを日々の楽しみにしている。配達に気づくためであり、夕刻は一人でいることが多いらしく室内を歩いて取りに行けるようにするためだ。
去る九月上旬のある日、玄関から「夕刊でーす」と声をかけたときに、いつもの「ご苦労様ー」ではなく、「助けてー」と老女の叫び声が返って来た。「新聞屋さん、助けてー」とつづく。何事かと思いながら、「失礼します」と言ってジョギングシューズを脱ぎ、一郎は声のした方角へ進むと、居間でこちら向きに膝を曲げた総白髪の大奥さんが横臥していた。後方にある介護用ベッドから転落したという。パニック状態に陥り、動けなくなっていたものの、大事はなかった。外した軍手をジャージの上着のポケットに突っ込み、再度「失礼します」と言い、小柄だが意外に重い背筋の曲がった老女を抱き上げてベッドに戻した。夕刊をベッドの縁に置き直すと、落ち着きを取り戻し何度も感謝の言葉を口にしている大奥さんに一礼し、配達に戻った。
――この前は、本当にありがとう。九月分の集金時に、五十代らしき若奥さんに手を引かれつつ、玄関口までわざわざ顔を出してくれた大奥さんから、先日のお礼にと、三足セットのスポーツ用靴下をもらった。以来、配達や集金の際にありがたく穿かせてもらっている。
つい、「不着」をしてしまう所がある。最たる例は、中元酒店だ。シャッターポストに朝刊を入れ忘れることはないけれども、なぜか店内に入って奥さんに手わたしする場合が多い夕刊はときおり忘れ、配達終了後に販売店の事務室に電話をもらうまで思い出せない。東海や歴代担当者も、たびたび同じミスをしでかしたようだ。頭を下げながら改めて夕刊を手わたす際に、奥さんからも旦那さんからも、お𠮟りを受けたことは一度もない。「忙しい中、わざわざありがとう」などと逆に礼を言ってもらえる。不着をすれば、他の読者からは注意されたり、嫌味を言われたりすることも少なからずあるのに。お詫びというわけでもないが、一郎は必ず朝方と夕方に中元酒店の自動販売機でロングサイズの缶コーヒーを買い、配達中の水分補給を行っている。
Y新聞本社勤めの田野倉さん宅の近くには、BMWやベンツといった西ドイツ産車が、よく門先に横付けされている。熊本の郡部出身の一郎だけれども、目新しく感じない。S大の裏門通りに、イギリス産やイタリア産などを交えた多くの高級外車が停められているからだ。ソアラやシーマといったハイソカーの類でも、国産の駐車は憚られるらしい。配達中に見かける外車の所有者は、子供をS学園に小学校から入れるような金持ちと限らない。新築も中古も高騰して億越えの珍しくなくなりつつある販売価格に尻込みし、戸建てやマンションの購入を諦め、賃貸住宅で割り切って自動車に金をかける中間層が、このところ増えているという。
犬の悲鳴が聞こえて来る。スコップで殴打されているのだ。今日も吉田さん宅の門先で、中型の雑種らしき飼い犬が。「夕刊です」と一郎は控えめに声をかけながら、壁ポストに投函する。角刈り頭にすっかり白い物が混ざっている旦那さんは、例によって鋭い視線を投げて返す。何見てんだよ、と言いたげな堅気らしからぬ表情で。
零細土建会社を営んでいる吉田さんは、不惑をすぎてから授かったらしい小学生四年生の息子ともども、新聞屋、新聞屋、と一郎を蔑む。ときには凄む。気に食わないことを口にした瞬間に、お前もぶん殴ってやるぞ、と言わんばかりに。吉田の旦那さんの少年時代は、戦中及び戦後の混乱期と重なるはずだ。何らかの理由で、自身も飼い犬のように繰り返し虐待を受けた体験があるのではないだろうか。一郎も、月々の集金時に吉田さんから言葉の暴力を受けつつ、新聞販売店に扱き使われながら生きている。やるせなさを覚えずにはいられない。
吉田さん宅の先、袋小路の突き当たりにある梅の木荘は、高田馬場にある大学や予備校や専門学校に通う貧乏男子学生向けのトイレ共同、風呂なしのアパートだ。裏に流行りのユニットバス付きのワンルームマンションが建ったばかりなので、安っぽい造りが余計に目につく。一郎たちの寮よりも、おそらく古い。
木造二階建て、十六部屋ある梅の木荘では、たびたび問題が起こる。配達開始の前月末に訪問して確認を取るに当たり、新聞拡張員のあげる「不良カード」に注意を要した。契約した学生がすでに転出していたり、契約自体が実際に存在していなかったりすることも珍しくない。拡張員に嘘をつかれ学生の納得いかない契約であったとしても、新聞の配達はつづける。押しの強さに負けたのならば、洗剤等を受け取ったのならば、ハンコを押したのならば、取ってもらわねばならぬ。一郎は、自身の良心を丸め込んでいる。
拡張員の取った契約とは言え、三ヶ月にわたって新聞を梅木さんに押しつけたときは、酷く凹まざるをえなかった。領収書を切った後に、月の輝きが目に沁みた。吉田の旦那さんと同年代の梅木さんは、辺りの地主であった梅の木荘の大家の妹で、生まれつき右の手足に障害を持っている。学校にも行けず、近くにある大きな本家屋敷の片隅で育ったらしい。字が読めず、兄から生活費を援助してもらいながら、梅の木荘の隣の小さな平屋でテレビだけを楽しみに一人で暮らしている。吉田さん宅から聞こえて来る犬の悲鳴を日々どんな思いで耳にしつづけているのだろうか。
