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二章
帰還
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テオロス帝国バスロテの門から、逃げるように飛び出し走り続ける。いや、実際逃げてるんだけど。
何から?
知らん。
誰から?
多分皇帝。
何で?
俺が聞きたい。
そんなことを頭の中で呟きつつ、街道を走り続ける。パルジャンス王国の国境沿いまで来ると、破壊された物見台が見えた。速度を落としながら横目に眺める。
来る時に瓦礫の隙間に見えた衛士達の遺体が見当たらない。恐らく夜の間に、テオロス軍の兵士達が回収したんだろう。
トロイアーノは約束を守る男だったってことだな。
同様に破壊された物見台の近くを5ヶ所通り抜ける。瓦礫はそのままだったが、遺体は全て回収されているようだ。
一応まだ戦争中なので、街道に人影は見当たらない。誰もいない街道を走り続ける。
やがて無傷の物見台が微かに見え始めた。とりあえずの目的地にしていたケブニル街道に入ったようだ。ここまでで大体半刻くらい。確かテオロス帝国が半日かけて侵攻した距離のはずだよな。これでひとまず追っ手の心配は無くなった。
……いや、俺達は逃げてるんじゃなくて、ベルセンに帰ってるだけだよな。うん。
俺達は街道から少し外れて地面に座り込み、ドミニクが買ってきた弁当を食べることにした。強引にでも気分を変えるために。
俺の分の弁当代は先払いしておいたので気がね無く食べることにする。ただ、渡したお金は銀貨一枚。釣りはどうしたと聞いてみると、ドミニクは自分の鞄からでかい酒瓶を何本も取り出す。
そう言えば酒を奢れと言ってたっけ。俺が苦笑すると、マンハイムでみんなと呑もうと笑っていた。
あんまり酒は強くないんだが、まあいいや。
ドミニクが買ってきた弁当は、編みカゴを2つ組み合わせた箱に入っていた。中身は平たいパンに具を挟んだ物が2つ。パニーノに似てるな。具はシンプルに、ハムとチーズとレタスに似た野菜。パンは薄味だけど、その分具の味付けが濃くて美味かった。ドミニク、グッジョブ。
今朝多目に沸かして水筒に入れておいた紅茶で後味を流し、俺達は帰路を急ぐ。
パルジャンス王国の領内に入ると、時折衛士とすれ違うようになった。
さっさと帰りたいので走る速度は変えず、でも無視するとまた面倒なので、衛士が見えたら走りながら手を振って挨拶をする。
衛士達は両手で手を振り返してくれた。通り抜け様に礼を言われることもあったので、昨日の昼間においてけぼりにしたことは問題にならなかったようだ。よかった。
物見台の近くを走り抜けるときも、物見台から歓声が聞こえた。硬身をかけ忘れたから、風の音のせいでよく聞こえない。俺達に手を振っているのが見えるから、多分怒ってる訳じゃないんだろ。
1つ、2つと数えながら物見台を走り抜ける。ベルセンに近付くほどに、すれ違う衛士達が増えて、物見台からの歓声が大きくなっていく。
嫌な予感をびしびし感じながら、それでも走らないと帰れないので走り続ける。相変わらず多すぎる物見台を横見に見つつ、途中で数を数えることを放棄。
日が傾き始めた頃に、遠くの方にでかい城塞の頭が見えてきた。
足を緩めながらドミニクに声をかける。
「帰ってきたな」
「ああ」
「……あれ、なんだろな?」
近付くにつれて大きくなるベルセンの壁。その壁に、白い布が横断幕のようにかけられている。
「……何か書いてあるぜ」
ドミニクの言う通り、白い横断幕に黒い文字が見える。目を凝らしてみるが遠くてよく見えない。
嫌な予感が大きくなるが、帰らないといけない。夕方までには帰ると約束したからな。
俺達はため息をつきながら、また走り始めた。
そしてーーー。
【おかえりなさい!2人の勇者!】
横断幕に書かれた文字がはっきりと見えた。俺達は足を止めて、横断幕を眺める。
え?何これ?
