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 キラキラ光る草原で、くるくると舞い踊る和装の少女がいる。


(いつもの、夢?)


 そこで踊っているのは確かにあの少女、ゆうらと呼ばれていた、最初に妖刀紫に斬られた娘だ。


"そう!嬉しいの!"


 その踊りには何の意味があるのか良くわからない。けれど、ゆうらの顔は今まで見た事もないほどに笑顔に溢れてて、輝いて見えた。


(嬉しい…?)

 
 何が?何となく俺が思い出せたから?


"あの方に、触れられた…やっと、抱きしめて差し上げられた…!"

(それって…あの時の…)

"ええ、叶わなかった夢…叶えてはいけなかった夢…あの人の隣にいることができるなんて…なんて幸せなんでしょう…!"


 そう言って、ゆうらは花が綻ぶ様に笑うんだ。本当に安心しきって、心底喜んでいる。こちらとしてはあれこれを思い出してやや複雑……なんだが…


"決して、嫌では無いでしょう?" 


 そう、嫌じゃ無かった、今も嫌じゃ無い。本人が真正面から認めることができない事実を意図も容易くゆうらは暴く。

 けれどきっと、周囲にすんなり受け入れてもらえない様な関係だ…


"ずっと良い…あの時に比べたら、好いた方に触れるのを許してもらえるのだもの!"

 ゆうらが自分だと自覚した時から既に刀貴に対する気持ちがほぼ戻ってて、どれだけ好きだったか、今もどれだけ好きなのかを嫌ってほど思い知らされてる最中で………


"待ったわ…待って、待って……女の身で無くなるまでどれだけ待ったか……刀貴様に添えるのだもの…嬉しい…"


 心からの歓喜。ゆうらの夢にはもう刀貴は出てこない。妖刀を番て鬼の様に振り下ろしてくる事もない。


 なんて事をしてきたんだろう。ゆうらの手放しの喜びの反対側には、自分が酷く酷な事をおしつけてしまっていたと、深い後悔もある。
 
 
 それでも、待ってて…求めて、くれるんだな………









「お前も、俺もやっぱ馬鹿だ。」


 目が覚めて、案の定側にいる刀貴の姿を
目にした途端に口から出てきた。


「楓矢…」


 目が覚めるまでじっと側にいたんであろう刀貴はやはり馬鹿だ。


「…見捨ててしまっても良かっただろ?」

「……ゆうらをか?」

「なのに、なんでここに居るんだよ。」


 とっとと諦めて、他に好きな女を作れば良かったんだ。こんな馬鹿な事押し付けられて、馬鹿正直に一体何度刀貴は苦しんできたことか……


「楓矢だったら…諦められたか?」


 大きな温かい手が頭を撫でる。


 気持ちいい……けどこれが穏やかな安らぎだけを与える手じゃないって事ももう知ってる。


「ふっ………無理だな……」


 そう無理だ。当時捨て去って行ってもらっても恨みはしなかったと思う。けど、自分が刀貴を捨て去れるかと言ったら、答えは無理……望みがあるなら、来世があるなら今もきっと全力でそれに縋ってしまいたくなる程には、刀貴が好きだ……


「俺も同じだ。」

「でも、本当に疑問なんだけど、何でいんの?」


 刀貴の姿は当時のまま。刃の様な鋭い雰囲気はなくても声も外見も当時と一緒。ゆうらだって色々違う少女として生まれてきていたのに何でだ?

 
「……妖刀紫…奴の力だ。」

「うぇ、俺が切られてきた奴?」

「そんな事、思い起こさなくても良い。」

「ダメだろ?目を背けちゃ…お前にばかり、背負わせる事になる。」


 言い出しっぺはこちらなんだ。刀貴ばかり負わせるのはフェアじゃ無い。

 何故だか刀貴は困った様なでも物凄い優しい笑みで、そっとキスを落としてきた。
















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