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45 普通の転生者、ピンチ
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フィルとは未だに話が出来ていない。
僕はブラッドから聞いたんだけどって話をするのは違うなって何となく思っていた。フィルからきちんとした話が聞きたかったんだ。
でもフィルは朝は早く、夜は遅くて、顔を合わせる事すら難しい。こんな事をしていたら新しい年になっちゃうよ。
そこで僕は作戦を変更した。会えないなら、会いに行ったらいいんだ。
お城の警護を外されていると言うなら、どこで働いているのか聞けばいい。
多分まともに答えてくれる人は居ないと思うけど、僕には口と、足がある。分からないことは聞けばいいし、探し回ればいい。
手始めに同じ所で働いている同僚に最近この辺を回らなくなっちゃったんだけど、年末で忙しいみたいで会えないんだ。どこかで見なかった? って聞いてみる。そうして少しずつ輪を広げていくんだ。
「見かけたら教えて?」と最後の一言は忘れずに。
その次は先輩。そうしたら先輩のお友達の騎士職の人が声をかけてくれた。でもさすがの僕も一人ではいかないよ。
さすがにね学園の最終学年で色々あったからね、危機管理能力っていうのを持たなきゃダメって覚えたんだ。
教えてくれた人には教えてくれてありがとうってお礼を言う。それだけ。今度どこかに出かけないかって聞いてくる人は要注意。もうね、仕方がないから「やきもちやかれると厄介なので」って言ったら「そうなんだ」って勝手に引いてくれたよ。多分ね、王子に悲鳴を上げた奴っていうのが分かっている人もいるみたい。
そうして少しずつ広げた波紋は年が終わる一日前に飛んでもない人を連れてきた。
「最近は年末でバタバタとしていて若い文官たちと食事も出来なかったからね。せっかくここで会ったんだ久しぶりに昼食はどうだろう?」
そう言って声をかけてきたのはこの辺りに居る事がおかしい筈の宰相様だ。
一瞬お断りって思ったんだけど宰相様はすかさず次の一手を出した。
「最近人探しをしている文官の話が聞こえて来てね。なんでも城の中を見回っている恋人の騎士と連絡が取れなくて心配しているとか」
「はぁ……」
う~ん、さすが噂。ちょっとカスタマイズされている。
「さて、もう年の終わりだ。今日は肉でも食べようかね。エマーソンは肉は好きかな?」
子供に尋ねるようにそう言われて僕は昼食をご一緒した。
そして、もしかしたらっていう話を聞いて悲しい気持ちで宿舎に帰ったら……
「サミー、お前は何をしているんだ?」
ずっと会えずにいたフィルが初めて見る様な固い顔をして待っていたんだ。
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僕はブラッドから聞いたんだけどって話をするのは違うなって何となく思っていた。フィルからきちんとした話が聞きたかったんだ。
でもフィルは朝は早く、夜は遅くて、顔を合わせる事すら難しい。こんな事をしていたら新しい年になっちゃうよ。
そこで僕は作戦を変更した。会えないなら、会いに行ったらいいんだ。
お城の警護を外されていると言うなら、どこで働いているのか聞けばいい。
多分まともに答えてくれる人は居ないと思うけど、僕には口と、足がある。分からないことは聞けばいいし、探し回ればいい。
手始めに同じ所で働いている同僚に最近この辺を回らなくなっちゃったんだけど、年末で忙しいみたいで会えないんだ。どこかで見なかった? って聞いてみる。そうして少しずつ輪を広げていくんだ。
「見かけたら教えて?」と最後の一言は忘れずに。
その次は先輩。そうしたら先輩のお友達の騎士職の人が声をかけてくれた。でもさすがの僕も一人ではいかないよ。
さすがにね学園の最終学年で色々あったからね、危機管理能力っていうのを持たなきゃダメって覚えたんだ。
教えてくれた人には教えてくれてありがとうってお礼を言う。それだけ。今度どこかに出かけないかって聞いてくる人は要注意。もうね、仕方がないから「やきもちやかれると厄介なので」って言ったら「そうなんだ」って勝手に引いてくれたよ。多分ね、王子に悲鳴を上げた奴っていうのが分かっている人もいるみたい。
そうして少しずつ広げた波紋は年が終わる一日前に飛んでもない人を連れてきた。
「最近は年末でバタバタとしていて若い文官たちと食事も出来なかったからね。せっかくここで会ったんだ久しぶりに昼食はどうだろう?」
そう言って声をかけてきたのはこの辺りに居る事がおかしい筈の宰相様だ。
一瞬お断りって思ったんだけど宰相様はすかさず次の一手を出した。
「最近人探しをしている文官の話が聞こえて来てね。なんでも城の中を見回っている恋人の騎士と連絡が取れなくて心配しているとか」
「はぁ……」
う~ん、さすが噂。ちょっとカスタマイズされている。
「さて、もう年の終わりだ。今日は肉でも食べようかね。エマーソンは肉は好きかな?」
子供に尋ねるようにそう言われて僕は昼食をご一緒した。
そして、もしかしたらっていう話を聞いて悲しい気持ちで宿舎に帰ったら……
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ずっと会えずにいたフィルが初めて見る様な固い顔をして待っていたんだ。
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