「ドミニク?」
「俺に聞くな」
俺達が呆然としていると、城門が大きな音をたてて開き始めた。
開く城門の隙間から歓声が漏れ出す。歓声に押し出されるように、いくつかの人影が飛び出した。
先頭を走る小さな人影がクシナダだと分かったとき、俺も走り出していた。
「御主人!」
ああっ、喋りながら走ると危ねえって!
あー、ほらヨタヨタして……あ!
「きゃ!」
小さな悲鳴を上げてクシナダが小石に躓く。俺は右足を深く踏み込んで跳んだ。着地の瞬間に両足を投げ出し、そのまま地面を滑る。
……ぽすっ。
スライディングした俺の懐に、転んだクシナダが入り込む。空いた両手でクシナダを抱き止め、地面に尻餅をついた。さすが軽身、間に合った。
クシナダは俺の腕から顔を出し、ビックリしたような顔をしている。そして、泣いた。
「まふたー……おがえり~」
「おう、ただいま」
俺の懐に顔をうずめてくるクシナダ。俺はその小さな頭をゆっくりと撫でてやる。心配……かけたな。うん、ごめんな。
「クーちゃん、怪我してないか?」
チコの声に顔を上げると、懐かしい顔が見えた。みんな俺達を囲んでいる。
「ああ、何とか間に合った」
クシナダを抱いたまま立ち上がる。
「獣人の俺より跳ぶなんてすげーな」
「今だけ魔法で軽くなってるからな」
「そのような魔法をよく思いつきましたね。やはりユートは変な人の子です」
「剣狼辞めて獣人になったアムルスも十分変だろ」
「誰のせいですか。責任をとるのですよ、ユート」
何だよそれ。勝手に獣人になっといて、責任て。
「そうだよー、ユート君。アムちゃんにとっては一大決心だったって。よ、この色男。あははー」
「……楽しそうだね、マリアちゃん」
「だって面白いんだもん」
あははーとマリアが笑う。俺の口からも乾いた笑い声が出る。
「何笑ってんのよ。アンタ達、ホント人の言うこと聞かないんだから」
「そりゃないぜオーナー。俺はコイツのお守りで……」
「お黙り!」
ドミニクの裏切りは失敗した。オーナーはドミニクの頭をしばき、俺の頭もついでにしばく。乾いた音が街道に響いた。いてえ。
「今回はたまたま無事に帰ってこれたからいいものの、1つ間違えたらどうなってたか!ユートちゃん、前にも言ったでしょ。マンハイムを家族だと思えって。アナタ達はアタシにとっても家族なのよ。次やったら許さないから」
「……すんません」
俺は頭を下げた。叱られたのが何故か嬉しい。変態だけど。
「罰として、しばらく勇者になりなさいな。その方が戦争終結も早まるわよ。勇者よ、勇者。渡人で勇者、しかもウチの子。いいわー、お仕事増えちゃう!」
……アンタの仕業か、あの恥ずかしい横断幕。途中から本音が漏れてるぞ。くねくねすんな。
「人を宣伝に……」
オーナーが俺の文句をスルーして横に動いた。そこに、人影が立っている。
「……スーちゃん?」
スザンヌがオーナーに隠れるように立っていた。
「スーちゃん言うな、ばか」
スザンヌが上目遣いに口を尖らせる。目元が少し腫れていた。
俺は昨夜の念話を思い出す。オーナーの話だと、スザンヌとマリアは泣いてくれたんだよな。いいやつらだ。
「……ありがとな」
「何よ……」
「別に」
「……ばか」
文句を言いながらスザンヌが笑った。夕日を浴びて金色の髪が優しく光る。
「……おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
ーーーーーーーーーー
ベルセンに2人の冒険者が帰還してから翌日、パルジャンス王国軍がベルセンに到着した。
時を同じくして、テオロス帝国からもトロイアーノ将軍が部下数名と共に早馬でベルセンに入った。