倉本畳店の旦那さんは、典型的な職人で気難しい。店先のポストに投函し、「夕刊です」と声をかけても、一郎を一瞥するだけ。娘夫婦の八木さんも、裏の古い借家で本紙を取ってくれている。その隣に住む緒田の婆さんの陰険さには、集金に行くたびに閉口せざるをえない。姿すら見せず、いかず後家らしき娘に新聞代を払わせている間に、サービスが悪い、配達が遅い、などと奥の居間から玄関まで聞こえるように大きな声でねちねちと嫌味を言うからだ。溝口印刷店の奥さんは、愛想も好いが、人も好い。五月に「家庭新聞」の三ヶ月間の無料モニターになってくれた上に、八月から十月まで黙って取りつづけ、代金を払ってくれた。モニター契約終了を見落としたのは一郎なのに、何ら咎められなかった。
まゆみ荘は、順路の終盤にある。古い木造二階建てのアパートの三部屋のドアポストに夕刊を投函し、自転車のサドルに跨った。一郎は、深い溜息をつきながら道向かいの砂利敷きの駐車場に目をやる。青い二トントラックは、すでに停められていた。今日の配達中に、佐藤の若奥さんに逢えなかった。ロマンスグレーも見かけなかった。でも彼女やジュンちゃんと一緒に二〇三号室にいるのかもしれない――。疲れが全身に重くのしかかってくる。
0
あなたにおすすめの小説
誰も愛してくれないと言ったのは、あなたでしょう?〜冷徹家臣と偽りの妻契約〜
山田空
恋愛
王国有数の名家に生まれたエルナは、
幼い頃から“家の役目”を果たすためだけに生きてきた。
父に褒められたことは一度もなく、
婚約者には「君に愛情などない」と言われ、
社交界では「冷たい令嬢」と噂され続けた。
——ある夜。
唯一の味方だった侍女が「あなたのせいで」と呟いて去っていく。
心が折れかけていたその時、
父の側近であり冷徹で有名な青年・レオンが
淡々と告げた。
「エルナ様、家を出ましょう。
あなたはもう、これ以上傷つく必要がない」
突然の“駆け落ち”に見える提案。
だがその実態は——
『他家からの縁談に対抗するための“偽装夫婦契約”。
期間は一年、互いに干渉しないこと』
はずだった。
しかし共に暮らし始めてすぐ、
レオンの態度は“契約の冷たさ”とは程遠くなる。
「……触れていいですか」
「無理をしないで。泣きたいなら泣きなさい」
「あなたを愛さないなど、できるはずがない」
彼の優しさは偽りか、それとも——。
一年後、契約の終わりが迫る頃、
エルナの前に姿を見せたのは
かつて彼女を切り捨てた婚約者だった。
「戻ってきてくれ。
本当に愛していたのは……君だ」
愛を知らずに生きてきた令嬢が人生で初めて“選ぶ”物語。
あなたへの恋心を消し去りました
鍋
恋愛
私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。
私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。
だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。
今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。
彼は心は自由でいたい言っていた。
その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。
友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。
だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※短いお話でサクサクと進めたいと思います。
【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新 完結済
コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
大好きなあなたが「嫌い」と言うから「私もです」と微笑みました。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
私はずっと、貴方のことが好きなのです。
でも貴方は私を嫌っています。
だから、私は命を懸けて今日も嘘を吐くのです。
貴方が心置きなく私を嫌っていられるように。
貴方を「嫌い」なのだと告げるのです。
冷たい王妃の生活
柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。
三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。
王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。
孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。
「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。
自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。
やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。
嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる