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6 入植が決まりました

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 一面の麦と野菜畑。
 たわわに実った果樹園。
 風車に水車。
 真っ直ぐな街路。
 建ち並ぶ家々。

 足りないのは、人だけだよな。


「綺麗な街が出来たね」

「人がいないけどね」

「お、すげーでかくなったじゃん」

「人がいないけどね」



 兄さん達が来てから半年。

 家は建ったのに人がいません。

 いまだに開拓団も村人も送ってくれないのって、やる気あんのか父ー!


「なんだ。人が欲しいのか? 孤児や浮民でも連れてきてやるぞ」

「そんな勝手な事出来るわけないよ。ここ一応侯爵領なんだから。父さんの許可とって開拓団を募集しないと」

「すればいいだろ」

「権限がないよ。俺の役目はここの村長だからさ」

「これを見ろ」

 兄さんが一枚の羊皮紙を見せてきた。

『侯爵家第ニ子シグルを開拓団団長に任命する。速やかに開拓民を集め、辺境を開拓すること』

「なにこれ」

「任命書だな。荷物に入ってた」

「いつから?!」

「気づいたのは、さっきだな」

 という事は。

「人が来ないのは、兄さんのせいかーーー!!!」

「やめろ、剣聖! マジでやられたら死ぬって」

「剣豪の兄さんが剣を持てば、僕なんて子ども扱いだろ」

「俺は、剣、使わねーの」

 しばらく木剣を振ったけど、一度も当たらなかった。悔しい。



「二人でなにやってるの」

 いつの間にか消えていた次男が家の中から出てきた。

「開拓団の団長は兄さんでした」

「やっぱりそうか」

「気づいてたの?」

「これがあるからな」

 次男が見せたのは、一枚の羊皮紙。

 辺境開拓における商業権の委託書だった。

「主な商会には声をかけてあるよ。私の家臣団も、ここに来たいと言っているし。いいかな?」

「ずりーぞ。俺の家臣団も呼んでやる」

「二人とも派閥を乗っ取られたんじゃないの?」

「派閥なんて表層だけだろ。譜代の家臣団がごまんといるぞ」

 長男がニヤリと笑うと不穏。反逆しそう。

「私たちは、母方が土地の有力者で領地に根付いているからね。開拓地でも利権を握れる初期入植は大歓迎だよ」

 次男の腹黒さが怖い。
 魔物が跋扈する辺境も、利権の塊かあ。



 まあいいか。
 人がいない大都市ってほとんどホラーだよな。

「変態や犯罪者や問題行動起こすやつじゃなかったら誰でもいいので、お願いします」

「任せろ」

「期待しておいで」

 こうして街が出来たらすぐに、入植者がやってくる事になったのだ。

 二人の行動力を見越して辺境に送り込んできた親父が怖い。




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