トロイアーノ将軍は敵意が無いことを示すため、王国軍の目の前で武装解除を行い、王国軍による魔力探知も受け入れた。
ギルドマンハイムのオーナーであるタチアナ=ブレナーからの報告もあって、トロイアーノ将軍は部下と共に和平の使者として認められた。
王国軍は大多数の兵をベルセンに残し、トロイアーノ将軍達を首都クルムベルクへと連行した。
4日後、トロイアーノ将軍は国王フリードリヒ4世に謁見し、テオロス帝国皇帝ボルトロテ2世からの降伏文書を読み上げる。
内容は無条件降伏そのものであったが、国王フリードリヒ4世は内容を一部改変する。講和条約として残った主な内容としては、次の通りである。
1.パルジャンス王国はテオロス帝国を属国とする。但し、パルジャンス王国はテオロス帝国の人事権を放棄する。
2.テオロス帝国は戦死者の遺族に対し年金を支払うこととする。
3.首謀者である渡人クレイシャンは速やかに処刑することとし、死体は焼却することとする。
4.パルジャンス王国の有事の際は、テオロス帝国は無条件で軍事力を提供することとする。
5.テオロス帝国北部の原野については両国で開拓に臨むこととし、得られる利益は均等に分配することとする。但し、開拓後の原野の管理はテオロス帝国が執り行うものとし、パルジャンス王国からは監理官を派遣するのみとする。
後日、戦死者58名の遺体が丁重に移送され、テオロス帝国軍の手によってパルジャンス王国内、それぞれの故郷の墓地へ埋葬されることとなる。
戦争の終結としては穏便すぎる背景に、2人の渡人の存在があったことは言うまでもない。つまり、渡人に始まり渡人に終わったのだと。
むしろ国王フリードリヒ4世は、自国内に渡人が、それも人並み以上に正義感のある若者がいることを喜んだという。
かくして、後にクレイシャンの乱と呼ばれる戦争は終結した。
何から?
知らん。
誰から?
多分皇帝。
何で?
俺が聞きたい。
そんなことを頭の中で呟きつつ、街道を走り続ける。パルジャンス王国の国境沿いまで来ると、破壊された物見台が見えた。速度を落としながら横目に眺める。
来る時に瓦礫の隙間に見えた衛士達の遺体が見当たらない。恐らく夜の間に、テオロス軍の兵士達が回収したんだろう。
トロイアーノは約束を守る男だったってことだな。
同様に破壊された物見台の近くを5ヶ所通り抜ける。瓦礫はそのままだったが、遺体は全て回収されているようだ。
一応まだ戦争中なので、街道に人影は見当たらない。誰もいない街道を走り続ける。
やがて無傷の物見台が微かに見え始めた。とりあえずの目的地にしていたケブニル街道に入ったようだ。ここまでで大体半刻くらい。確かテオロス帝国が半日かけて侵攻した距離のはずだよな。これでひとまず追っ手の心配は無くなった。
……いや、俺達は逃げてるんじゃなくて、ベルセンに帰ってるだけだよな。うん。
俺達は街道から少し外れて地面に座り込み、ドミニクが買ってきた弁当を食べることにした。強引にでも気分を変えるために。
俺の分の弁当代は先払いしておいたので気がね無く食べることにする。ただ、渡したお金は銀貨一枚。釣りはどうしたと聞いてみると、ドミニクは自分の鞄からでかい酒瓶を何本も取り出す。
そう言えば酒を奢れと言ってたっけ。俺が苦笑すると、マンハイムでみんなと呑もうと笑っていた。
あんまり酒は強くないんだが、まあいいや。
ドミニクが買ってきた弁当は、編みカゴを2つ組み合わせた箱に入っていた。中身は平たいパンに具を挟んだ物が2つ。パニーノに似てるな。具はシンプルに、ハムとチーズとレタスに似た野菜。パンは薄味だけど、その分具の味付けが濃くて美味かった。ドミニク、グッジョブ。
