普通の転生者は幸せになる計画を立てる。でも幸せって何?

tamura-k

文字の大きさ
45 / 54

45 普通の転生者、ピンチ

しおりを挟む
 フィルとは未だに話が出来ていない。
 僕はブラッドから聞いたんだけどって話をするのは違うなって何となく思っていた。フィルからきちんとした話が聞きたかったんだ。
 でもフィルは朝は早く、夜は遅くて、顔を合わせる事すら難しい。こんな事をしていたら新しい年になっちゃうよ。
 そこで僕は作戦を変更した。会えないなら、会いに行ったらいいんだ。

 お城の警護を外されていると言うなら、どこで働いているのか聞けばいい。
 多分まともに答えてくれる人は居ないと思うけど、僕には口と、足がある。分からないことは聞けばいいし、探し回ればいい。




 手始めに同じ所で働いている同僚に最近この辺を回らなくなっちゃったんだけど、年末で忙しいみたいで会えないんだ。どこかで見なかった? って聞いてみる。そうして少しずつ輪を広げていくんだ。
「見かけたら教えて?」と最後の一言は忘れずに。
 その次は先輩。そうしたら先輩のお友達の騎士職の人が声をかけてくれた。でもさすがの僕も一人ではいかないよ。

 さすがにね学園の最終学年で色々あったからね、危機管理能力っていうのを持たなきゃダメって覚えたんだ。
 教えてくれた人には教えてくれてありがとうってお礼を言う。それだけ。今度どこかに出かけないかって聞いてくる人は要注意。もうね、仕方がないから「やきもちやかれると厄介なので」って言ったら「そうなんだ」って勝手に引いてくれたよ。多分ね、王子に悲鳴を上げた奴っていうのが分かっている人もいるみたい。

 そうして少しずつ広げた波紋は年が終わる一日前に飛んでもない人を連れてきた。

「最近は年末でバタバタとしていて若い文官たちと食事も出来なかったからね。せっかくここで会ったんだ久しぶりに昼食はどうだろう?」

 そう言って声をかけてきたのはこの辺りに居る事がおかしい筈の宰相様だ。
 一瞬お断りって思ったんだけど宰相様はすかさず次の一手を出した。

「最近人探しをしている文官の話が聞こえて来てね。なんでも城の中を見回っている恋人の騎士と連絡が取れなくて心配しているとか」
「はぁ……」

 う~ん、さすが噂。ちょっとカスタマイズされている。

「さて、もう年の終わりだ。今日は肉でも食べようかね。エマーソンは肉は好きかな?」

 子供に尋ねるようにそう言われて僕は昼食をご一緒した。
 そして、もしかしたらっていう話を聞いて悲しい気持ちで宿舎に帰ったら……

「サミー、お前は何をしているんだ?」

 ずっと会えずにいたフィルが初めて見る様な固い顔をして待っていたんだ。


---------
 
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!

ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。 その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。 しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。 何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。 聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

優秀な婚約者が去った後の世界

月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。 パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。 このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。

婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話

黄金 
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。 恋も恋愛もどうでもいい。 そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。 二万字程度の短い話です。 6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。

処理中です...