今朝多目に沸かして水筒に入れておいた紅茶で後味を流し、俺達は帰路を急ぐ。
パルジャンス王国の領内に入ると、時折衛士とすれ違うようになった。
さっさと帰りたいので走る速度は変えず、でも無視するとまた面倒なので、衛士が見えたら走りながら手を振って挨拶をする。
衛士達は両手で手を振り返してくれた。通り抜け様に礼を言われることもあったので、昨日の昼間においてけぼりにしたことは問題にならなかったようだ。よかった。
物見台の近くを走り抜けるときも、物見台から歓声が聞こえた。硬身をかけ忘れたから、風の音のせいでよく聞こえない。俺達に手を振っているのが見えるから、多分怒ってる訳じゃないんだろ。
1つ、2つと数えながら物見台を走り抜ける。ベルセンに近付くほどに、すれ違う衛士達が増えて、物見台からの歓声が大きくなっていく。
嫌な予感をびしびし感じながら、それでも走らないと帰れないので走り続ける。相変わらず多すぎる物見台を横見に見つつ、途中で数を数えることを放棄。
日が傾き始めた頃に、遠くの方にでかい城塞の頭が見えてきた。
足を緩めながらドミニクに声をかける。
「帰ってきたな」
「ああ」
「……あれ、なんだろな?」
近付くにつれて大きくなるベルセンの壁。その壁に、白い布が横断幕のようにかけられている。
「……何か書いてあるぜ」
ドミニクの言う通り、白い横断幕に黒い文字が見える。目を凝らしてみるが遠くてよく見えない。
嫌な予感が大きくなるが、帰らないといけない。夕方までには帰ると約束したからな。
俺達はため息をつきながら、また走り始めた。
そしてーーー。
【おかえりなさい!2人の勇者!】
横断幕に書かれた文字がはっきりと見えた。俺達は足を止めて、横断幕を眺める。
え?何これ?
「ドミニク?」
「俺に聞くな」
俺達が呆然としていると、城門が大きな音をたてて開き始めた。
開く城門の隙間から歓声が漏れ出す。歓声に押し出されるように、いくつかの人影が飛び出した。
先頭を走る小さな人影がクシナダだと分かったとき、俺も走り出していた。
「御主人!」
ああっ、喋りながら走ると危ねえって!
あー、ほらヨタヨタして……あ!
「きゃ!」
小さな悲鳴を上げてクシナダが小石に躓く。俺は右足を深く踏み込んで跳んだ。着地の瞬間に両足を投げ出し、そのまま地面を滑る。
……ぽすっ。
スライディングした俺の懐に、転んだクシナダが入り込む。空いた両手でクシナダを抱き止め、地面に尻餅をついた。さすが軽身、間に合った。
クシナダは俺の腕から顔を出し、ビックリしたような顔をしている。そして、泣いた。
「まふたー……おがえり~」
「おう、ただいま」
俺の懐に顔をうずめてくるクシナダ。俺はその小さな頭をゆっくりと撫でてやる。心配……かけたな。うん、ごめんな。
「クーちゃん、怪我してないか?」
チコの声に顔を上げると、懐かしい顔が見えた。みんな俺達を囲んでいる。
「ああ、何とか間に合った」
クシナダを抱いたまま立ち上がる。
「獣人の俺より跳ぶなんてすげーな」
「今だけ魔法で軽くなってるからな」
「そのような魔法をよく思いつきましたね。やはりユートは変な人の子です」
「剣狼辞めて獣人になったアムルスも十分変だろ」
「誰のせいですか。責任をとるのですよ、ユート」
何だよそれ。勝手に獣人になっといて、責任て。
「そうだよー、ユート君。アムちゃんにとっては一大決心だったって。よ、この色男。あははー」
「……楽しそうだね、マリアちゃん」
「だって面白いんだもん」
あははーとマリアが笑う。俺の口からも乾いた笑い声が出る。
「何笑ってんのよ。アンタ達、ホント人の言うこと聞かないんだから」
「そりゃないぜオーナー。俺はコイツのお守りで……」
「お黙り!」
ドミニクの裏切りは失敗した。オーナーはドミニクの頭をしばき、俺の頭もついでにしばく。乾いた音が街道に響いた。いてえ。
「今回はたまたま無事に帰ってこれたからいいものの、1つ間違えたらどうなってたか!ユートちゃん、前にも言ったでしょ。マンハイムを家族だと思えって。アナタ達はアタシにとっても家族なのよ。次やったら許さないから」
「……すんません」
俺は頭を下げた。叱られたのが何故か嬉しい。変態だけど。
「罰として、しばらく勇者になりなさいな。その方が戦争終結も早まるわよ。勇者よ、勇者。渡人で勇者、しかもウチの子。いいわー、お仕事増えちゃう!」
……アンタの仕業か、あの恥ずかしい横断幕。途中から本音が漏れてるぞ。くねくねすんな。
「人を宣伝に……」
オーナーが俺の文句をスルーして横に動いた。そこに、人影が立っている。
「……スーちゃん?」
スザンヌがオーナーに隠れるように立っていた。
「スーちゃん言うな、ばか」
スザンヌが上目遣いに口を尖らせる。目元が少し腫れていた。
俺は昨夜の念話を思い出す。オーナーの話だと、スザンヌとマリアは泣いてくれたんだよな。いいやつらだ。
「……ありがとな」
「何よ……」
「別に」
「……ばか」
文句を言いながらスザンヌが笑った。夕日を浴びて金色の髪が優しく光る。
「……おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
ーーーーーーーーーー
ベルセンに2人の冒険者が帰還してから翌日、パルジャンス王国軍がベルセンに到着した。
時を同じくして、テオロス帝国からもトロイアーノ将軍が部下数名と共に早馬でベルセンに入った。
トロイアーノ将軍は敵意が無いことを示すため、王国軍の目の前で武装解除を行い、王国軍による魔力探知も受け入れた。
ギルドマンハイムのオーナーであるタチアナ=ブレナーからの報告もあって、トロイアーノ将軍は部下と共に和平の使者として認められた。
王国軍は大多数の兵をベルセンに残し、トロイアーノ将軍達を首都クルムベルクへと連行した。
4日後、トロイアーノ将軍は国王フリードリヒ4世に謁見し、テオロス帝国皇帝ボルトロテ2世からの降伏文書を読み上げる。
内容は無条件降伏そのものであったが、国王フリードリヒ4世は内容を一部改変する。講和条約として残った主な内容としては、次の通りである。
1.パルジャンス王国はテオロス帝国を属国とする。但し、パルジャンス王国はテオロス帝国の人事権を放棄する。
2.テオロス帝国は戦死者の遺族に対し年金を支払うこととする。
3.首謀者である渡人クレイシャンは速やかに処刑することとし、死体は焼却することとする。
4.パルジャンス王国の有事の際は、テオロス帝国は無条件で軍事力を提供することとする。
5.テオロス帝国北部の原野については両国で開拓に臨むこととし、得られる利益は均等に分配することとする。但し、開拓後の原野の管理はテオロス帝国が執り行うものとし、パルジャンス王国からは監理官を派遣するのみとする。
後日、戦死者58名の遺体が丁重に移送され、テオロス帝国軍の手によってパルジャンス王国内、それぞれの故郷の墓地へ埋葬されることとなる。
戦争の終結としては穏便すぎる背景に、2人の渡人の存在があったことは言うまでもない。つまり、渡人に始まり渡人に終わったのだと。
むしろ国王フリードリヒ4世は、自国内に渡人が、それも人並み以上に正義感のある若者がいることを喜んだという。
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